港の責任者が下した判断
第三話を読んでくださり、ありがとうございます。
第四話では、
昨日の救出劇を受けて、
港の責任者がガルムを呼び出すところから始まります。
魔道具が便利になりすぎた街で、
“人の力”がどう扱われるのか。
そして、ガルムが本当に“働ける”のか。
感情ではなく、
街の制度と現場の事情が動く回です。
ぜひ、続きを楽しんでください。
翌朝。
俺たちは再び港へ向かった。
ガルムは緊張した面持ちで歩いている。
昨日の救出劇のあと、作業員から
「責任者に報告する」
と言われたのだ。
ガルムは何度も拳を握りしめていた。
「兄ちゃん……俺、ちゃんと話せるかな」
「大丈夫だ。
昨日のお前を見たら、誰だって分かるさ」
港に着くと、
昨日の作業員が手を振った。
「来てくれたか。
責任者が話したいってよ。ついてきてくれ」
ガルムはごくりと喉を鳴らした。
***
責任者の部屋は、港の奥にあった。
中には、白髪混じりの大柄な男が座っていた。
「……ガルムだな。
昨日の件は聞いている」
低い声だが、怒気はない。
ガルムは背筋を伸ばした。
「はい……!」
責任者は書類を閉じ、ガルムを見た。
「まずは礼を言う。
あの状況で動けたのは、お前だけだった。
命を救ってくれて、ありがとう」
ガルムは戸惑ったように目を伏せた。
「い、いえ……俺はただ……」
責任者は続けた。
「だがな。
“助けた”ことと“働ける”ことは別だ」
ガルムの肩がわずかに震えた。
俺は心の中でうなずいた。
(ここからが本題だ)
責任者は机の上の魔道具の図面を指した。
「魔道具は便利だ。
だが最近、荷物の種類が増えすぎて、
エラーが頻発している」
作業員が補足する。
「昨日みたいな“緊急対応”は、魔道具じゃ無理なんだよ」
責任者はガルムに向き直った。
「お前の力は確かに必要だ。
だが、港の仕事は“規則”が多い。
獣人だから、という理由で雇わないわけじゃない。
ただ、正式に雇うには手続きが必要だ」
ガルムは唇を噛んだ。
「……俺、働けるんですか?」
責任者は少しだけ笑った。
「“働ける可能性がある”と言った方が正しいな」
ガルムの目が揺れた。
「可能性……」
「今日一日、試験的に働いてもらう。
その結果を見て、正式に判断する」
ガルムは息を呑んだ。
「……や、やらせてください!
俺……もう一度、胸張って働きたいんです!」
責任者は力強くうなずいた。
「よし。
では今日からだ。
お前の力、見せてもらうぞ」
ガルムは震える声で答えた。
「はい……!
全力でやります!」
***
港を出たあと、
ガルムは空を見上げた。
「兄ちゃん……
俺、本当に……もう一度、働けるかもしれないんだな」
俺はうなずいた。
「“働けるかもしれない”じゃない。
“働くための一歩を踏み出した”んだよ」
ガルムは拳を握りしめた。
「……ああ。
絶対に掴むよ、このチャンス」
若者たちの未来が、
確かに動き始めていた。
第四話では、
ガルムが“救った命”とは別に、
働くためには制度の壁があるという現実を描きました。
責任者の判断、
魔道具の限界、
港の人手不足。
その中でガルムは、
「試験採用」という一歩を掴みました。
次の第五話では、
ガルムが実際に“働く現場”に立ち、
その力が本当に通用するのかが試されます。
ぜひ、続きも読んでいただけると嬉しいです。




