二 【歴史の浅い世界に】
すると、恵華が黙り込むクロウに助け舟を送るために口の中のどら焼きを急いで飲み込み間に入った。
「クロ様はしっかり助けてくれましたから!あの時、恵華がクロ様の魔力が残り少ないことをちゃんと察していれば……本当にごめんなさい」
「いや……」
メアルを助けに行く時に少しでもクロウを責めたことを謝る恵華。
それによってクロウは恵華に何かを言おうと口を開いたが、謝る恵華を見て自分の不甲斐なさに気を落として口を閉じてしまい、部屋は沈黙状態となってしまった。
沈黙の続く中でレイチェルやリルルとミルルもどうして良いか分からずに戸惑っている。
静まり返る中、今まで寝ていたメアルが目を覚まし起き上がった。
「ふぁ〜……ここどこ?うわっ!!姫様じゃん!
ってことはお城の中!?」
さすが子供の人外種と言えど、メアルも回復が驚く程早い。
見知らぬ場所に驚いたメアルはベッドの上で立ち上がり、周囲を見渡した後に窓の外を確認し始めた。
生命力を使い果たして疲労困憊で寝ていたとは思えない寝起きだったが、動きづらいように見えるところを見ると足はまだ痛いようだ。
そこで、リルルがメアルに貧民街での生活や他の同居人の話しを聞き、少女との関係性が無いかを確かめた。
しかしながら、メアルは少女とは全く面識もなく、襲われた時に仲間も皆見覚えがなかった。
メアル達は森などで生活拠点を転々としている中で、誰も使っていなかったボロ屋を見つけて共同生活していた。
少女に恨まれることはしていないはずだが、仲間内でメアルだけが能力持ちだったので自分が囮となって仲間を逃がしたようだが、何処に逃げたかは検討がついているとのこと。
今回クロウから金銭を盗んだように生活のために過去にも同じような事を繰り返してきたメアル達だが、被害届けは一つと出ていない。
メアルは売買目的などではなく、生活に必要なだけしか盗みを働かなかったこともあって、誰も盗まれた事について気づいていなかったのだろう。
それでもレイチェル達はメアルを叱り、盗みをやめるよう説得した。
しかし、メアル達はまだ子供ということですぐにまともに生活ができる訳ではない。
ただでさえ少女に家を壊されてしまった上に、盗みをやめたら生活ができなくなってしまう。
すると、町外れの現状を知らなかったレイチェルは働く術を持たない子供達を集めたいと言って、リルルとミルルにメアルの仲間や郊外地の子供達を城に集めてくれと頼み出した。
「この国には幼児を保護する制度がなければ孤児院もありません。私が責任をもって打開策を考えます」
レイチェルはこの世界に来て今日で一年。
タスリーフに生存する人外種どころか、城とその周辺の中央区しか知らない。
自分には知らされていないことがまだまだあるのだろうと今回メアルを通して身をもって知った。
地球と比べ、歴史の浅いタスリーフはまだまだ改定を積み重ねていかなければならない。
レイチェルはメアルに「今日はここでゆっくり休んで下さいね」と言ってガナフ国王と話しをするためリルルとミルル連れて部屋を出て行った。
レイチェルの言葉に安心したメアルはベッドに腰を下ろすと、クロウがメアルの肩に腕を回し絡み始めた。
「お前メアルって名前なのか?綺麗な顔で綺麗な名前しやがって。俺に言うことはねぇのか?あん??」
「なーに?お金は返したでしょ?ボクと恵華に助けられたク・ロ・さ・ま」
こぉんのガキ!
実際にメアルの言う通り、クロウは魔力を振り絞り雷撃を少女に放ったが、直撃を避けられてしまっていた。
それにより倒れたクロウは恵華とメアルに守られ、危うい結果となったが、少女を倒したのは二人。
「凄い能力だったけど、あの子は普通に起き上がるし、お兄さんは動けないし、ただの邪魔だったよ?ねぇ恵華?」
「こ……こら!メアには分からないことがクロ様にはあるんですよ!とりあえずお金の件は謝ってください!」
メアルの言うことはもっともだった。
恵華達はクロウの現状を知っているが、メアルのような他人からすれば関係のないこと。
あの時魔力が少ない状況だったが、気合いで体を動かし魔法を使おうが何をしようが助けられなければ意味がない。
確かにそうだ。
"必死で頑張った"のは自分の中だけで周りからすれば知ったことじゃねぇ……。
クロウは子供にツッコまれ一瞬腹が立ったが、申し訳ない気持ちの方が大きくなり湧き上がる怒りを鎮めた。
「まぁそうだね。これから盗みなんかやらなくて済むだろうし、お兄さんから盗ったあれが最後。お金盗ってごめんなさい」
「……いや、俺も悪かったな。
特殊能力が自在に使えれば、もっと上手く力を使えていれば恵華にも子供のお前にも苦労かけなかったよな」
メアルもクロウからの謝罪を受け、返事はしなかったがこれ以上何も言うことはなかった。
すると、ガイアはその時に放った魔法が気になったようでクロウ達に問い始めた。
そこで不可解なことにガイアとジハードは気づき考え込み黙り込む。
「何だよ黙り込んで。俺の魔法が外れたってだけだろ?」
少女が起き上がって来たということは直撃を免れたと思っていたが、それでも二人おかしいと言う。
「クロウ。貴方の雷撃は能力でなく魔法なのです。
確かに魔力により強弱はあるでしょうが、紛れもなくあれは自然の"落雷"だったはず。遠くからでも分かりました」
「うん……え?ジハードは何が言いたいの?」
「あの少女の種族は人種という以外に私には分かりませんでしたが、能力は物体を動かす念力。
それ以外の能力を所有している訳がありえませんし、体は普通の人種と変わりません。
……分かりませんか?普通の人種ならあの雷撃をかすめることはありません。多少なりとも磁力を必ず持ち合わす人ならば、必ず引き寄せ直撃して死に至ります」
服や髪が焦げていたというところから、雷撃を浴びていることは間違いない。
しかし、なぜそれだけで済んだのかは分からないとジハードは言う。
「俺もそれは不思議に思うところだ。
だがそれ以外に不可解なのは、あの小娘が何の種族なのか俺にも分からなかったことだ。それにあの感じ……まさかとは思ったが、体に触れて合点がいった」
「何が?」
「向こうの世界で会った者共と同じだ。
あの小娘は造られた人間だ」
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