一 【遅れた理由】
ガイアはクロウのこれからの事や、それに関する自分の"悲願"がある。
しかし、このままの状態では取り返しのつかない事態になりかねないと思い、さっそく行動に移すことに。
「明日からは貴様を鍛えるという約束だ。だがまず、いざという時の為にもう少し俺の中に魔力を保有しておきたい。今日は融合したまま寝てもらうぞ」
クロウの魔力切れの心配をした上での融合したままでの睡眠。
融合していればガイアに直接クロウの魔力が注ぎ込まれ、尚且つ溜めおいておく事ができる。
それによってガイアの魔力量に余裕があれば、いざという時に魔力をクロウへ返す事も可能。
尚且つ修行でクロウを限界まで追い込み魔力を消費させれば、謎の"光"を確認することが可能となるかもしれない。
「それは構わねぇけど、今日の祭りは?もう終わったのかよ?」
危ない状況だったことも忘れ、祭りに戻りたくてしょうがないクロウ。
それに対してガイアはイラ立ち戻そうとするが、クロウは全く楽しんでいないと子供のように喚き出した。
するとレイチェルが何か言いたげに口を開いたが、明日からクロウの修行と聞いていたので言って良いものかと戸惑っていると、それを見ていたリルルがそれを察して代わりに話し始めた。
「城内でのパーティーは今日一日だけど、町は明日までやるわよ?」
「おっ!マジか!?じゃあ修行は明後日からにする!」
余計な事を言うなという視線をガイアは送るが、気づいていないフリをするリルル。
というのも、元々二日目の祭りにレイチェル出向こうとしていたのもあり、もしクロウ達に時間が出来れば一緒に祭りをまわる事ができるのにと話していたようだ。
この世界では同じ人間と同じ時間を楽しめるのはクロウがいる時だけだとレイチェルを思ったリルルの図らいだった。
「リルル、これは貴様等にも頼んでいることでもあるのだ。一刻も早く――」
「良いじゃねぇかよ!しばらくこっちにいるんだから!ジハードも居ることだし皆で行って楽しもうぜ!」
クロウは祭りに行く気満々で、修行は明後日からやると言ってガイアの言うことには耳を塞いでいた。
すると、ガイアは次元空間から何かを取り出し「これでも食べて我慢しろ」とクロウに投げつけた。
「うわっ!これどら焼きじゃねぇか!お前ドラえもんか!?っつーか、何で日本の食いもんお前が持ってんの?」
祭りの中で和菓子を食べていた子供に聞き出し、色々な和菓子や洋菓子を作る店があることを知ったガイアは、転移魔法で店に飛んで大量に買い込んだ様だ。
こいつも恵華と同じで甘い物好きなのか?
地球で普通に働いていた者でもこちらに移り住みだした者は多いらしく、その中には日本で育った人外も数多くいると言う。
クロウは日本で育った者なら会ってみたいと思いながら、どら焼きを口に持って行くと、
「――ん……あぁぁ甘い匂いがする!!」
どら焼きの匂いに反応した恵華が突然目を覚まし起き上がると、クロウが持っているどら焼きに飛びつき食べてしまった。
「うわっ!何すんだ……って、お前匂いで起きたの?」
怪我が治ったわけではないが、動けなくなる程の疲労からの回復が早過ぎるとクロウや他の者も驚き、何より容態を診ていたジハードが一番驚いていた。
下手すれば丸一日は寝込むと思っていたのにも関わらず、数時間で目を覚ました恵華は本当に人間かと疑う程だった。
しかしながら、クロウとガイアは普段から恵華は菓子ばかり食べていることから、特に不思議に思うことなくただ単に甘い物に敏感なのだろうと呆れているだけだった。
そこでクロウは一つ疑問に思った事が浮かんだ。
「今思ったんだけど、お前ら念話に応じもしねぇし助けに来るのも遅かったのって……祭りを楽しんでたからか!?」
するとジハードは途端に慌て出し、念話に気づけなかった言い訳を必死に説明しようと助けを求めてガイアを見るが、瞬時にそっぽを向かれてしまった。
「町の子供達が言うことを聞かなくてしょうがなかったんです!無理矢理遊技場に連れていかれて、なぜかしがみついて離れない子もいたのでどうしようもなく……」
「ま、まぁ良いではないか。念話に応じる事はできなかったが、貴様が魔法を使ったことで何かが起こっていると分かり駆けつけたのだから」
クロウが魔法で雷雲を呼び出し、落雷を落とした大きな音と共に魔力放出を感じとり、二人はただ事ではないと駆けつけたようだ。
それまではジハードは子供達に好かれ、それ等の周りにいた親達にガイアはあれやこれやと菓子を与えられて囲まれていた。
マジで楽しんでいやがったのか。っつーか、ガイアは菓子食ってただけじゃね?何なのこいつ?魔王だなんだって言ってるけど……ただのガキじゃん。
「俺はともかく、そこの二人はあと一歩遅かったら死んでたかもしれなかったんだ。頼むぜお二人さんよぉ」
「それは貴様がしっかりと力の使い方を知らぬからだ。前の貴様ならあの程度の小娘なら魔法など使わなくとも一瞬にして終わらせていただろう。
今回貴様は運が良かった。あの様な事で小娘を……恵華を死なせてしまっていたかもしれんのだぞ?これを教訓としろ」
途端に真剣な眼差しで話すガイアに圧倒され、もっともな言葉に何も言えなくなってしまったクロウ。
ツッコミどころはあるのに言い返せないのはなぜだと思いながらも、あの時もし魔力が多く残っていたら、あの時もし特殊能力が使えたらと自分で解決できた場面を思い描きながら反省するクロウだった。
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