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それから、俺と  作者: 坂上 葱久
オオカミくんとの出会い
7/22

発覚と楽しくない会話

 夜になった。時刻は二十一時。

 私は迷っていた。手には渡されたケータイの番号とアドレスが書かれた紙。

「どうしよ……」

 一人ごちてみてもなんの解決にもならないけど、声に出したら決心つくかとも思った。けど、そうはならなかった。

 部屋の中をウロウロ歩き回る。一応、彼の番号とアドレスは登録した。それから一時間。いまだに通話ボタンを押せずにいる。と、手の中がブルブル震えた。表示は……チエか。


「もしもし?」

「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 いつもの電話のような、テンション高めで別に用はないんだけど~って入りじゃない。これはきっと深刻な話かもしれない。息を呑む。

「今日、オオカミくんと一緒だった?」

 心臓が飛び出そうになる。

「い、い、いやぁ~、そんなことはないんじゃないかな~? タブンミマチガイダトオモウヨ~」

 しばしの無言。痛い。痛すぎる。

「……あんた今、鼻の頭かいた?」

「え? うん」

 唐突な質問に正直に答えてしまった。

「あんた、嘘ついたでしょ? ユキが嘘つくときは大概、そこを触るからネェ」

 バレバレ!? さすが小学校からの付き合い。

「で、なんでオオカミくんといたの? しゃべったの?」

「ぐ……ハイ、しゃべりました。理由は……そう、友達作りたいって相談されたんだよ!」

「あんたまた鼻の頭かいてない? なんでアンタにオオカミくんがそんなこと相談するのよ」

「いやぁたまたま偶然にバッタリ会っちゃって、しゃべってみたんだけど内容が内容だけにねー」

 打ち明けづらい、と。そういうことにしておこう。

「ふぅん。で、どうしたの?」

「きょ、協力するってことで手を打ちました!」

 軍曹に向かって敬礼する兵士のようにハキハキと答える。見つかってしまったなら仕方ない。噂はきっと既に広まっていることだろう。幸いなのは、中身を聞かれていないこと。


 それから、あーだこーだと無駄な議論(?)を交わして、チエにおやすみなさいを言った。

「がぁぁぁぁぁぁ!」

 腹の底から今まで出したことのないような声を出す。やってしまったー! おととい初めてしゃべってから、バレるの早すぎない!?

 ともかく、これでトキトに電話する用事ができた。急いで通話ボタンを押す。

「もしもし? ユキ?」

「な、なんでわかったの?」

「だって、このケータイ、ユキとしゃべるためだけに買ったから」

 またそういうこと言う。一々、ドキッとすることは言わないで欲しい。

 それにしても古いケータイだった。多分、もう何世代も前の形だったと思う。赤外線通信ができないケータイなんて久しぶりに見た気がする。

「そういや、吸血鬼もケータイなんて持つのね」

「うんにゃ、持つヤツなんていないよ。みんなコウモリを使役して、伝達するからね。でも、ユキはできないから」

「アハハ……そっか……」

 こういうところに人間とは違うってところが見える。そっか、コウモリね。

「それでさ、今日トキトといたところを、誰か知り合いに見られてたみたいなんだよね。やっぱ、マズイ? 一応、ごまかしておいたんだけど……」

「別に~」

 なんともあっけない返事だった。誰かと交流しちゃいけないってわけじゃないのか。

「なんてごまかしたの? 物によっては口裏合わせておいたほうがいいよね?」

「それなんだけど、相談を受けたって言ったの」

「内容は?」

「その、なんていうか、友達を作りたいって……」

 やっぱりこのごまかし方には無理があったような気がする。今まで、そんな素振りを一切見せていないトキトだからこそ余計に。

「なんだ、そんなことか。別にいいんじゃないかな? バレない程度なら」

「えぇ~、そんなことって……。そしたら、昼間寝てらんないかもしれないのに」

 友達を作りたいって行動を取らないといけないかもしれないし、なによりチエが何事か作戦があるらしく、黒い笑い声を聞かされた。

「別にいいじゃん、友達。それとも、ユキは俺の友達がユキだけのほうがいいの?」

「な、バ、バカなこと言わないでよ!」

 そんな嫉妬してるみたいな言い方しないでよ。変に意識するから。


 それから今日あったこととか、これからの対策とか話してからおやすみなさいした。これからが俺の時間だー! とか言ってたけど、無視した。

 時計を見ればもう零時を回っていた。色々考えたいこともあったけど、さすがに寝なくちゃいけない。朝は弱いほうなのだ。

「はぁ……」

 一日の終わりはため息とともに。

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