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被っているから

俺たち第二生徒会は目の前にいる女子生徒が言った言葉に唖然としていた。

生徒会が俺らの部活、第二生徒会を廃部にする。

それが彼女の言った言葉だ。

そしておそらく彼女は生徒会長だ。胸に着けているバッジがそれを示している。


第二生徒会。

俺と桜空で創部し始めて、まだ三か月も活動していない部活である

そして今となっては、早苗と木の葉も入部してようやく部活らしくなってきたばかりだ。

だが、


「廃部、だと」


俺は目の前にいる生徒会長が言った言葉を再度呟く。


この部活が廃部。

それって・・・それって・・・めっちゃ良くね?

だって、この部活が廃部になる→俺の平和な日常が戻る→ちゃんとしたモブキャラとして学園生活を送ることができる。

おぉ。なんだこれは。素晴らしいではないか。

ようやく神様もモブキャラというものがどういうものかをわかってきたようだな。

まさかこんな展開をプレゼントしてくれるなんて。

ホント神様、マジ神。


「そうかー。廃部かー。これは残念だ。非常に残念。だがしかしこの部活は永遠に俺たちの胸の中に刻まれることになるだろう。さらば第二生徒会。そしてありがとう第二生徒会」


俺は涙を流し、アニメで言う最終回的なテンションで言ったあと、部室を去ろうと歩き出すと、


ガシッ!


俺は何やら肩を誰かに捕まれたようで、振り返ってみると、そこには早苗と言う名のそれは恐い恐い女子高生がいた。・・・・・・・・・・・・ホント恐っ。


「悠人。あんたに二つの選択肢をあげるわ」


早苗はまるで犯罪者が人質に対して脅すときのように俺に言ってくる。


「ここを去る代わりに明日からこの世界から消えるか、ここを去る代わりに明日から神様に一番近いところで生活を送るかよ」


いや、それどっちも俺死んじゃってるよね?そうだよね?


「じゃあ俺はここを去らない代わりに生命を維持できる方で」

「ならいいわ」


いいのかよ!?こいつ選択肢の意味をちゃんと分かっているのか?

ちょっと陰山さんは心配になってきたぞ。


「それより」


早苗は俺の言葉を聞いた後、生徒会長の方へ向き直す。


「なんであたしたちの」

「どうして私たちの部活が廃部になるのでしょうか?」


桜空は怪訝そうな表情で生徒会長に言った。

・・・・・って、早苗さん。今セリフ取られたみたいな顔をしてましたね。

違いますよ。本来は桜空がこういう役割なんですよ。

ついでに早苗さんはパワー担当なんですよ?わかりましたか?

ということを直接は言わずに心の中でそう言っていると、生徒会長が桜空の疑問に答えるため口を開く。


「そうか。お前らは知らないのか。なぜこの部活が廃部になるのかを」


廃部。

確かになぜ俺らは廃部にならなくちゃいけないんだ?

別に大した事件も起こして・・・・・・・あぁ。起こしましたね、学年集会で、思いっきり。

まあ、もしあれが先生を通じて生徒会に伝わったら、廃部になるのもむりはないな。

俺が諦めムードでそう思っていると、生徒会長は自信に満ち溢れたように胸を張って言う。


「じゃあ何も知らないお前らのために教えてやろう。お前らが廃部になる理由。それはな」


生徒会長の言葉に部室にいる全員に緊張が走る。

そして、


「私たち生徒会の名前とほぼ被っているからだ!!!」


・・・・・・・・・・・・・・???


我ら第二生徒会の頭の中はおそらくこんな感じだろう。


「なあ?今名前が被ってるとか、被ってないとか言ってたように聞こえたんだが気のせいだよなぁ?」


俺は桜空に尋ねる。


「え、私もそう聞こえたような気がしましたが・・・・違うんですか?木の葉さん」


桜空は木の葉に尋ねる。


「私も、そう聞こえた。違うの?柚原」


木の葉は早苗に尋ねる。


「え、あたしもそう聞こえたわよ。ねえ?」


早苗は生徒会長に尋ねる。


「あ、ああ私もそう言ったつもりだが」


生徒会長は少しこの空気に動揺しつつも答えた。


そうか。やっぱ聞き間違いじゃなかったか。そうか、そうか。

俺はわかったかもしれない。

自分が今何をすればいいかを。

それは、


「木の葉」


俺は木の葉の名前を呼んでから、俺が木の葉に親指を立てるグッジョブサイン(名前は今俺が決めた)を出すと、木の葉も親指を突き立てグッジョブサインをし返す。

そして、俺と木の葉はお互い横に並び、手を開き、手の平を生徒会長に向ける。


「な、なんだその手は。私にそれを向けて何をするつもりだ。まあ何をしようともここの廃部は変わらないがな。はははは・・・・・・?」


生徒会長が高笑いをしたあと、俺は木の葉にアイコンタクトをし、

そして


「「そいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」


俺と木の葉は手のひらを生徒会長に向けたまま、生徒会長に真正面から突っ込む。

そう。これが俺と木の葉の必殺、名前で廃部にする生徒会長なんか出て行け張り手である!!


「ちょ、ちょっとやめろ。それは危ないぞ。危ないって・・・・危ないからやめ」


バコーン!!


その音とともに、生徒会長は俺と木の葉の共同張り手によって、部室から廊下に追い出された。


バンッ!ガチャ!


「はい、じゃあ部活再開しようか」


俺はまるで何事もなかったかのごとく部員全員に言った。


ドンッ!ドンッ!ドンッ!


「で?みんな何してたんだっけ?」

「私、オセロ」

「あたしもオセロよ」


俺の質問に木の葉と早苗も何事もなかったかのごとく答えた。


「はい、じゃあオセロの続きやってー」


俺はまるで小学校の先生のように言った。

ホントこいつらは順応が早くて助かる。

まあこういうのに順応が高いのはいいのかと聞かれると、何とも言えないが。


ドンッ!ドンッ!ドンッ!


「桜空は?」


俺が桜空に尋ねると、桜空は少し戸惑いつつ答える。


「あ、はい。読書をしていましたが・・・」

「はい、じゃあ読書やってー。俺は音楽を聞こうとしていたからそうするわー」


俺は桜空にそう言って、バックから音楽プレーヤーを取り出そうとすると、


「あの、陰山さん?」

「なんだ?桜空?」

「その、いいんですか?」


桜空は部室の扉の方に目を向けて言う。


「何がだ?」

「何がって・・・・扉が叩かれているのですが・・・」

「そうか?俺は何も聞こえないぞ」


そうそう。何も聞こえない。

なんか生徒会長が「私をこんな目に遭わせていいのか」とか「中に入れないと、どうなるかわかっているのか」とか「お願いだから、入れてください」とか言ってることなんて全然聞こえない。・・・・・・・ってか、弱気になるの早ぇなぁ。

途中から扉叩かなくなったし。


「陰山さん、可愛そうですよ」


桜空は心配そうな表情で扉に再度目を向ける。

その桜空の表情を見て、俺は、はぁと一つため息をする。


「しょうがねぇな」


俺は部室の扉を開けると、そこには先ほどの威勢は何処へ行ったのか、しゃがみながら、ぐすんぐすんと泣きべそをかいている生徒会長がいた。


「もう、なんだよ。別に追い出す必要なんてないじゃないか。ひどい奴らだ。ホント・・・・ホント」


え、マジかよ。

まさかここまでもろい人だとは思わなかったぞ。

ギャップありすぎだろ。もはやこれは詐欺の領域。


「ちょっと、その、大丈夫ですか?」


俺は自分がしたことに少し罪悪感を感じつつ尋ねると、生徒会長は俺の顔を見るなり、泣いているところを見られて恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にしながら急いで涙をぬぐう。


「な、なんだ?ようやく廃部を受け止める気になったか!そうか、そう」


バンッ!


「わかったから。もう言わないから。もう偉そうな態度取らないから。開けて。頼むから開けて」


いや、別に生徒会長なんだから偉そうにはしてていいというか、そういう問題じゃないんだが・・・・。

俺はそう思ったが、反省はしているようなので再度扉を開ける。


「ふぅ、やっと開けてくれたか。これでようやくまともな話し合いができるな」


この人ホントに懲りてるんだろうな。

ってか話し合いができなかったのはほぼあんたのせいだよ。


「で?廃部はもちろん取り消してくれるんですよね?」


俺は少し強めに生徒会長に向かって言う。


「は?何を言っている。もうそれは決定じこ」


俺は三度部室の扉を閉めようとする。


「待て。待って。話を聞け」


生徒会長の言葉を聞くと、俺は扉動かしていた手を止める。


「何ですか?」

「確かに私は名前が被っているからこの部活を廃部にすると言ったが、実際の所はそれが一番の理由ではない」

「?じゃあその一番の理由とやらはなんなんです?」


俺は半分呆れつつ、生徒会長に尋ねると、予想外の答えが返ってくる。


「それはな、ここ第二生徒会は部活の申請が出ていないんだ」


・・・・・・・・・・・・・・は?


「いやいや、俺たちはきちんと出していますよ」

「いや、出ていない。出ていないんだ」


生徒会長は真剣な目で俺を見つめる。その表情から嘘を言っているようには到底見えない。

となると、

新しく部活ができた場合、申請を出すのは顧問である。

そしてうちの顧問はというと・・・・・


もう皆はお分かりだろう。つまり、



「全部あいつのせいかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



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