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星の下で  作者: ちびひめ
8/29

体育祭

竹中由起子はクラス委員だった。

面倒見のよい竹中には、いつも相談する者が絶えなかった。


私はそんな彼女を遠目で見ていることしかできなかった。


竹中は実に良くできた子だった。朝は一番に登校して、花瓶の水換えや生き物の世話をし、授業はしっかり受け、休み時間には友達の相談事にのっていた。いつもきちんとしていて礼儀正しい子だった。


そんな中で、体育祭の練習が始まった。体育祭の委員はくじ引きで私と竹中に決まった。

決まったときに、思わずガッツポーズをしてしまったが、誰もみていない様だった。

体育祭委員に決まった私たちは、色々することがたくさんで参ってしまった。それでも竹中は淡々と仕事をこなしていった。私はいつも

「ごめん、ごめん。」

と言うだけで、実際なんの役にもたっていなかった。それでも竹中は、

「いいよ、大丈夫。」

と、何でもこなしていった。

体育祭委員でなんとか竹中と会話できるところまでいったんだけど、何も話すことがない。

とりあえず無難に体育祭の出る種目について話をした。

「僕、50メートル競争にでるんだけど、誰が一番早いと思う?」

我ながら細かい質問だと思った。だが、竹中は、

「水谷くんが一番になると思う。」

とさらりと嬉しいことを言ってくれた。

これは一番を取るしかない!!私はそう、力強く思った。



体育祭当日、体育祭委員の私たちはあっちこっちと忙しくしていた。

そんな中でも竹中は私のフォローを怠らなかったし、

「競争、頑張ってね」

とまで言ってくれた。

私の胸は高鳴った。


「用意!」パァァン!

と銃の音が鳴る。

つぎはいよいよ私の番だ。

応援席をみると、竹中が

「頑張れ!!」

と応援してくれていた。

私は足に力を込める。


「用意!」

パァァン!


銃が鳴り響いた。

私は力みすぎたか、スピードが乗らず、結果二位だった。

悔しくて涙が出た。


そんな私に竹中が

「惜しかったね!頑張ったね!」

と声をかけてくれた。私は泣き出しそうになるのを必死でこらえた。



竹中は、親の転勤で体育祭のあと、引っ越してしまった。


私は何も言えないまま、甘酸っぱい気持ちだけが残った。

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