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廃部(爆乳生徒会長登場)

もうだいぶ気温が上がり始めて、学校もそろそろ衣替えの季節である六月の初め。

この前の木の葉の件も終わり、無事、俺にも静かで平和な日常が、


「ちょっと、木の葉さん!勝ち逃げは許さないわよ!もう一回勝負よ!勝負!」


・・・・・・・・・・・戻らなかった。


俺は放課後になるなり部室に直行すると、早苗が木の葉といつか桜空とやっていたようにオセロをやっていた。

まあなぜ木の葉がここにいるかというと、転校しないと俺に言ってきた翌日にこの部室にやってきて入部を希望してきたのだ。

そんなこんなで入部が決まって、今となっては早苗とオセロをする中にまでなっているというわけである。


「柚原。何度やっても同じ」


木の葉は自慢げに胸を張って言う。


「お、同じじゃないわよ!次は勝つんだからね!そしたら・・・・」

「次、勝ったら、悠人と、デート」

「おい。俺を勝手に巻き込むな。ってか、なんだよデートって」


デートってあれか?

一人の男と一人の女が遊園地だの水族館だのでイチャコラ、イチャコラするやつか?

俺は親指を立てて言った。


「木の葉、絶対勝てよ!」

「ん、大丈夫」


木の葉も親指を立て返す。


「ちょっと何それ。あたしが勝ったら何かマズイことでもあるの?」

「いや、お前とイチャコラなんかしたら、たぶん俺はこの世にはいないぞ」


イチャ(=殴る)コラ(=蹴る)。ほら、俺死ぬじゃん。


「それにお前も俺とデートなんて別にしたくないだろ?」

「そんなことは・・・・・って、な、何言わせるのよバカ!」


 早苗は顔を真っ赤にさせつつ、拳を握る。


「あれ?なにかなその拳は?ってかオセロは?オセロやんなくていいの?オセロ」


バチコーン!


早苗の拳は目にも止まらぬ速さで俺の顔面にえぐり込まされた。


「いてーめっちゃいてー」

「ふん。悠人が変なこというからよ」


早苗がプンプンしながら言う。

俺がいつ変なことを言ったと言うのか。

ただ早苗とデートしたら俺の命が危ないということを言っただけなのだが。

デートをしたら命を取られる。

これはなにデレというのだろうか。

(ころ)デレ。・・・・・・・・・・・・うん、これはダメだね。


「悠人。柚原と、話し過ぎ」


木の葉は座っている俺の膝の上に乗ってくる。

これが普通の美少女だとヤバいくらいドキドキなんだが、木の葉だとやはり幼く見えてしまうため、感覚的には小学生と戯れている感覚だ。


「こ、木の葉さん!なにやってるのよ!」

「何って・・・・膝枕?」


 木の葉が首を傾けて言った。


「いや、それは違うと思う」

「じゃあ、やって」

「やってって、膝枕をか?」


木の葉はこくりと首を縦に振る。

いやいや、いくら木の葉が小学生くらいの容姿に見えるからって、男が付き合ってもない女い膝枕をするのはまずいと思うんだが。


「そんなのだめよ!」


ですよねー


「柚原、何で?」

「な、何でって言われても・・・。悠人!」

言い返す言葉がなくなったからって俺の名前を呼ぶな。ってか、お前はどんだけ言語能力ないんだよ。

でもまあさすがに、このままだと俺がロリコン扱いされそうだから早苗の援護に回るとしますか。


「木の葉。今の木の葉に膝枕をすると、俺が犯罪者になっちゃうからもっと大きくなってからにしような」

「そう、なの?」


木の葉が上目遣いで俺に尋ねる。


「そうだ」

「そう。なら、やめとく」


木の葉はどうやら納得してくれたようで、俺はロリコン犯罪者にならずにすんだようだ。

さすがに犯罪者になったら主人公がどうの、モブキャラがどうのとか言ってる場合じゃなくなってしまうからな。ははは・・・・・・・はぁ。


「そういえば、桜空はどうしたんだ?まだ来てないみたいだけど」


俺は木の葉と早苗に尋ねる。


「そういえばそうね。木の葉さん知ってる?」

「いや、知らない」


おいお前ら。オセロに集中し過ぎて絶対桜空のこと忘れてただろ。

全くひどい奴らである。

え?俺はしっかり覚えてたよ。

もう部室入った瞬間から『マジか!?桜空がいないなんて、部活サボっちゃおうかな』ぐらいには覚えてたんだからね!


 ガラガラガラ!


俺がそんなことを思っていると、部室のドアが急に開く。

そして部室に入ってきたのは学年一の美少女であり、この部活の副部長(今俺が決めた)こと桜空 咲だ。


「あ、桜空さん」

「桜空、遅い」


早苗と木の葉がまるで待ってましたというようなテンションで桜空に話しかける。

いや、お前ら今の今まで忘れてただろ。


「すみません。少々新川先生と話し込んでしまって」

「新川先生とか?」


うーん、おかしいな。

あの新川先生が誰かとおしゃべりする姿なんて想像できないんだが。

だって、あの人語るなら拳でタイプでしょ。そうでしょ。


「あ、忘れてました、陰山さん。新川先生が何やらお話があるそうで屋上に来いとのことです」

「それって今か?」

「はい」


桜空は笑顔で俺に答える。

何故だろう。もはや嫌な予感しかしないんだが。

いや、でも新川先生は桜空と話し込むぐらいおしゃべりしていたらしいし、俺に

対してもきっとそうだろう。うん、そうに違いない。








バチコーン!


やっぱちがうじゃーん!


俺は屋上に行くなり、初っ端から思い切り新川先生の右ストレートを顔面に食らった。

その威力はホント俺が死んでもおかしくないぐらいのものである。

ってか、マジ俺よく今ままで死なずに済んでるよな。時々、ゾンビじゃないかと錯覚するぐらいの丈夫さである。


「ったく、お前のせいで私がどれだけ大変だったと思ってるんだ」


 新川先生はまるで野獣のような目で俺を睨みつける。


「あ、あぁ。盗聴器の件ですか。それは、すみませんでした。でも、別に悪いことに使ったわけじゃないんだから、そこだへんは見逃してくれてもいいじゃないですか」

俺は先ほど新川先生に殴られた所をさすりながら言う。

「何を言ってるんだお前は。私が怒っているのはそれじゃない」

「え?」


それじゃないの。じゃあ別に俺は何もしてない気が・・・・・って、盗聴器のことを怒らねぇとか教師としてどうよ?

まあそれなら盗聴器を教師が持ってる時点でどうよ?って話になるんだが。


「私が怒っているのはお前の停学の件だ」


 新川先生は俺に人差し指を突き出して言った。


「あぁ。そのことですか。それならちゃんと反省文書いたでしょ。右手を犠牲にするぐらいまで」


まじであれ超痛かったんだからな。

しかもあの時から数日箸もろくに使えず、晩飯の時に妹にあーんされるハメになったし。

マジであれは危なかった。

そのままの勢いで俺の貞操が取られそうで。


「確かにお前には反省文を書いてもらったが、そういうことじゃなくてだな」

「じゃあどういうことですか?」


 俺は新川先生に尋ねる。


「お前の停学を誤魔化した件のことだよ」


あぁ。そのことか。

そう。俺は問題の学年集会の日に先生方に捕まったあと、どうにか新川先生に頼んで同じクラスの生徒や同じ学年の生徒たちには『陰山は体調が崩れて長期休暇する』ということにしてもらったのだ。

せっかくモブで居続けるために名前を明かさずに木の葉を助けることができたんだからな。

停学ごときで俺のモブライフが終わってたまるかってことだ。


「それが大変だったんですか?」

「そりゃ大変だったさ。『私の部活の大切な生徒なので停学の公開だけは勘弁してください』とか思ってもないこと言ったりしてな」


思ってないのかよ。

あんたがそんなに愛のない人だとは思わなかったよ。


「まあそれに対して生徒たちは聞いたりとかはして来なかったけどな」


はは、さすが俺の存在感。

モブキャラとしてはありがたいことなんだけど、こう人からそういうことを言われると意外にくるな。ハートに。

でも、新川先生が怒るのも無理もない。

俺の私的な理由で新川先生に迷惑をかけたのだ。ここは素直に謝るのが筋だろう。

 

「それは・・・その、すいません」


俺は新川先生に頭を下げる。

そんな俺を見るなり、新川先生は急に笑い出して


「はははは。お前が素直に謝るなんて珍しいじゃないか。その態度に免じて今回は許してやろう」


新川先生は高笑いを続ける。

うわ、すごい上から目線。

いや、確かに立場上としても上だから別に構わないんだけど。

俺がそう思っていると、新川先生は急に高笑いを止め出して優しい表情になって、俺に近づいてくる。

そして、俺の頭に手をポンと置くと、


「よくやったな。悠人」


新川先生は笑みを浮かべ、俺に言った。


 「いや、別に俺何もやってないんで。というか先生、ずっとそんな表情しておけばいいんじゃないんですか。もともと美人なんだし」

「はははは。じゃあお前の言う通り、そうすることにしようかな」


いや、絶対俺の言うとおりにするつもりないでしょ。もう戻っちゃってるよ。

新川先生はそう言うなり、後ろに身体を向けて、屋上の出入り口にゆっくりと歩いていく。


「悠人。今のお前なら、彼女のことも助けることができるかもしれないな」

「?なんか今言いました?」

「いや、何でもないよ」


 新川先生はそう答えて、屋上の出入り口の扉を開けて、学校の中に入って言った。

 俺は新川先生がいなくなったあと、屋上から見える景色を眺めながら呟く。


「・・・・・・彼女」





********



新川先生との話も終わり、屋上から部室に戻ると、桜空がミステリーものの本を読んでいるのはいいんだが、早苗と木の葉はまたオセロをやっていた。

なに?ここいつからオセロ部になったの?

もうなんならいっそ大会出ちゃいます?下手したら優勝できちゃうかも。


「あ、悠人。遅いじゃない。一体新川先生と何話してたのよ」


俺がオセロ部に改部しようと企んでるとは露知らず、早苗は俺に尋ねた。


「別に。ただ説教食らってただけだよ」

「はっはーん。さては悠人がアホすぎて怒られたんでしょ?そうなんでしょ?」

早苗はバカにしたように俺に向かって言う。

ぐぬぬ、まあ確かにあれは捉え方によっちゃ俺がアホすぎて怒られたのかもしれないが、早苗にそれを言われると人間として終わりのように思えるのは俺だけだろうか。


「うるせ。そんなことはオセロで誰かに一回ぐらい勝ってから言え。」

「バ、バカにしないでよ!あたしだって一回ぐらい勝ったこと・・・」


「ない」

「ないですね」

「ないな」


どうやら俺、桜空、木の葉のトリプルパンチが決まったようで、早苗はがっくりとうなだれる。

「う、うぅ。あたしだって・・・・あたしだって・・・・」

ほんの冗談・・・でもないが、そこまで本気で落ち込むことではないと思うんだが。どうやら俺は早苗のオセロ魂をなめていたようだ。

仕方がない。とりあえず謝っておこう。

ってか、俺は今日何回謝ればいいのやら・・・・。

俺は謝るために早苗に近づくと、


ガシャン!


急に部室のドアが勢いよく開く。

そして部室にいる全員がその方向に顔を向けると、そこには一人の女子生徒がいた。

その生徒は桜空に負けないくらいの顔立ちをしていて、まるで外国人のような綺麗な青い瞳をしている。

髪は赤みがかった茶髪のロングヘアーであり、胸も豊満さは早苗に勝るとも劣らな・・・いや、勝っている!

 

一言でいえば男のロマンが詰め込まれているような、そんな女子生徒だった。

だがしかし、世の中そんなに甘いものではない。

いい面があれば悪い面もあるというのがこの世の定理である。


「ここが第二生徒会だな」


その女子生徒は入ってくるなり、俺たちに尋ねる。


「はい。まあそうですけど」


 俺が女子生徒にそう答えると、その女子生徒は唐突に衝撃の言葉を告げる。


「ここ第二生徒会は、我々生徒会の権限をもって廃部とする」


・・・・・・・・・・・・・・・え?


「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」(第二生徒会一同)


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