離婚
谷先輩の件があった後もレンはいつものように接してくれた。
「今日は花火持ってきたばい。」
「花火すっと?俺二段花火ばする!」
「二段花火って何?」
「こうして人差し指と中指と薬指で二つ花火ば持つとばい!」
「おぉ、武者んえぇね!俺もそれしよう!」
レンが持ってきた花火に目を輝かせる私たち。
そう、ここは秘密基地。
親にだまってライターを持ってきたレンは、得意気に花火を見せた。
「レンくん、花火は危なかよ、やっぱり。」
と弱気になる私に、レンはいつもの調子でおちゃらけて見せる。
「ちゃんとろうそくも持ってきたけん、大丈夫ど。」
と言うレンの自信におされて私は口をつぐむ。
夕方になり、暗くなり始める前に花火大会は始まった。
二段花火はみんなの間でとても流行った。
私ももちろん、二段花火をして遊んだ。
花火が終わるとレンは、どこから持ってきたのかバケツに水を張って持ってきた。
「片付けばちゃんとせんば、危にゃーけん……」
妙なところが律儀な子だ。
私たちは花火をバケツに突っ込むと、それぞれの家に帰って行った。
私とレンは最後だった。
レンが口にする。
「うちの父ちゃんと母ちゃん、りこんするてたい。」
「りこん?」
「だけん、俺は父ちゃんと引っ越すか、母ちゃんと今の家に残るか決めなんてたい。」
「レンくん、引っ越すと?」
「……俺は男だけん、母ちゃんば守っていかなんと思うつたいね。だけん、多分引っ越さん……」
「りこんって、どういう意味なん?」
「父ちゃんと母ちゃんが別れて離ればなれに暮らすって意味らしい。」
「それって、レンくんのお父さんがお父さんじゃなくなるってこと?」
「そぎゃん感じ。母ちゃんには俺がおってやらんと、可哀想だけんね。だけん、俺は引っ越さんどこうて思う。」
「そっか……」
この頃は私は離婚の意味合いがまだよくわかっておらず、レンの話を深く聞いてやることは出来なかった。
前世でも独身で独り身の私には離婚云々がよくわからなかった。
ただ、レンが辛い、それだけはよくわかった。
「僕はどぎゃんなったって、レンくんの友達だけん」
それしか言葉が出なかった。




