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笑顔

俺はちーちゃんと一緒に下校していたが、買い物をしなければいけなかったので、途中で別れた。

俺はスーパーへの道を歩きながら、ふと空を見る。

綺麗な茜色で、夕日が美しく町を照らしていた。

こんな景色の中、一人で歩くというのも、一つの青春というものだろう。

・・・・・・・・・・何言ってんだ、俺。

さあ、さっさと買い物済ませるか。


俺はそう思いながら、前を向くと、そこにはうちの制服を着た女子生徒がいた。

それはもう大分見覚えのある女子だった。


「・・・・・早苗」


俺は小さな声で呟くと、女子生徒は落ち着いた様子で答えた。


「悠人。話があるわ」

「・・・・あぁ、わかった。でも」


俺はズボンのポケットから財布を出して指を指し言った。


「先に買い物、していいか?」


俺がそう言うと、早苗はじーっと俺を見つめて、眉間にしわを寄せながら言う。


「・・・・・・は?」


・・・・ごもっともな反応です。



******



俺は買い物を終えると、早苗に公園行くことになった。

もちろんデートではない。

早苗の話を聞くためだ。


俺と早苗はスーパーから五分くらい歩くと、公園に着いた。

そして、俺と早苗は近くにあったベンチに座る。


「で、話っていうのはなんだよ」

「わかってるくせに」


早苗は悲しそうな表情で俺に言ってから、続けて話す。


「悠人。どうして部活来ないのよ」

「別に部活に行かなくちゃいけないってわけじゃないだろ。俺がいなくてもまだお前らがいるんだし」


俺は早苗に視線を向けずに言った。

実際そうだ。

俺が行っても行かなくても部活自体には何ら影響はない。


「・・・・・何でそういうこと言うのよ」

「何でって言われてもな。俺には他にやらなくちゃいけないことがあるんだよ」

「乙川さんのこと?」


早苗は俺の方を向いて、尋ねる。

だが、俺は相変わらず、早苗の顔を見ずに答える。


「・・・・あぁ。そうだ」


俺の言葉に早苗は顔を俯かせ、寂しそうな表情をする。


「・・・・どうして、そこまでするのよ」

「俺はまだちーちゃんに何もしていない。・・・・何も、償ってない」


俺は小さな声で早苗に言う。

そうだ。俺はまだちーちゃんに何も償っていない。

だから、俺は自分自身のことよりも彼女のことを考えなければいけない、彼女のためになることをしなければいけないのだ。


「別に、悠人がそこまでする必要ないじゃない。だって、悠人は乙川さんを助けようとしただけなのに・・・・」

「でも。俺は助けられなかった。助けようとしただけで、結局何もできなかったんだ」


俺は過去に俺がやってしまった罪を噛みしめるように言う。

だが、早苗は俺の言葉を認めないかのように俺に言った。


「・・・・悠人、お願い。戻ってきてよ」


早苗はとても弱々しい声で言う。

でも、俺は自分の気持ちを隠すように、そして、過去は変えられないのだと自分に言い聞かせるように答える。


「・・・・・・・ごめんな」


そして、俺はゆっくりと立ち上がり、その場を去った。



*****



ついに来てしまった。

実に最悪な日である。

本当は家で午前中はゴロゴロしながら、午後からはひたすらギャルゲーをするという休日のはずなのに、何で俺は、


「遊園地にいるんだ・・・・・」


俺が肩を落として言うと、隣にいる美少女が俺に笑顔を向ける。

その笑顔はとても可愛らしく、うちのクラスの男子どもが見たらすぐキュン死にしてしまうだろう。

言っておくが、俺はそんなことはない、可愛いとすら思わない。・・・・・ようにしている。


「何でって、決まってるじゃん。デートだよ。で・え・と♡」

「うるさい。いちいち言うな」


俺はちーちゃんに顔を背けながら言う。

ここ最近、ちーちゃんは露骨に何というか、恋人のような振る舞いをしてくる。

まあ一応恋人っちゃあ、恋人なんだが。

俺はそう思いながら、園内を見渡すと、人はそんなにいない割に、いるといったらカップルばかりである。

本当勘弁してほしい。

アトラクションは良くも悪くもありきたりのものばかりで特に特徴がない。

・・・・・・あれ?何かこの遊園地しょぼくない?


「何か普通とか思ってるでしょ?」


突然、ちーちゃんは耳元で俺に呟く。


「うわぁ!?・・・・お前、何してんだよ。それ、やめろ。ってか、やめてください」


本当、俺の性感帯に新たな扉が開きそうだから。


「しょうがないなぁ、悠くんは」


ちーちゃんは嬉しそうな、でも少し小悪魔的な笑みを俺に向けた。


この人は一体何をしたいんだろう。

・・・・・まあ、それはわかっているか。俺が一番。

この笑みも、彼女の言葉も全部偽物だ。

俺に償いをさせるための、俺を幸せにさせないための。

だけど、俺は別にそれでもいい。

あの時に見られなかった、見ることができなかったちーちゃんの笑顔を、たとえ偽物でも見ることができれば、それでいい。


「よし、行くか」


俺はちーちゃんに向かって言うと、ちーちゃんはまた可愛い笑顔で俺に答えた


「うん!」


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