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イルアの飛行船 1章
今日も飛行船が青空を舞う。舵をきるのは一人の少女。
彼女は細い身体と飛行船だけで村や街を渡り、あてもなく旅を続ける。
「休憩!」
クワをその場に投げて、少年は小走りで部屋の中に入った。
使い古され赤さびの付いた蛇口を力いっぱい捻り、鉄分がキツくてまずい水道水を流し込んだ。
「あー農業やめたい」
シンクにコップを置いて溜息をつきながら畑へ向かう。
ふいに上を向くと、ほとんど雲のない澄んだ空が見えた。
「鳥、いや……飛行船……?」
だんだんと降下してくるそれを、ずっと眺めていると近くの広けた場所にそれが停まる。
こんな辺鄙な村に旅行者が来るなど、めったにないことだった。
「見に行こうぜ!」
「おう!」
村の子供達が猛ダッシュで飛行船に向かって行くのを眺めながら、
夕方までうんざりするほど茶色い畑を耕した。