デートスポット
俺と新藤は現生徒会長、新藤と如月 玲先輩とのデートの約束をした後、部室に戻ってきたわけなんだが・・・・
「おい、どういうことだよ?」
俺は新藤を睨みつけながら尋ねる。
というのも、新藤は如月先輩とのデートを二人きりでするのにビビったのか、そのデートに俺を巻き込みやがったのだ。
というか、二人で行かないとデートにならないだろうが。
「どういうことも何もねぇよ。そういうことだよ」
新藤は椅子に座って、窓越しに景色を見ながら言った。
「カッコつけて意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇ」
「しょ、しょうがねぇだろ。言っちまったものはどうしょうもねぇんだから」
俺はその言葉に呆れてため息が出る。
新藤 臨弥、お前がここまでのあほぅだとは思わなかったよ。
「新川先生。これどうするんですか?」
俺は振り返って、部室の扉に寄りかかっている新川先生に尋ねる。
新川先生はそんな俺に余裕を持った表情言った。
「フッ。それは好都合だな」
「・・・・・・・何がですか?」
俺は不安げに尋ねる。
この感じ、もう嫌な予感しかしないんだが。
「おい、もうそっちは決まったか?」
新川先生は俺より後ろの方を見て言う。
そこには何故か咲たちが輪になってた。
グーだの、チョキだの聞こえるので、おそらくじゃんけんをしているのだろう。
・・・・・・・でも、なぜじゃんけん?
俺がそんな疑問を抱いていると、突然、歓喜の声が上がる。
「やったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
気が付くと、早苗が腕を上げて喜んでいた。
なになに?恐い恐い恐い。
「ほう。柚原に決まったか。まあ妥当な線だな」
新川先生は何か知った風な口調で言う。
いやいや、俺、全然把握できてないんだけど。
「新川先生。あの・・・・あれは?」
「あ、あぁ。あれはだな。お前の彼女役だ」
「・・・・・・は?」
俺は新川先生の言葉に困惑する。
俺の彼女役?全く理解不能なんだが。
何故俺に彼女役が必要?
オレ、ニホンゴ、ワカリマセン。
「あのな、これは元々決めていたことなんだ」
混乱している俺に新川先生が言う。
だが、俺はそのことあの意味が分からず首を傾げる。
「つまりだな、新藤が如月に告白をするためには、その場を作るためのデートをしなければならない。そして、それをサポートするために我々第二生徒会はそのデートを監視しなければならない」
新川先生は冷静に話し続ける。
そして、
「それで思い付いたのがダブルデートだ」
新川先生は自信満々で言った。
ほうほう。なるほど。
新藤のデートと告白を一番近くで監視するためにダブルデート、というか、そのふりをしろというわけか。
「まあなんとなくわかりましたが、でも、何で彼女役がこいつ?というか、なぜダブルデートにしなければならないんですか?別に女子二人で行ってもいいような気が・・・」
「バカかお前は。そんなことしたら、新藤が女遊びが趣味のただのチャラ男になってしまうじゃないか!」
「あぁ・・・・・すいません」
俺は思わず謝ってしまう。
いや、でもチャラ男の部分は合っていると思うんだが。
「それにだな、お前はもう如月と新藤のデートとやらに同行することは決まっているのだろう。なら、お前はどっちみちこれを拒否する権利はない」
まあ確かに。俺が断ると、如月先輩も断る可能性が出てくる。
如月先輩は新藤とのデートが嫌なのだろうか。
いや、でも脈ありっぽい感じではあったし、単に恥ずかしいだけか。
「わかりましたよ。でも、さっきから言ってるんですけど、何で彼女役がこいつ?」
俺は早苗を指さして言う。
「まあそこだへんは気にするな。それともデートしたい奴でもいるのか?どうしてもというなら、私はそいつにしても構わないが」
「いや、別にいないですけど・・・・」
俺がそう言うと、何故かため息が聞こえた。
どうやら咲たちがしていたようだ。
そんなに新藤の告白を監視したかったのだろうか?
「ちょっと悠人。さっきからあたしに不満があるようなことばっかりいってるじゃない」
「実際にあるから言ってんだよ」
主に俺の命の危険がな。
ホント恐いですよ、マジで。
「よし。とりあえず、これで決まりだな。あとは、デートの場所だが、それは私がすでに決めている」
俺が早苗に恐怖心を向けていると、新川先生が自慢げに言った。
・・・・まじで?新川先生がまともな場所を選べるとは思えないんだが。
俺がそんなことを思っているとは知らずに新川先生は部員全員+新藤に向かって言った。
「では、今からデートスポットを発表する。それは―――――」
*******
向かえた新藤と如月先輩のデートの日。
俺は町の公園のベンチに座っていた。
一応ここがそのダブルデートとやらの待ち合わせなんだが。
「少し早く来すぎたか」
俺は公園の時計を見る。
集合時間の30分前に来てしまった。
別にこれは初デートのカップルみたいに興奮して早く来てしまったわけでは決してなく、ただ単に俺がそう言う人間だからである。
中学の修学旅行だって話す相手もいないのに予定時間の一時間前に集合していたっけな。
・・・・・・・・・さあ、そろそろ誰か来ないかな?
俺が昔の寂しいエピソードを思い出していると、遠くの方から人影が近づいてくる。
あれは・・・・・。
「如月先輩」
「すまなかったな。少し遅れてしまった」
如月先輩は申し訳なさそうに俺に言った。
「いえいえ。まだ集合時間には時間ありますし。謝る必要ないですよ」
「そうか。ならいいんだが・・・」
そういえば、如月先輩の私服を見るのは始めてだな。
でも、これは・・・・
上はピンクの可愛らしいニットのセーター、下は青のジーンズを着ているんだが、どちらも、出るところが強調させられていてなんというか・・・・エロいな。
「・・・・そんなじろじろ見るな」
如月先輩は恥ずかしそうに俺に言った。
どうやら俺はかなりのガン見をしてしまっていたようだ。
「あっ!すいません」
「いや、謝る必要はないというか、お前なら別に・・・・」
如月先輩は何かごにょごにょ言っているが、声が小さすぎてよく聞こえない。
というか、新藤は一体何をやっているんだ。
まだ集合時間ではないが、如月先輩来てるんだぞ。
早く来てほしい。
俺はそう思いつつ、新藤と早苗が来るのを待っていたんだが・・・・・。
―――――30分後。
「まだ来ないな」
「ははは・・・・そうですね」
如月先輩の呟きに俺が苦笑しながら答える。
おい。新藤お前は何をやっているんだ。
もう如月先輩がいるんだぞ。というか、もう集合時間だぞ。
全く。あいつは本当に今日告白するつもりがあるのだろうか。
ちなみに早苗はいつものことなので、新藤が着き次第行こう。
まあその時は俺が適当なところでフェイドアウトして、新藤と如月先輩の二人のデートを見守るとしよう。
あまり気が進まないが。
「ごめん!少し遅れた!」
俺がそんなことを思っていると、背後から早苗の声が聞こえてくる。
早苗の服装は、上は白と黒のボーダーのTシャツに赤のカーディガンを羽織っていて、下は黒のカラーパンツだ。
まあ早苗の私服は夏休みにほぼ毎日見ていたので特に感じるものはない。
いや、少し可愛いとだけ言っておこう。うむ。
「チッ」
「ちょっと!遅れたからって、舌打ちはしなくてもいいでしょ!」
「舌打ちなんてしてねぇよ。空耳じゃないのか?チッ」
「絶対してる!というか今したじゃない!」
「はいはい。わかったから耳元でギャーギャーわめくなよ。鼓膜が破れる」
俺がそう言うと、早苗も何か言い返してきたが無視をした。
それよりも、如月先輩が何故か不思議そうにこちらを見ているのがかなり気になるんだが。
「如月先輩?どうしました?」
「あ、あぁ。いや・・・・その子はもしかして・・・・陰山の彼女か?」
如月先輩は尋ねるが、その表情はどこか不安げだった。
それはあれですか。俺に彼女がいるということはそんなにおかしいことということですか。
まあ実際早苗は彼女ではないので、さっさと真実を言ってしまおう。
「いやいや、こいつはただの幼なじみですよ。というか、もしかしてこいつが来ること振動から聞かされていませんでした?」
「・・・・・そうか。なら安心だ」
如月先輩は俺の尋ねたことには反応せず、胸に手を当て深呼吸をしていた。
新藤に会うのにそんなに緊張しているんだろうか。
でも、生徒会でほぼ毎日会っているはずなんだけどな。女子の気持ちとやらはようわからん。
でも、まあこれだけは言える。
如月先輩は確実に新藤に気がある。
だから新藤。
早く来い。頼むから。
「すいません。遅れました」
俺の願いが通じたのか、背後から新藤の声が聞こえる。
「やっときたか」
「すいません。少し事情があって遅れてしまいました」
新藤は走ってきたのか、ぜえぜえ言いながら如月先輩に言う。
俺はそんな新藤に近づいて耳元に小さな声で言った。
「おい。どうしたんだよ」
「別にお前に関係ねぇだろ」
「あるに決まってんだろ。これでお前の告白が成功しなかったら、うちの顧問辺りに半殺しにされるんだよ」
「うるせぇな。少し服選ぶのに手こずっちまっただけだ。心配するな」
いやいや、服を選ぶのに手こずる?
お前は乙女か。
本当、勘弁してほしい。
「よしじゃあ行くか」
俺はそう思いながらも、気を取り直して言ってから、デートスポットへ向かって歩き始める。
すると、如月先輩たちも同時に歩き始めた。
ちなみに新川先生が選んだデートスポット。
それは、
水族館!!
・・・・・・・これで本当に大丈夫なのだろうか?




