2.
2.エピローグ
「しくしくしく……」
膝を抱えて泣きじゃくる成人男性がひとり。大学の研究室、教授の座る席にいた。もちろん、佐上教授である。
「ごめんなさいって! 本当」
私は机を挟んで向こうで泣く教授に必死で謝っていた。あの後、なんとか着地をした私だったが、勢いがつきすぎて、ほぼ地面に正面激突状態だったため、教授が後生大事に抱えていたオーパーツは大破してしまったのだ。
ついには椅子をくるりと回転させてしまった教授に平謝りしていると、ガチャリと教授室の扉が開けられた。ゼミ生なのだろうか。慣れた様子で膝を抱える教授に向かっていった。
「教授! まだやってるんですか! 小峰さん、あなたももう謝らなくていいのよ。むしろ教授が小峰さんに感謝しなきゃいけないでしょう!!」
「だって、オーパーツがぁ……!」
「命助けてもらっておいて……! もうっ! そんな態度でいていいんですか? 私は教授のお母様に何かあったら連絡をしろと連絡先を……」
その女生徒がそこまで言いかけたときだった。教授が即座に立ち上がり、次の瞬間には机の上で土下座していた。
「小峰君、この度は命を救っていただき誠に! ありがとうございました!!」
「……」
部屋が静寂に包まれる。どちらともなく、私とゼミ生であろう女生徒は顔を見合わせる。しばしの沈黙の後、ついに吹き出してしまった。
教授。史学オタクの変人だけかと思っていたら、かかあ天下なご家庭のマザコンだったらしい。見よ、この立ち代りの速さ。
まだ爆笑の渦から抜け出さない私たちを横に教授は不満げな表情をしている。私は心からの笑顔のまま、そんな教授に向き合う。
「教授、私あなたのゼミに入ります。……考古学の研究、させてください」
「いいだろうとも。史学とはパズルゲーム。きちんと研究してくれたまえよ。――小峰君は……まず着陸の仕方だな」
そう茶目っ気たっぷりにウィンクをよこしてきた教授だったが、やっぱりはてしなく似合っていなかった。
共作、惑星コーネリアスを舞台とした小説。他の作品は「惑星コーネリアス」で検索をしてください。