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助けに来ました

転校まで残り一週間を切ったある日、私は晩御飯を食べ終えた後、お父さんに書斎に呼ばれた。

私は書斎の扉の前に着くと、扉をコンコンと二つ叩く。


「入っていいぞ」


私はお父さんのその言葉を聞いてから「失礼、します」と一言言ってから扉を開け、書斎に入った。


「雫。そこに座りなさい」


私はオフィスチェアに座っているお父さんにそう言われると、いつものようにお父さんの目の前にあるソファに座る。


「雫。転校の準備はちゃんとしているのか?」

「・・・・・はい」


私は少し俯きながらそう答えた。


「いいか、雫。もう少しでここからいなくなるんだ。・・・・・・思い出なんか作るんじゃないぞ」

「・・・・・・・はい」


私はお父さんの言葉にそう返事をしたあと、書斎を静かに出て行った。



****



私は書斎でお父さんとの話を終えたあと、なぜか一人で近くにある公園に来ていた。

夜空はいくつもの星が輝いており、辺りは真っ暗で公園の街灯に明かりが灯っている。

私はベンチに座ると、私のこれまでのことについて思い出していた。

中学生の頃の一つの出来事がきっかけで人を信じなくなり、お父さんもその出来事が起きてから私を一か月に一回転校させるようにした。

そして、私はその影響もあり誰とも関わろうとはしなくなっていった。


私は一人が好きだ。

だって、何をしていても誰にも邪魔されない、自分が不快になることもない、そして、裏切られることもない。

だから、私は一人が・・・・・一人が・・・・・


「好きじゃ・・・・ない」


私は涙を流しながらそう呟いた。

どうしてこうなってしまったんだろう。

私はただ楽しく過ごしたかっただけなのに。

私はただ小さな幸せが欲しかっただけなのに。


その時、私は小さくも誰かに伝わるように、自分の心の中にある言葉を言った。



「・・・・・・・助けて」



******


俺は花実が出て行ったあと、花実が作り置きしていった晩御飯を食べ終えたら、そのまま外に出て散歩をしていた。夜の散歩ということもあって、人通りは全くなく、まるで何かの事件の前ぶれである静けさのようだ。

俺はそんなことを思いつつ、しばらく歩いていると、前の方に公園らしきような場所が見えた。

俺は近くに行ってみるとそれはやはり公園で、どこかその公園には見覚えがあった。

これは・・・・・・そうか、木の葉と来た公園か。

そう。それで木の葉はこの公園で自分の過去についてすべて俺に打ち明けた。

その過去は彼女にとって記憶から消し去りたいくらい残酷なものだというのに・・・・。

俺はその時のことを思い出していると、公園の奥の方から誰かの声が聞こえた。

その声が少し気になって、俺は声のする方に向かってみると、そこには泣いている一人の女性がいた。

髪は白く、背は小さめで、顔は・・・・?待てよ?

俺はその女性をしっかり見ることができるように、一、二歩女性のいる方向に近づいてみると、その女性の姿は木の葉 雫だった。

俺は木の葉を見て、かなり動揺していた。

女性が木の葉だったことに動揺しているわけではない。

俺が動揺しているのは、木の葉が泣いていることだ。

今まで誰にも弱みを見せず、決して助けを求めてこなかったあの木の葉が。

俺がまだ動揺している最中(さなか)、木の葉は泣きながら何か一人で言った。

そして、俺はその言葉を聞いた瞬間、彼女のすべてを察した。


『・・・・・・・助けて』


俺は言った。

一人が好きなやつもいるのだと。

俺は思っていた。

木の葉は助けを求めたことはないと。


でも、それはすべて違った。


彼女は、木の葉 雫は、本当は一人なんか好きじゃなかった。

騙されても、裏切られても、それでも人と繋がりたいと思っていたのだ。

だけど、それはできなかった。

過去というものはそれだけ重く、振り払えないものだから。

だから、彼女は助けを求めたのだ。あの時、俺に。

木の葉は自分の過去を俺に話した理由を自分と似ているからと言っていた。

確かにそれもあるかもしれないが、実際はたぶんあの時、彼女は俺に助けを求めていたのだ。彼女と似ている過去を持っている俺に。

だけど俺はそれに気付けなかった。

木の葉が唯一助けを求めた瞬間だったというのに。


俺はこの時思った。

彼女をできることなら救いたいと。救ってやりたいと。

だけど、今の俺にはそれができない。

なぜなら、


俺もまた彼女と同じ、過去を振り払えていないのだから。



*****



翌日、俺はいつもより少し早めに朝食を済ませ、スクールバックを片手に通学路を歩いていた。

歩きながら俺は、昨日、木の葉が流していた涙と助けてと言う言葉がずっと頭の中に浮かんでいた。

俺は木の葉を救いたい。でも今の俺にはもう・・・・・。


「陰山さん!」


聞き覚えのある声が急に聞こえてきて、俺はその声がした方向を見ると、そこには学年一の美少女であり、第二生徒会の部員である桜空 咲が目の前にいた。

そして彼女は笑顔で俺に向かって言った。


「私はあなたを助けに来ました」


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