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それから、俺と  作者: 坂上 葱久
オオカミくんと立候補
22/22

終幕と・・・


「――えー、以上で生徒会新役員選挙演説を終了させていただきます。また、今回は立候補者が各一名づつでありましたので信任投票となります。この後、クラスに戻ってから信任するか、しないかを用紙に書いてもらいます。クラス委員長はその用紙を持って、生徒会室へ来ること。では、これで解散です。おつかれさまでした」


 あの宣言から一週間。全ては謎に包まれて終わってしまった。……トキト、夙川、私の三人以外は。

 突然の辞退を表明し、選挙活動も終了。その後は、何事もなく日は過ぎていき、今日、夙川綾子は晴れて新生徒会長として、この学園に君臨することになった……のだが……。


「今回、私は数々のマニュフェストを掲げ、ここまで選挙活動をしてまいりましたが、全てを一旦白紙に戻します。ついては、学園のみなさんの意見を広く取り入れるため、目安箱の設置、これのみを今回のマニュフェストとし、その後の学園運営に関しましては、その要望を勘案することといたします」


 要約すると、変わらないこともまたよし、ということらしい。

 そのまるで180度変わった意見は、彼女の取り巻きからも非難がでたそうだが、そこは夙川綾子。彼女のカリスマによって、静めたらしいが、詳しくはわからない。


 それから、トキトはというと――。

「Zzzzzzz……」

 相変わらず、自分の机で寝こけている。結局、出馬する前となんら変わらない生活をしている。変わったことと言えば、トキトには友達が二人できた。

 勘違い? から始まったとはいえ、大目標であった友達作り。その一人目は――。


「おっはようさーん! あ! あんた、また寝てんの? ったく……今日はせっかくの大ニュース持ってきたのに……」

 小羽千恵。彼女が発起人となって、今回の騒動が大きくなったわけだが、その間になんとな~く仲良くしゃべっている風景は何度か見られた。

 選挙を辞退すると聞いたときは、天地がひっくり返るほどのびっくり&怒りで収拾がつかなくなったが、大目標のことを思い出した途端に、それは静まった。むしろ、今まで以上にトキトをかまうようになった。曰く、「参謀役は譲る」とのこと。意味が分からない。

 それから、もう一人。

「ね、その大ニュースってなに!? できれば記事にしたいんだけど……」

 チエの話に食いつく先輩。時任柚葉。彼女も先輩でありながら、おもしろい連中を見つけたと、私たちのクラスに入り浸っている。こちらもいつの間にかトキトと仲良くなっていた模様。

 それから、おそれていた夙川からの報復攻撃だが、まぁ……お察しの通りあるわけもなく、日々、平々凡々としております。取り巻き連中についても、夙川から厳命されたらしく、むしろ尊敬のまなざしで見られる始末。

 

 なにも変わらないようで、少し変わった学園生活。

 楽しいか? と聞かれると、まぁ楽しいと言えると思う。

「あんた、そろそろ起きなさいよ! 毎日毎日寝やがって! 昼間、寝てばっかなんて、あんた吸血鬼かなんかじゃないの?」

 !!!

 一瞬、ドキっとした。

「そんなわけないだろ? 夜のバイトが忙しいんだよ……もう少し、寝かせてくれ……」

 耳元で怒鳴られたトキトは適当にごまかした。なんというか、常に冷静な対応ができるところは本当に尊敬する。

「あんた、バイトしてんの? なにか欲しいものとかあんの?」

「イヤ、特に……」

「でも、お金あるんでしょ?」

「ん、あぁ、まぁ……」

「じゃ、決定。秋の大型連休は旅行で!」

 

 ………………。

 

「「は!?」」

 思わず、私と時任先輩が素っ頓狂な声を出してしまう。

「あぁ、大丈夫、私とユキもバイトして貯めるから。まぁ、出してくれるって言うんなら、乗ってあげなくもないけど?」

 クイクイっと人差し指と親指の先端をくっつけるチエ。

「イヤ、その……そんな唐突に決められても……」

 一応、フォローを入れてみる。ところが――。

「いいじゃん、旅行。で、行き先は?」

「ふっふっふ……それがさっきの大ニュースとつながるんだけど、東の山のほうにトンネルあるじゃん。近寄るなってことになってるけど、あの向こう側を調べてみたら、なんと! リゾート地らしいのよ! 車で一時間くらいのところだけど、学生の旅行だったらこんなもんでしょ。というわけで、トンネルの向こう側を見に行く&ちょっとリッチなところに泊まろう小旅行! ってことで」

 ちょっと待て。もしかして、そのリゾート地とか言われてる場所って……。トキトに目で聞いてみる。

 

 俺の家。


 そうということだけ目で伝えてきた。

「いいじゃん。おもしろそう! さすが、小羽さんね。もちろん、私も連れて行ってくれるんでしょうね?」

「ええ、もちろん! カメラやその後の記事などは先輩にお任せしまっす!」

 なぜか隣ではトントン拍子に話が進んでいってる。え? なにこれ? 決定事項?


 そんなわけで、まだまだ穏やかではない日々が続きそうな朝の学園だった。

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