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◆空腹◆
中央のロビーに戻ると、来た時に比べて人気が少なくなっていた。
私は人が疎らになった横長の椅子に腰を掛けると、会計の窓口から名前が呼ばれるのを待つことにした。
それとなく、先ほどの名刺に目をやる。
今まで気がつかなかったが、名刺の裏面には店の地図が刷られていた。
この病院の近くだ。
歩いても十分程度の距離だと思う。
大通りから細い路地に入っていくのだろう。
近所にも関わらず、店の名前を初めて知った有馬の様子を思い出す。
おそらく、そう流行っている店でもないのだろう。
ロビー内の時計に目をやると、じきに午後の一時になろうとしていた。
本来ならば、今頃は学校で給食を食べている時間帯である。
少し、空腹感がでてきた。
流行っていないとはいえ、ランチの一つ位はあるのではないかと期待し、私は名刺に書かれた店に向かうことにした。




