七十二【絞り出した初の攻撃魔法】
「ゴホッゴホッ……あれ?」
砂埃が舞う中、恵華達は不思議にも助かっていた。
恵華は目を開けると二人で床に倒れ、フードの子供は恵華を抱きしめたまま気絶してしまっていた。
なぜ助かったのか顔上げて確認すると、驚く事に岩石が恵華達の目の前でピタッと止まっていた。
「な……何が?」
よく見ると恵華達の周りを赤く発光する壁が囲み、岩石から守られていた。
もしやと思い入口の方に目を向けると、そこには赤く輝く魔法陣の中でしゃがみ、床に手を当てる人の姿が。
砂埃が落ち着き、視界が鮮明になると共にクロウが姿を現した。
「クロ様ー!!」
遅い登場にも恵華は気にせず、魔法を使い助けてくれた事に喜ぶ恵華。
しかし、クロウを見ると肩で呼吸をしているのが見受けられた。
「はぁ……はぁ……」
妙なことに、外で見ていただけと思っていたはずのクロウは、なぜか息を切らし疲れている様子。
何が起こったのか分からなかった少女は高度を上げて上から見下ろした。
何かで守られている恵華達と、上からでは顔は見えないが白髪の男の姿を確認して再度邪魔が入った事に腹を立たせた。
歯を食いしばりながら仏頂面となった少女は、恵華達を潰そうとしていた大きな岩石を高く浮き上がらせ始める。
「あの時の……邪魔するなー!」
あの時?こいつは俺のこと知ってんのか?
少女はクロウを知っている様だが、クロウには見覚えが無かった。
すると止まっている岩石を高く上げ出し、今度はクロウに目がけて飛ばし始め、
先程よりも勢いは増し、更に少女はクロウの周りにある木材の破片や小石も念動力で飛ばし逃げ道を無くした。
「はぁ……はぁ……っぬあぁぁ!!」
クロウは息切れしながらも自分の周りにバリアとなる壁を作り出し、飛んでくる岩石や小石を難なく止めた。
目の前で止まる小石はその場で落ち、大きな岩石は勢いのあまりバリアに当たると砕けちってしまった。
少女は魔法とは知らず、何の能力かも分からない力で自分の能力が簡単に防がれた事に癇に触り、怒り狂った少女は周りにある様々な物を全てクロウを中心に飛ばし三人共潰しにかかった。
それでもクロウを囲むバリアは破壊できず、遂には建物の壁や屋根を剥がし飛ばし始めた。
……勘弁してくれよこのガキ。
「何なんだよお前ー!廃人みたいな髪色してるくせに!しねしねしねしね死ねー!!」
幾度と無く続く念動力の攻撃に、クロウはバリアを張り防いでいるだけだったが、これでは埒が明かないと思い反撃に出ようとし、どのような魔法を使えば良いか今の状況を見て想像を膨らませた。
しかしながら、何かを躊躇しているようでどうしても集中できない様子。
どうするか。相手はガキだけど、でももうそんな事言ってらんねぇ!だけど……。
クロウは渋りながらも現状を打破する攻撃魔法を考えながら周りや宙に浮いている少女を見て、段々と出したい魔法の形が浮かび上がってきた。
頭の中で決めた魔法の想像が終わると、足元の魔法陣に加え、更にクロウの背後にも魔法陣が展開され始める。
少女からもクロウの魔法陣は見えるはずだが、攻撃が当たらない事に怒り荒れ狂っているため、それどころではないようだ。
「魔力の存在を知ってから初めての攻撃魔法だ。成功してくれ……」
クロウは床に両手をつけている状態から、少女の念動力で穴の空いた天井に向かい片手を上げ出した。
すると、雲の無い夜空に突如稲光を発した雷雲がボロ屋の真上に出現すると、流石に理性を失っていた少女も空の異変に気付き上を見上げた。
「……なにあの雲?」
それに気付いたところでクロウの能力は攻撃を防ぐバリアだと思っている少女はクロウがやっている事だとは思わず、攻撃の手を休めず攻撃に徹した。
少女が気付かないのも無理はなく、人外種の持つ特殊能力は基本一つ。
例外も存在するが、それは稀中の稀のケース。
神の力"魔法"と"聖神気法"以外は、魔導具でも使わない限り、複数の異業の力を使う事は不可能だとされる。
したがって、少女はクロウが魔法を使える事を知らないため、雷雲が出現したのはただ単に雲行きが怪しくなってきただけの自然現象だと思っている。
クロウはそれにニヤリと笑い、空を見上げ雷雲が集まった事を確認し、囁く様に魔法名を唱えた。
「――ライディーン」
高く上げたクロウの腕が赤い稲光を発すると、それが合図だったかのように空の雷雲は強い稲妻を発した。
[ッゴオォォン!!]
その光に少女は再び真上を見上げた瞬間、雷雲から少女目がけて回避する間も与えず雷が落ちた。
目を開けてられない程の眩しく強い光と、後に残るキーンと響く耳鳴りの音と共に宙に浮いていた少女は地面に落ちていった。
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