グラヴィティア 共通シナリオ①
【1章-1話:罪人の星】
「あれ……なにしてたんだっけ」
私は雲におおわれた空を見上げた。
自分はなぜここにいて、今まで何をしていたのだろう。
しばらく考えて、数秒待つとようやく思い出した。
私は幼馴染のフェリオといっしょになにかをして遊んでいた。
「フェリオ~どこなの~!?」
―――空は薄暗く暗雲が立ち込める。空気は重く呼吸するたび身体を蝕む。
ここは“惑星グラビィース”外界から閉ざされ、永きに渡り存在を隠されていた辺境の牢獄。
この星には重力があり、それに耐えられる人はほとんどいなくて私はいつも独りでいた。
そんなとき、フェリオという少年は退屈を紛らわせてくれた。
私はこのままずっと彼に頼っていいのだろうか、この頃悩んでいる。
―――草むらからガサガサと音がきこえる。動物かなにかだと気にとめずに行こうと思う。
いや待って……ただの動物がこの重力に耐えられるわけない。
行こうかどうか迷っていると、草むらから姿を表した。
「牛?」
牛って重力に強いのだろうか?
「でも美味しそうな牛だなぁ」
重力でいい具合にミンチ肉になっているかもしれない。
「うわああああ待って待って!!」
牛かと思えばそれは人間の男になった。
「……人間が重力に耐えられるなんて珍しいなぁ」
彼の目は黄色、髪は水色をしている。
「君がこの星唯一の民だね?」
フェリオは厳密に言えば隣の星からやってくる。だから民ではないので私がグラビィース唯一の住民だろう。
昔はもう一人、この星に住んでいた男がいた。
もう何年も姿を見ていないので、他の星にいったのだろう。
「僕の名はイーウォン。ウィザードで学園の教師もしているんだ。君はなんて名前かな?」
「私はヴィティア・クライ」
名前を教えると、彼は微笑んだ。
「僕は学園長に言われて、この星からの生徒を探している。……君はこの星を出たいと思わない?」
イーウォンの問いかけを否定する。ここは滅多に人がこなくて荒れることもない平和な星だ。
「この暗い星で一人で寂しくないかい?」
そう言われても人がいなくて困ったことはない。
ご飯は気がついたら勝手に家のテーブルにおいてある。
言葉は生まれたときからわかっていたのでわからない言葉もとくにない。
「ヴィティア!」
私が悩んでいると、フェリオがやっと現れた。
「いきなり現れてなんなんだ?」
「君は?」
私はフェリオとイーウォンに説明する。
「ヴィティア、オマエ学園にいきたいのか?」
「……うーん」
“きこえるかヴィティア”
誰かが私のことを呼んでいる。聞こえると聞かれれば聞こえているが、一体誰だろう?
“私が誰かわからないか、それは仕方がない”
なんだかがっかりされてしまった。
“お前はこれから学園へ行き、様々な人間と出会う”
私が学園に行くのは確定なの?
“行かないという選択もあるが、このままなにも行動を起こさないとなればお前はずっと毎日同じ事を繰り返すだろう”
私の毎日は起きて食べて寝て遊び退屈のループ。たしかにそれはつまらないかもしれない。
◆学園にいくのか?
→《いきたい》
《いきたい》
「……うん、もう一人でいるのは飽きた」
イーウォンは私に手を差し出した。それをフェリオが払いのける。
「ヴィティアがいくならオレもいく」
そういってフェリオが私へ手をさし出す。
◆どちらの手をとるのか?
《イーウォン》
《フェリオ》
《とらない》
【1章-2話:厄介】
――公共機関の転送装置で惑星ドゥーブルフロマージェに着いた。
私たちが向かうのは宇宙唯一とされるプリマジェール魔法学園だという。
騒ぎが起きないように裏口から入った。
「失礼します」
イーウォンが扉をノックして、入室許可をとる。
「どうぞ」
学園長が許可すると扉が開き、中にいた長髪の男子生徒とすれ違う。
「学園長、彼女が件のグラビィース星で唯一の民だそうで」
後ろにいる若い男は小さな声でいう。
椅子にどっかりと座る銀髪の眼鏡女性が私の姿を見て目を見開いて驚く。
「あの星の重力に耐えるくらいだから、ごっついエイリアン系とか想像してたのに超可愛いじゃん!!」
学園長は弟にメールを送るからといって奇妙な物を弄る。
「フェリオあれなに?」
「スマアホっていう今時の人間が作った電気式機械だよ」
魔法があるのだから機械よりテレパスのほうが早い気がする。
「私は見ての通り学園長プリマジェール。そして彼は副学園長ファルドナンド」
彼女が学園長だというのは椅子に座っていたからわかっていた。
彼は学園長から紹介され会釈する。
「ところで学園長、なんで機械なんか?」
「さっきの生徒がテラネス人でさあ。最新式のスマアホをくれたんだよね」
テラネスとは機械のために魔法捨てた星の民らしい。
若さを維持するために魔法を最も尊ぶヴィサナス星とは対立しているそうだ。
「でさっき唯一の民といっていたね」
「彼女はもしかしたら……」
副学園長が何かを言いたそうにした。私は彼等にとってなにか問題があるのだろうか?
「うーんまあいいか何かあってもなんとかなるさ」
学園長は何かを考えて、すぐに決断した。
「じゃあ彼女は生徒にしても?」
「いいよいいよめんどう事は大歓迎」
―――こういうのを楽観的と呼ぶんだろう。
学園長室から出てきた私達は、イーウォン先生の友人に会いに行くという。
「イーウォン、新しい学徒を見繕ったようだね」
長い金髪を後ろで縛った男性は白羽のついたマントをなびかせながらこちらにやってくる。
「ああ、彼女可愛いだろう?」
イーウォン先生は私を彼の前に出す。
「あの……はじめまして?」
「俺を忘れるなよ」
私とフェリオは挨拶をした。
「二人とも、歓迎しよう」
といいながら歓迎しているそぶりがないように見える。
「彼は同じ教師のエレクティルだよ。こう見えて元ヤンキーで……」
エレクティル先生はイーウォン先生の頭をがっしりとつかんで柱の裏にいった。
●
「なんだと、あの星は……だぞ。それをわかって連れて来たのか?」
「噂と違って地獄の沼とかなかったし、可愛いからいいじゃないか」
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戻ってきた二人はまだ揉めているらしく呆れるエレクティル先生とは対照的に面白がってやれやれ両手をあげるイーウォン先生。
「さあ今から一限目、皆の前に出ようね」
―――クラスがフェリオと離れてしまった。
「ハンカチは?」
いきなりフェリオがたずねてきた。
「あるよ」
制服に着替えた私がポケットからそれを取り出す。
「じゃあティッシュは?」
「あるよ」
続いてフェリオが昼飯のパンは洗ったか?とかくだらない事を聞いてくるのでもういいでしょと別れる。
さっきまで不安だったけどいつのまにか忘れていた。
「今日から編入するヴィティア=クライさんだ」
忙しいイーウォンに代わり、副担任だというエレクティルがクラスに案内した。
「へー可愛いじゃん。なあスパイク」
背の小さな彼はふざけ半分で不機嫌そうな男子に言う。
「あ?」
彼は眉間を寄せながら私を見て舌打ちした。
「席は……スパイク=クラッチの左隣か」
「先生そこはシューヴェ君の席です」
休んでいる生徒の席らしい。
「ではシングリードの隣だな」
「ご愁傷さま」
かけられた言葉の意味がわからなかった。
【1章-3話:テロレスターvsプラネター】
「授業はこのタブレッティオを使うんだよ」
クラスメイトXが説明してくれた。
「こうやって触ると動くんだ」
世間に疎い私に皆は優しい。
「ん?」
クラスメイトUがタブレッティオを怪訝な顔でのぞいた。
「どうしたの?」
クラスメイトのミオネラがUにたずねた。
{ハーハッハッ!}
「なんかガキがうつった」
{我輩はドルゼイ様だ!}
ターバン頭の少年がでかでかと画面にうつる。
「みんなタブレッティオは持ったな!?」
「おう!」
皆が一斉に窓からタブレッティオを投げつけた。
「ぎゃー!!」
タブレッティオをくらってタンコブを作ったドルゼイは泣きながら帰った。
「いきましょ!」
皆が見物にいくので私もミオネラに手を引かれていく。
そこに宇宙パトローラーのプラネターズがやってくる。
「やれやれまたドルゼイか」
局員は辟易している。これはよくあることらしい。
「まあまあ」
「あーソルジャーチセイだ!」
ソルジャーガールが仲間をなだめる。
学園に来てそうそうテロレスターが攻めてきてヒーロー達がやってきたりした。
「フェリオどうしてクラス違うの……?」
いつも一緒にいてくれた彼が近くにいない。日が明るすぎるこの星で、私は本当に孤独でたまらなく不安になった。
「どうしたの?」
「だれ?」
だれかに声をかけられ、私は顔をあげた。
「な……!」
すると金髪の男子生徒は目を見張るように私を見ていた。
「僕はシューヴェ」
どこかで聞いたことのあるその名、たしか欠席だった彼だ。
「私今日学園に転校してきたの。同じクラスみたいだね」
「そうだったんだ」
彼は作り笑いをして、手を差し出したので握手をする。
「あの、さっきドルゼイとかいう人がきてたんだ」
「そうか、僕はあまり通えていないから彼には遭遇したことがないんだ」
そう頻繁にこられても困るだろうと思う。
「おいシューヴェ!」
「やあ、こんにちはスパイク」
THE不良スパイクは怖い顔をしてこちらにやって来る。
か弱そうな彼は、なにかしたのだろうか。
「ちゃんと昼の薬は飲んだか?」
「ああ飲んだよ」
スパイクは彼を心配しているようだ。
「なあ、お前」
「なに?」
見ているとスパイクに声をかけられた。
「……なんでもねえよ!」
彼は眉間にシワをよせて去っていく。
「どうしたの?」
「彼は女の子に慣れていないから恥ずかしいだけなんだろう」
男子の参考になるフェリオはそういうタイプじゃないから、照れる男子は初めて見た。
「今から教室にいくから、一緒にいこう」
「いいよ」
「キャー!」
教室に向かう最中、私達は女子生徒に囲まれた。
シューヴェはとても人気があるみたいで、学年問わずぞろぞろと群れをなしている。
迷惑だなと思っていると、一人の男子がやってきた。
「邪魔だ道をあけろ」
トゲのついたチョーカーをした黒髪の男子が、廊下を通りたそうにしている。
「学園最強の問題児ラウルくんだわ」
女子達がヒソヒソと話はじめた。でも心なしか頬がほんのり赤い。
「ごっごめんなさーい!」
女子達はぞろぞろと去っていった。




