竹槍
「今日は昔の話をしようか。」
そう言いながら私は花瓶の花を活けかえた。
「レンが生まれるよりずっと前に、僕は生きていたんだ……」
花を活ける手を休めて、私は遠い空を見た。
「僕が生まれたのはちょうど戦争のちょうど最中でね、まだ空襲とかはなかったけど、それに怯えながらの出産だったらしか。気がついてみれば、姉と兄の二人はいなくなっとった。疎開先に里子にだされたらしいとけど、詳しいことはわからん。だから、僕はあまり姉と兄のことは覚えていないと。
いつも弟をおぶって歩いていたかな。
うちは代々農家で、最初のうちは食べるものには困らんかったんだ。
幼稚園なんてなかったからね、いつも同じように弟や妹をおぶっている子たちとおはじきやままごとをして遊んでいたと。
僕は昔は女の子だったつたい(笑)
そうこうしているうちに戦争が激しくなってきて、僕が通いだした小学校では、校庭にさつまいもば植えとったと。教科書も、墨でたくさん塗りつぶされた教科書だった。キチクベイエイという言葉だけはしっかり教わったばい(笑)
そのうち、敵の飛行機が空を飛ぶようになって……チラシばばら蒔いていかしたと。降伏するなら命は助けてやる、みたいな文だったと思うな。あんまり字を習わんかったけん、よく読めはせんかったとけどね。
その頃からうちの畑には泥棒が増えてきてね。ご飯も配給制になった。
この頃には、竹槍を持ってキチクベイエイ!とか叫びながら竹槍の練習ばたいぎゃしたつばい。」
レンを見つめるが、何の反応もない。
ピッ、ピッという電子音が規則正しく続く。
「レン……死んだらいかんよ。生きなきゃ!」
私はそう言葉をかけると病室を後にした。




