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紫陽花(あじさい)と鴨(かも)  作者: ろいやるぱふ
紫陽花
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◆夢(樹海)◆

薄暗く、霧のかかった樹海の中、私は歩いていた。


何度も泥濘(ぬかるみ)にはまったせいか、地に足をつける度、不快な音が耳に響く。


もはや、疲労や痛みを感じることすら煩わしい。


思考と感覚が麻痺しかかっている。




湿った足の不快感にも慣れ、そのまましばらく歩き続ける。


すると徐々に霧が晴れ、枯れかけた芝生が一面に広がる場所に出た。


その先に、小さな古びた小屋が見える。


人の気配もなく、頼りなさそうに建っているその小屋には、黒ずんだ木の外壁に今にも消えてしまいそうな微かな斜陽が差していて、自分の中にわずかながら安堵の気持ちが芽生えているのを感じる。




自然と足がその方向に向かいかけた矢先、私は足元の異様な光景を目の当たりにして、思考が停止した。




野生なのか、それとも家畜なのか、薄汚い灰色をした鴨の群れが、私の行く手を阻んでいる。


黒板を爪でひっかいた時のような、甲高くて耳障りな鳴き声が響く。


私はただその場に立ち尽くし、耳を塞ごうと試みたが、途端に強烈な吐き気を催し、嘔吐した。


目の前にいる鴨の咀嚼物と思われるものが、異臭とともに勢いよく地面になだれ落ちる。




私は、身の毛がよだつこの奇妙な体験に、思わず歯を食いしばる。


すると、自身の歯が軋んだ音を立てたと思ったのも束の間、ぐらぐらと揺らぎ始めて、やがて抜け落ちていく。


この瞬間、焦り、怒り、そして恐怖、様々な感情が私の中を駆け巡り、徐々に意識は薄れていった。


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