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白き夢の後で(仮題)  作者: 渡口七海
2/4

二話 占う妹と窓から飛び込む我が彼女

4年ぶりの更新というむしろ更新しなくてよかったんじゃないかというレベルの更新頻度

全然話が変わるのだが、俺には妹がいる。 家族構成としては父、母、俺、そして妹。


妹は占い師のレベル3。父は探偵のレベル2、母は占い師のレベル2である。 そして俺は探偵のレベル4。


このレベルというのがかなり曲者で、1つ違うだけで能力やらなんでも全てが別格である。簡単に説明するなら


レベル5はRPGにおける初期のザコ敵


レベル4は最初の辺りのダンジョンのボス


レベル3は中盤のボス


レベル2は終盤のボス


レベル1はラスボス


レベル0は倒せるはずのない設定のボス


って感じだろうか。とどのつまり、かなりの格差があるってことだ。


ジョブが違えばまた違うと言えばそうなのだが、レベル2の両親からレベル4の俺、しかも父親とおなじ探偵ときたら、やはり比べられてしまうもので……


更に悪いことにジョブレベルっていうのはよっぽどの事がない限りは上がらない。産まれてから死ぬまでで1上がるか上がらないか、って言うのが今日の通例である。


俺の周りでもジョブレベルが上がったという話は聞いたことがない。


まぁ、なんというか、俺はかなりの落ちこぼれってことである。


で、なんで妹の話を持ち出したかと言うと……俺と妹はこう…………かなり……仲がいいんだが、その。




何故か起きたら隣に妹が寝ていた。



何事かと思った、いやマジで。妹は高確率で俺を起こしに部屋にやってくるのだが、別にそれはかなりどうでもいいと言うか、ほぼ毎朝なので慣れているし、妹が起こしに来る時には大抵俺は起きている。


しかし、流石に妹が隣に寝ている状況は今まで無かった。というかいつの間に布団に入ってきたんだよ。


「ん……んぅ……? あれ? おにいちゃん……?」


寝ぼけ眼を擦りながら妹……(りん)が目を覚ました。


「おう、おはよう、鈴。今日はどうしたんだ……俺の布団に潜り込んだりなんかして」


「ほぇ……? あ、あれ? なんでわたし、お兄ちゃんの布団に?」


「自分でも分からないうちに入ってきたのかよ……」


普段はかなりしっかりした妹なのだが、何があったんだろうか……


じっと鈴の顔を見てみる。


「ど、どうしたの、お兄ちゃん……?」


見つめられたのに照れてか、鈴が少しモジモジし始めた。 相変わらず可愛い妹である。そしてなんとなく妹の行動が読めた。


「昨日俺の事を占ったな?」


「え? …………? ……あ、なんとなく、思い出したかも。そうそう、お兄ちゃんのことを占って……そしたら、お兄ちゃんに不幸なことが近々起こりそうだったから伝えに来たところで、ちょっと疲れてたのもあってそのまま布団に入っちゃったのかな……多分」


「昨日何時まで起きてたんだよ……」


「ちょっとある人と話してて、占ったのは……2時、とかだったかな……? あ、お兄ちゃん、今日の朝はね、窓に注意だ……あっ」


なんだ、という暇もなくいきなり窓の外からなにかが俺の部屋に飛び込んできた。最近暑くなってきたので窓を開けて寝たのだが、その窓から、かなり勢いよく俺の目の前をかすめるように何かが、入ってきたのだ。


「…………いや、朝から俺をそんなに驚かせないで欲しいんだが?」


「おっはよー、優くん! 彼女さんが起こしに来てあげたよ!」


「お前には常識ってもんは無いのか……」


「あー、そこになければ、ないですね」


「ダ〇ソーの店員か!」


まぁ、お気づきの人も多いだろうが、我が愛しの狂った彼女、白夢恋夏その人であった。


「狂ったとか酷い表現するね、全く、こんな可愛い彼女のどこが狂ってるんだか」


「人の家に窓から、それもかなりその速度で飛び込んでくる所とかかなぁ……」


朝からかなり疲れる。というか、鈴は大丈夫だろうか。


「あ、妹ちゃんじゃん、おはよーっ」


「お姉ちゃんだー! おはよーっ あれ、お姉ちゃんってお兄ちゃんの彼女なの?」


「そうそうー、昨日から付き合ってるんだよ」


「出会って即お付き合いとか、お姉ちゃん、やばいね、やばいやばい」


恋夏が飛び込んできたからか、それとも自分の兄にいきなり恋人ができていたからか、鈴の語彙力がなんか低下している。 あと、目もなんとなく死んでいるように見える。


「てか、二人は知り合いだったんだな」


「昨日の夜話してたって人は恋夏お姉ちゃんなんだよ。お引越しの挨拶の時にちょっとお話してね、仲良くなったの」


「そそ。ふっ 優くんより先に妹ちゃんを篭絡しておいたよ」


「おい、鈴、悪いことは言わないからこいつとはあんまり関わらない方がいいぞ」


「え? お姉ちゃん、いい人なのに……」


「いい人は朝早くに人の家に窓から侵入したりしません 」


「それは確か、に?」


俺は鈴のことを守らないといけないのでなるべく恋夏から遠ざけようとする。


「えー、恋人の妹とは仲良くしたいよー? あ、うちの妹も交えて4人で話す?」


「男一人とか俺がいづらすぎるんだが?」


てか、恋夏には妹がいるのか。 うちの妹の教育に良くない限りは是非、仲良くして欲しいところだが……


「あ、恋雪ちゃんは私ほどキャラ濃くないから安心していいよ」


「お前みたいなキャラしてるやつで家族構成されてたら家が崩壊しそうだわ、物理的に」


「お父さんもかなり落ち着きあるし、お母さんは……普通の人だから、ほんとに私だけだね、こんなハチャメチャな性格してるのは」


「ハチャメチャなのは自覚あるんだな……治せよ……」


はぁ……とため息をついて俺はリビングに降りる準備を始める。


「およ? 優くん、どこ行くの?」


「あ、お兄ちゃんは朝ごはんの準備だよ。せっかくだし、お姉ちゃん、食べていく?」


「鈴、勝手に誘うんじゃありません。まぁ、でも、食べていくなら作るけど、どうする?」


「え? じゃあ、いただこうかな……?」


「了解、とりあえず、2人ともパジャマ着替えとけよ」


そう言い残して俺は部屋を後にした。……占領されてたが、あの部屋は俺の部屋だけどな?



フライパンを片手に手際よく料理を進めていく。父さんと母さんの弁当を用意しつつ、自分たちの朝食の準備。


父さんはどうせ書斎だし、母さんはもう職場のセッティングに行っているだろう。朝は適当に済ませてあるはずなので、お昼用の弁当である。


ある程度の準備が終わったところで鈴にメッセージを送信し、2人が降りてくるのを待つ。


とっとっとっ と階段を降りてくる音が二人分響く。まぁ、そんなに響いてはないんだけど、探偵は耳もいいもので、それが聞こえてきた。


その音を合図に机に3人分の朝食を並べ、すぐに食べられるようにしておく。


料理を並べ終え、コップを置いたあたりで2人がリビングに入ってくる。


着替えておけと言ったのに鈴はパジャマのままだった。どうせ今日はこの後寝直すかなにかするんだろう、日曜日だし。


で、問題は恋夏。こいつは何故か着替えを済ませていた。 窓から戻って着替えて窓からまた侵入したのか。


朝から変な移動を繰り返すんじゃない、ご近所さんが見たらどう思われると思ってんだ。


そんな俺の気を知ってか知らないかよく分からないが恋夏は俺の方を見てにこっと笑った。可愛いのが腹立つな、このやろう。


そんなこんなで二人はしっかり席に着席。


「恋夏、何が飲みたい?」


「シェフのおまかせで」


「なら、鈴と同じでオレンジジュースにするわ」


「のうしゅくかんげん?」


「手絞り」


オレンジを入れてあるカゴから適当に取って半分にカットし、果汁を絞る。何分、探偵というものは凝り性なんだ、こういう時。


後、覚えておくといい。探偵は料理も大抵上手い。


「じゃあ、召し上がれ」


2人分のオレンジジュースを用意して、自分用のコーヒーを淹れて席につきつつ言う。


今日の朝食はトーストとベーコンエッグ、付け合せにドレッシングを軽くかけたレタス。机にはジャムとバター、欲しい人のためにヨーグルトも置いてある。


「いただきまーすっ」


小夏はとりあえずでトーストにバターを塗ってかぶりつく。サクッと言ういい音が響く。


俺はそんな恋夏の感想を待つ。鈴も感想が気になるのだろう、恋夏をじーっと見ている。


「おいひぃ……」


当の本人はなんとも幸せそうな顔でそんなことをポロッと漏らした。


とりあえずは一安心だな、うん。よかったよかった。


俺は満足して自分のトーストに齧り付いた。うん、美味い。



朝食も終わり、片付けを始める。鈴は食べ終わるとそそくさと部屋へと戻って行った。……が、その際になんとも不可思議なことを言って行った。


なんでも、「黒い……うつつ? に気をつけて」だそうだ。鈴はレベル3ではあるが、そこまでめちゃくちゃ占いの精度が高いわけではない。だけど、全く当たらない占いをすることはないので、何かしらを示唆はしているのだろう、全く検討がつかないが。


なお、恋夏はリビングのソファでぐでぇっとしていた。暇なら片付けを手伝え。


片付けもそこそこに鈴の昼食を作り置きするために準備を始める。 どうせ恋夏は昨日、言っていたこの街の案内……もとい、デートをしようと言い出すだろうから昼は家にいないのは十中八九そうだろう。なので、そのための準備を進める。


そんなことをしていたら恋夏が勝手にテレビをつけた。人の家のテレビを勝手につけるな、許可を取れ、許可を。


テレビで流れ出したのは朝のニュースであった。手を動かしつつ、流し見でそれを見る。今、流れているのはかなり不可解な事件?っぽいものだった。


なんでも、監視カメラで認識出来ない黒い人影だとかなんとか。まぁ、認識阻害はジョブによっては持っているスキルなので、珍しい訳では無いんだが……


実際にその人影を見た人は口を揃えてこう言っているらしい「真っ黒な人だった」と。


この事件自体は俺も知っていた。数日前から目撃情報がかなり多く上がってきているのだ。父さんにも依頼とまではいかないが、情報は寄せられている、らしい。


らしいと言うのが、この人影、なにかする訳では無いのでただただビックリする程度で終わりなのだ。なので、調査するほどの危険度でもなく、父さんも特にこの事件の話はしていない。


出た当初はちらっと俺に情報を流してくれていたので、参考程度に知っているという感じで、それ以降は特に俺に情報が流れてきていないからだ。


だから、俺の知っているのはテレビで流れている情報と大差ないということである。 まぁ、本格的に人に危害が及ぶなら俺も情報収集はするつもりだが、目下は気にしなくていいだろう。


「優くん」


「ん? なんだ?」


唐突に恋夏が声をかけてきた。俺は料理をする手を止めることなく、テレビから意識を逸らして恋夏の方を見る。


恋夏はソファから起き上がりこっちを見ていた。かなり真剣な顔をしている。 俺は一旦、作業の手を止めた。


「人の悪意って形を取るとどうなると思う?」


「どういう意味だ? 質問の意図がよく分からないぞ」


「……やっぱり、いいや。今日はデートだからね、準備終わったらうちに来てよ」


恋夏はそう言い残してテレビを消してリビングから出ていった。


慌てて追いかけたが恋夏は既にうちを後にしていた。能力を使って帰ったのだろう、よく考えたら靴履いてないし。



それにしても恋夏の質問、さっきの事件となにか関係があるんだろうか…… それに鈴の黒いうつつ……黒い人影…… 真っ黒な人。 なにか繋がりそうで繋がらない。


「はぁ…… 仕方ない、あいつを頼るかぁ……気は進まないけど」


俺はケータイを取り出して電話帳からある人を探し、電話を掛ける。この時間なら多分寝てるだろうから後で機嫌を取らないとぶん殴られそうだな……


電話相手に要件を伝え、夕方頃に行くと伝える。電話を切って料理の続きへと戻る。この黒い人影がかなり面倒くさい案件になるのだが、この時の俺はそんなことを想像だにせず、作業をテキパキとこなしていくのだった。

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