表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/79

ラブコメ

俺は木の葉に手を引っ張られながら、デパート内にあるアイスクリームのお店があるところに向かっていたんだが・・・・・・・。


「いた、いたたた、痛い、痛い、痛いって」


只今、木の葉が握っている俺の手が絶賛激痛中デス♡


「ねえ、木の葉さん?聞いてらっしゃいます?おーい」


俺がさっきからどれだけ呼びかけても木の葉からの返事が返ってこない。

マジでそろそろこの手を離してくれないと、俺の手が粉砕しそうなんだが。

俺が自分の手を真剣に心配していると、木の葉はまるで電池切れしたラジコンのように急に運んでいた足を止めた。


「ん?どうした?」


俺がそう聞いても、木の葉からの返事は戻ってこなかった。

俺は木の葉の様子が気になって、木の葉の顔を見ると、木の葉はまたあのジュースのときのようにどこかに真っ直ぐ視線を向けていた。

俺がまたあの時みたく木の葉の視線の先を追っていくと、その視線の先にはゲームセンターがあった。


「ゲームセンター、行くか?」


俺が木の葉の視線の意味を何となく理解し、そう尋ねると、木の葉は嬉しかったのか目をキラキラさせて、顔をこっちに向けた。

しかし、そんな表情になったのも一瞬のことで、またすぐに通常の表情に戻って、顔を俯かせ何かを真剣に考え始めた。


「なにをさっきからなに考えてんだ?別に行きたかったら行けばいいんじゃないのか?」


さっきから木の葉が色々と我慢をしているようなので、俺はそう尋ねると、木の葉は俺の言葉に首を左右に振った。

そして、その後に小さな声で言う。


「借り・・・・作っちゃうから」


借り?何のことだろうか?

もしかして高い位置にあるジュースを取ってあげたり、ゲームセンターを一緒に行くのことを借りと言ってるのだろうか。

もしかしてあれですか。荒川ア○ダーザブリ○ジのリクル○ト的な考えですか。

おい、まさか木の葉の家にほ○とか住んでないだろうな。

俺がそんな風に好き勝手妄想していると、木の葉の借りのことなんかどうでもよくなってきた。

俺は色々難しく考えている木の葉の手を掴んで、今度は俺の番だと言わんばかりにゲームセンターに向かって、木の葉を引っ張って行く。


「ちょ、ちょっと」


木の葉は俺の行動が予想外だったのか、かなり戸惑っている。


「木の葉は行きたいんだろ?ゲームセンター」

「そ、それはそう、だけど」

「ならいいんだよ行っても。あんま深く考えんな。あ、言っとくけどこれは俺が強引に連れだしたから木の葉の借りじゃないぞ、俺の借りだぞ。だからなんか困ったことあったら俺がなんか手伝ってやる」


掃除当番とか。


「う、うん」


俺の言葉を聞くと木の葉はさすがに折れたようで、小さな声でそう言った。

どことなく頬が赤くなっていたように見えたが、まあ気のせいだろう。

ついでにお嬢様、幼なじみ、親戚であり顧問の人影が見えたことも気のせいであって欲しい。

俺はそう願いながら、木の葉と一緒にゲームセンターに入っていった。



******



俺と木の葉はゲームセンターに入ると、休日なのでそこそこ人が入っており、ゲームの種類はかなり多く、様々なものがあった。

俺はたまに一人でゲームセンターに来るんだが、そのときはいつも格闘ゲームやカーレースのゲームばっかやっていて、それ以外のものなどやったことがないので、もしそれ以外のゲームをやろうと言われたら、自分から言っておいてなんだが、かなり困る。

そう例えば、


「クレーンゲーム」


そうそうクレーンゲームとかね。

よくラノベとかの主人公がヒロインとのデートの時にゲームセンターに来て、いとも簡単にヒロインの欲しがってるぬいぐるみを取っちゃうシーンとかあるけど、あいつらどんだけクレーンゲーム上手いんだよって話だよね。

おそらく週七で通ってるレベル。

・・・・・・・・あれ?なんか今悪魔の囁きが聞こえたような。

俺はふと後ろにいるはずの木の葉を見ると、木の葉はクレーンゲームの機械の前に立ち止まっていた。

おいおい、木の葉さん。

あなたは俺をラノベの主人公かなんかだと思ってるんですか。

見くびらないでほしい。

俺はモブを目指すものであって、そんな俺は確実にクレーンゲームでお金を使い果たして、木の葉を失望させる自信があるぞ。

俺は自信満々に余計なことを考えていると、誰かに服の袖を引っ張られていた。

袖の方に目をやると、そこには服の袖を引っ張って、俺をクレーンゲームの所に行かせようとする木の葉の姿があった。


「え?木の葉さん?マジであれやるの?」


俺がそう問うと、木の葉はこくりと頷く。

・・・・・はぁ。ここまで来たらやるしかないか。

俺は覚悟を決めて、木の葉と一緒にクレーンゲームの前まで行くと、木の葉は

クレーンゲームの中の一番奥にあるくまのぬいぐるみを指さしてきた。


「あれ、ほしいのか?」


俺がそう尋ねると、木の葉は「うん」と小さな声で答えた。

まあ何となく俺に取れと言っているのはわかるが、木の葉が自分で取るという選択肢もなくはないと思い、俺は一応確認することにした。


「木の葉が取るのか?」


木の葉は首を横に振る。

ですよね。


「陰山、取って」


木の葉は上目づかいで俺を見つめながらそう言う。

それを木の葉は別に意識してやっているわけではないと思うが、それが愛らしいというかそんな感じに可愛かった。

たぶん俺の顔は軽く火照ってしまってるだろう。


「お、おう。任せろ」

俺は木の葉の顔を見たら勢いでそんなことを言ってしまった。

あぁ、これがロリパワーというものか。(*そんなものはありません)

言ってしまったものは仕方がないので、俺はポケットに入ってる財布から小銭を出してクレーンゲームの機会に入れる。

そうしたら機会からスタートの合図と思われる音がしてきたので、俺はクレーンゲームのボタンの部分に手を置いた。


「さっきあんなこと言っといて何なんだが、必ずとれるわけじゃないからな」


俺がそう言うと、木の葉は俺の言葉に首を縦に振る。

これでオーケー。

先にこういうことを言っておけば、もし失敗したとき、空気は悪くならないとまではいかないが、ある程度は緩和みたいなことができる。

ホントこういう時は先手必勝に限るのだ。


「じゃあ、始めるぞ」


俺はそう言ってから一番奥にあるくまのぬいぐるみ目指して、まずは横のボタンを押す。

そうすると、クレーンはピーという音を出しながら横に動き出した。

そして俺はくまのぬいぐるみの所に合わせるようにボタンを離した。

よし、横はたぶんこれで大丈夫だな。

俺はひとまず安堵したあと、もう一回気持ちを引き締めて、今度は縦のボタンを押す。

クレーンは俺が先ほど動かした位置から奥に進んでいく。

俺はくまのぬいぐるみに合わせるように集中しながらボタンを離すタイミングを待つ。


まだ・・・・・まだ・・・・・・・いまだ!


俺は自分がここだと思った瞬間、ボタンを離した。おそらくクレーンはぬいぐるみの真上にある気がする。だがクレーンゲームというのは真上だから必ずとれるというわけではないので、まだ安心など全然できない。

クレーンはその位置に止まったあと、ゆっくりとくまのぬいぐるみの所に降りてくる。

どうにか頼む。掴んでくれ。

俺がそう願いながらクレーンを見つめていると、クレーンはくまのぬいぐるみの両脇の部分に引っ掛かった。

いいぞ。これでこのまま取り出し口の所まで持ってこれればこのぬいぐるみを取れる。

しかし大体ラノベではこういう場面で一回落とすとかいう現実で起こったら迷惑極まりないことが起きてしまうのだ。俺はそれだけは勘弁してくださいと再度願いながらクレーンを見つめているとクレーンはもう取り出し口の手前まで来ていた。

もうすぐだ。頼む。いってくれ。

そして取り出し口の所からガシャンという音が聞こえた。

どうやら、くまのぬいぐるみを取ることができたようだ。


よ、よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!


俺は落ちたくまのぬいぐるみを見るなり、俺の心の中はこんな感じだった。

いわゆるパラダイスだ。

べ、別に取れなかった時の緩和できないどうしても発生する気まずい感じが恐かったわけじゃないんだからね。勘違いしないでよね。

俺は内心こんな感じだったが、頑張って平静を装って、くまのぬいぐるみを取りだして、木の葉の前に差し出す。


「ホントに、いいの?」


木の葉は驚いた様子で俺に聞いてきた。


「もともと、そういうつもりで俺に頼んだんだろ。なら受け取ってくれ。その代わり、なるべく大事に扱ってくれよ。二度と俺には取れないかもしれねぇんだから」


俺が少し笑いながらそう言ったら、木の葉は恥ずかしかったのかすこし顔を背けながら、


「あ、ありがと」


そう言って、くまのぬいぐるみを受け取った。


「どうした?なんか顔赤くないか?」

「な、なんでもない」


木の葉は俺が聞いたことにそう答えると、一人でゲームセンターの奥の方に行ってしまった。

ん?どうしたんだ?なんか変なことでも言っただろうか。

俺は少し心配しつつ、先ほどぬいぐるみを取ることができたクレーンゲームを見る。

だがなぜあんなに簡単に取れたのだろう。

俺はクレーンゲームの経験など皆無に等しいというのに。

俺は不思議に思いながら、ふとクレーンゲームの横の方にある貼り紙を見る。

その貼り紙には「初心者でも簡単、ほぼ確実に取れるクレーンゲーム」と書かれてあった。


・・・・・・・・・・・・・・あぁ、そういうことですか。



******



俺は一人でそそくさ行ってしまった木の葉を探していると、木の葉はある機会の前で立ち止まっていた。

俺が木の葉の元まで行ってみると、そこには最新型のプリクラ機が置いてある。


「もしかして、これ、やりたいのか?」


俺が恐る恐る聞いてみると、木の葉はこくりと頷く。

いやいや、こういうものは大勢とかカップルとかで撮るものなわけで、ついさっきまともに絡んだばかりの男女が撮るには俺としてはかなりの鋼のハートがいるんだが。


「マジで撮るの?」


俺がもう一度聞き直す。


「うん。マジ」


うわ。マジだ。

この静かで口数が少ない木の葉がマジという単語を使うとは。これは大マジだぞ。

あれ?こんなやり取りを前やったことがあるような・・・・・まあいいか。

俺と木の葉はプリクラ機の中に入ると、木の葉はよほど珍しかったのか辺りをぐるぐる見回していた。


「木の葉はプリクラ使うの初めてなのか?」


俺がそう質問すると、木の葉は「うん」と小さく言った。


「陰山は?」

「え、俺か?俺はないぞ」

「え、ほんと?」


俺の言葉が意外だったのか驚いた様子で、木の葉は俺の顔を見つめてきた。

木の葉の目は透き通っていて、まるで引き込まれるようで、俺はそれで恋に・・・・・・・・落ちません。

危ない、危ない。そこらへんの一般peopleだと明らかに騙されるレベル。

俺はモブキャラである。

なので恋愛、ラブコメなどは一切起きない。

え?デパートで女子とデートするのはいいのかって?

これは断じてデートではない。

調査なのだ。だからセーフだ。・・・・たぶん。

俺がラブコメをしているかについて葛藤していると、木の葉が小さく独り言のように呟く。


「陰山は、私が、初めて」


いやいや、木の葉さん。色々言葉が足りてないよ。

初めてなのはプリクラね。

主語がなくてその言い方はかなり誤解されるよ。特に俺が。


「じゃあ撮るか」


俺がそう言って、財布からお金を出そうとすると


「いい。私が払う」


木の葉が財布を取り出そうとする俺の手を止めて、木の葉は自分の財布をポケットから取り出した。


「え、いや、いいよ」


俺がそう言っても、木の葉は譲る気がないのかもうお金を投入口に入れようとしていた。

さすがに女子にお金を出してもらうのは、なんか男としてダメな気がする。

俺はそう思い、お金を入れようとする木の葉の手を止めて、


「じゃあさ、半分ずつ出すか」

俺がそう言ったら、木の葉は少し悩んだが了承してくれた。

そしてお金が入れおわり、プリクラが動き出す。

最初はモードを選択するものだった。


『みんなでワイワイモード』

これは大勢で撮るものらしく、大人数で遊んだ場合やなにかの打ち上げの時とかに撮るものらしい。


『カップルラブラブモード』

これは二人で撮るもので、その名の通りカップルがラブラブしてるように撮ることができるらしい。


あとは・・・・・・・・えっ、これだけ?

いやいやいや、これじゃあ俺たちが撮れるのないじゃん。

『今日初めて会いましたよモード』とか『ロリとモブが撮りますよモード』とかないの?ないな。

さあ、でもどうしようか。

このままだと俺と木の葉のお金が無駄になっちまう。

まあ悩んでいても仕方ないので、俺は木の葉にどうするか聞こうとすると。


ポチッ!


木の葉は独断でカップルモードを押していた。

・・・・・・木の葉さん?

俺は驚きのあまり声も出ず、ただ呆然と立ち尽くす。

木の葉はボタンを押した後、何事もなかったように俺の隣に来て何気にピースをしていた。

だがおそらくそんなポーズはなかなかしてこなかったのだろう。

木の葉のどこかぎこちないそのポーズを見ていると、俺はなんか微笑ましくなって、俺も木の葉と同じようにピースをする。

そして何枚か撮ると機械から俺と木の葉のプリクラが出てきた。

普段の生活のせいか、お互い笑顔もピースもぎこちなくグダグダのものだったが、木の葉はそれを見ると、とても喜んでいたようなのでまあ良しとしよう。

俺が木の葉の反応を見て、笑みを浮かべていると木の葉がこっちを向いてきた。


「ん?どうした?」

「アイス」


木の葉は小さく言う。


「あぁ。そういやそうだったな」

「今から行く」

「いいけど、ゲームセンターはもういいのか?」


俺が木の葉に尋ねると、木の葉は微笑を浮かべて言った。


「うん。もう楽しんだ」

「お、おぉ。そうか」


その木の葉の表情はとても可愛らしく、しかも普段、表情の変化が少ないヒロインが不意に見せる思いがけない表情のような感じがして、俺の心臓は跳ね上がってしまった。

ち、違うぞ。これはラブコメではないぞ。

少し笑顔に動揺してしまっただけであって。絶対ラブコメではないからな。

断じてラブコメと認めない陰山さんです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ