事故
起きてしまったこと――――
それは事故だった。
その日私たちはいつものように秘密基地で遊んでいた。
そんな私たちに合流しようと急いでいたレンは――――自転車で車に跳ねられた。
何も知らずに私たちはただレンを待っているだけだった。と言ってもあそびながらだが。
暗くなってきたのにレンが来なかったのは何か用事が出来たんだろう、と私たちは考え、とりあえず解散した。
家についてから第一声はお母さんの
「翔!無事でよかった!」
というものだった。
「なんだよ、大げさだな。」
と私が言うと、お母さんは涙声になりながら言った。
「レンくんが――」
「レンが?」
「車に跳ねられたの。」
「えぇっ!?」
「それでね、意識不明の重体だって……」
お母さんの言葉を聞くか聞かないかのうちに、私は駆け出していた。レンの家へ。
レンの家についてから、チャイムを何回も押した。けれど、誰も出てこなかった。
慌てて追いかけてきたお母さんに、私はすがりつくと
「大丈夫だよね?レン、大丈夫だよね?」
と何度も繰り返した。
お母さんはただただ私を抱き締めるだけで、何も言わなかった。
翌日、学校へ行くと、朝から全校集会があった。
昨日のレンのことだった。
「昨日、悲しむべき事故がありました。」
校長先生はそう言うと、昨日レンが事故に遭ったことを持ち出し、言った。
「幸い、ヘルメットを被っていたので命はとりとめましたが、まだ意識不明の重体です。」
ひそひそ話が聞こえる。レンだということを知っている人間が知らない人間にそれがレンだということを教えていく。
「――と言うことで、みなさんもヘルメットはきちんと被るように気を付けてください。以上。」
校長先生の言いぶりから、レンの命は無事だったとわかった。
熊本ファイヤーズはみんな沈んでいた。
そりゃそうだ。秘密基地の約束さえなければ、レンは事故に遭わなかったかもしれない。私たちは黙っていたが、考えていることは一緒だった。
「レンのお見舞いに行こう!」
誰ともなしに言い出して、私たちはレンの見舞いにいくことになった。




