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七十三【子供の妖精種】

 攻撃魔法を終え、力が抜けたクロウは腕を下ろすと同時に倒れ込んでしまった。


「え?うそ!?クロ様!?」


 恵華はフードの子供の腕を解いて額から流れる血を拭い片足を引きずりながらクロウの元へ行くと、うつ伏せになっている体を返して呼びかけた。


 薄らと目を開けるクロウは自分で起き上がる力も無く、酷く弱ってしまっていた。


「クロ様、顔色が……」


「ハァ……ハァ……チッ。

 なんかこのボロ屋に来てから調子が悪くてよ。風邪でも引いちまったのかな?」


 クロウはここへ来た途端に思うように体が動かず、なぜか気持も荒んでいくような感覚となっていたようだ。


 勢い良く来たのにも関わらずに腰が砕けた様に行動を起こすのが気だるく思え、恵華が戦う姿を見ても消極的な考えしか浮かばず、すぐに出て行くことができなかった。


 しかし、それでも何度も隠れながら魔法を使おうとしたが、不思議な事に魔法を放つ為に魔力を練ようと集中すると途端に心寂しくなり、弱気になってしまっていたらしい。


「悪かったな、すぐに助けてやれずに。

 お前、顔に傷が……ドレスもボロボロじゃねぇか」


「気にしないでください!

 ちゃんと助けに来てくれたじゃないですか!ドレスは恵華の責任ですから、レイちゃんには何かでお返しします」


 恵華と話すクロウはとても弱々しく、今にも気絶してしまいそうだった。


 こんな状態はおかしいと恵華はクロウの頬に手を当てた。

 そしてここに来るまでの経緯ではなく、アジトでクロウが魔力切れで倒れ、復活してからの事を思い返した。


 恵華自身は魔力の放出量などは分からないが、転移魔法など繰り返し使って今に至る。ここまで弱体化したのには確実に魔法が関係しているはず。

 恵華は少し寝てくださいと言ってクロウの頭を膝に乗せて、休むようにと寝かしつけた。


 クロウはこんな所では寝れないと駄々をこねるが、それでも恵華は膝の上で動く頭を押さえつける。


 すると、後ろから跛行する音が聞こえ、恵華が後ろを振り向くと、フードの子供が起きてこちらに向かって来ていた。


「ねぇ、おねぇさん達はどうしてここに来たの?」


 疲れきって怪我する足を庇いながらこちらに歩いて来ると、顔を隠しているフードをめくり上げた。


 露となった顔を見ると、八重歯とも言い難い短い牙が生えた翠色のショートヘアの男の子だった。

 能力持ちの人外種であるのだろうが、牙を見るに人種ではなさそうだ。


 しかしその顔はとても可愛らしく、埃や土で汚れていても、それもまた汚れた仔犬のようで愛くるしい。

 ライトブラウンのクリっとした瞳を含め、こちらを見る柔らかな表情からは悪事をするようにはとても見えない顔立ちだった。


 振り向きざまに恵華は一瞬止まり、昔に親戚が飼っていた仔犬と重なり見入ってしまった。


 可愛い顔――。


「あっ、え〜っと。国門の方からですけど……」


 何と説明したら良いか分からない恵華は、クロウに任せようと顔を窺うが、先程よりも衰弱し喋る気力もない様子だった。


 すると少年は横たわるクロウの前まで来て座り出し、ポケットから硬貨を取り出した。


「はいこれ、お兄さんに返すよ。

 久々に中央区で仕事してこんな事になるなんてね」


 盗んだ硬貨をクロウの胸ポケットに入れ、二人に謝罪と礼を言った。


 なぜこんな所で能力持ちの少女と戦かっていたのか事情を聞くと、少年も突然襲われたらしく分からないと言い出した。


 このボロ屋は少年の家で、他にも三人の仲間と住んでいた。


 四人は親無しの孤児で子供だけでは街で商売もできないため、基本は盗みで生計を立ているようだ。

 そこで今回、祭りで賑わっている中央区で仕事をしようと街へ行き、数件の仕事を済ませ歩いているところに街中で硬貨を広げて数えているクロウから金銭を盗んだ。


 そしてここへ帰って来ると突然少女が現れ何も言わず攻撃してきたようで、タイミング的に金銭を盗まれた者の中の仲間か雇われた者が送り込まれたのだと思ったようだ。


「じゃあ、この女の子は全く知らない子なんですか?」


「うん、どこの子かも知らない。

 今までに中央区で兵士に追われる事はあったけど、こんな能力持ちに襲われる事なんて一度もなかった」


 少女は何者で目的は何だったのだろう。

 今となっては謎しか残らないが、なぜクロウを知っていたのかは気掛かりだった。


 少年は立ち上がり、雷に打たれ落ちた少女を状態を見に行こうと歩き出した。


 恵華も一緒に見に行こうとするが、クロウはすっかり夢の中へ入ってしまい、動く事ができなくなっていた。


「一応気を付けてくださいね。

 そういえば……名前は何ですか?私は恵華。ちなみにただの人間!よろしくね☆」


「え?人間?"人種"って言わないってことは異世界の人なの?それであの身体能力って……あっ、僕はメアル。"風の妖精種"、能力は"瞬歩"」


 音速程の速さでの移動を可能とする能力"瞬歩"。


 やはり速さに特化した能力持ちだったが、恵華が驚いたのは種族だった。


 ガイアの体は地の妖精種の体と聞いていたが、クロウと同じ様に恵華も妖精とは小さな生き物という固定概念あったため、驚きと共に色々な話しを聞きたいとメアルに質問攻め。


「メアルくん!妖精ってみんな見た目は人間と変わらないの!?

 "風"の妖精種って何!?何で風なの!?他にはどんな妖精がいるの!?」


 状況に構わず質問攻めする恵華に焦り、足を止めて振り返るメアル。


「ハハハ……待ってよ恵華。それと僕の事はメアで良いよ。

 妖精種って言っても末裔ってだけで今はもう血は薄いからね。種族については僕もよく知らないけど、説明が難しいからまたの機会に」


「えぇ〜クロ様が起きるまでお話ししましょうよぉ〜お願いしますよぉ〜ねぇ〜メア〜」


 暇つぶしに話をしてくれと恵華は駄々をこねるが、メアルは振り返って「またの機会に」を繰り返し少女の方へ向かい歩いて行った。

 恵華は仕方なく諦めて頬を膨らませてぶぅーぶぅー言っていると、それに苦笑いを浮かべながら少女が落ちた所へ向かった。


 ところが、落ちた場所には焦げ後が残っているだけで少女の姿が見当たらない。

 異変に気付いたメアルは瞬時に恵華の方へ振り返ると、恵華の頭上で宙に浮く少女の姿が。


「恵華!!逃げて!!」

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