港で起きた“人にしかできない救い”
第一話、第二話を読んでくださり、ありがとうございます。
第三話では、
港で起きた“あるトラブル”をきっかけに、
ガルムが久しぶりに 「自分の力が誰かの役に立つ」 という瞬間を迎えます。
魔道具が便利になりすぎた街で、
人にしかできないことは本当に消えてしまったのか――
その問いに、少しだけ光が差す回です。
ただし、
「働けるかどうか」はまだ分かりません。
ここから先は、街の“現実”と向き合うことになります。
ぜひ、続きを楽しんでください。
翌朝。
俺たちは市場を後にし、港へ向かった。
ガルムが働いていた場所だ。
港は朝から騒がしい。
巨大な荷揚げ魔道具が、無機質な音を立てながら荷物を運んでいる。
その動きは正確で速い。
だが――どこか“冷たい”。
ガルムは苦い顔をした。
「……ここだよ。
俺ら獣人が働いてた場所」
「魔道具が入って、全員クビになったんだよな」
「ああ。
でも……兄ちゃん。
俺、やっぱりここが好きなんだ」
ガルムの拳は震えていた。
***
そのときだった。
「おい! 誰か来てくれ!!」
怒号が響いた。
見ると、荷揚げ魔道具が巨大な木箱を持ち上げたまま停止し、
荷台が大きく傾いている。
その下には――
小さな獣人の子どもが座り込んでいた。
「ひっ……動けない……!」
作業員が叫ぶ。
「まずい!
魔道具がエラー起こして固まってる!
このままじゃ木箱が落ちるぞ!!」
リオが青ざめた。
「兄ちゃん……あれ、やばいよ!」
俺は即座に判断した。
(魔道具は“危険物の下に人がいる”と判断すると、
逆に動けなくなる……!
でも、木箱の重心が崩れたら――)
ガルムが前に出た。
「兄ちゃん……俺、行く!」
「ガルム、危険だ!」
「でも……あの子、俺と同じ獣人だ!
助けたいんだ!!」
迷いはなかった。
ガルムは地面を蹴り、
獣人特有の脚力で一気に荷台へ飛び乗った。
「うおおおおおっ!!」
両腕で木箱を支え、
体勢を立て直す。
木箱はガルムの腕の中でギシギシと軋んだ。
その重さは、常人なら即座に押し潰されるほどだ。
子どもが泣き叫ぶ。
「た、助けて……!」
ガルムは歯を食いしばりながら叫んだ。
「大丈夫だ!!
絶対に落とさねえ!!」
俺は叫んだ。
「リオ、子どもを引っ張り出せ!!」
「うん!!」
リオが子どもを抱え、
安全な場所へ引きずり出す。
ガルムは限界ギリギリの声で言った。
「兄ちゃん……!
もう……大丈夫か……?」
「大丈夫だ! 離していい!」
ガルムは力を抜き、
木箱は地面にドスンと落ちた。
ガルムは膝をつき、
大きく息を吐いた。
作業員たちが駆け寄る。
「助かった……!
魔道具じゃ、こういう時どうにもならねえんだ!」
「お前、腕が立つな……!
昔ここで働いてたってのは本当か?」
ガルムは照れくさそうにうつむいた。
「……まあ、ちょっとだけな」
作業員は真剣な顔で言った。
「今日の件は責任者に報告する。
あんたの力は……本当に助かった。
ありがとう」
ガルムは驚いたように目を見開いた。
「お、俺……役に立てたのか……?」
「立ったさ。
命の恩人だよ」
ガルムは胸に手を当て、
震える声でつぶやいた。
「……よかった……。
俺……まだ、誰かの役に立てるんだな……」
リオが笑った。
「ガルム、すげえよ!」
ミナも尻尾を揺らす。
「ほんとにすごかったよ!」
俺はガルムの肩を叩いた。
「ガルム。
“働けるかどうか”はまだ分からない。
でも――
お前の力が必要な場所は、確かにある」
ガルムはゆっくりとうなずいた。
「……ああ。
それだけで……今日は十分だ」
***
港を離れるとき、
ガルムは何度も空を見上げていた。
「……俺、まだ……やれるんだな」
その横顔は、昨日までとは別人のようだった。
(市場に続いて、港でも“人にしかできない仕事”があった。
この街には、まだまだ可能性がある)
そして――
明日、港の責任者が動く。
それが、ガルムにとって
“本当の第一歩”になる。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
第三話では、
ガルムが“命を救う”という形で、
自分の価値を再び感じる場面を描きました。
ただ、
救えたことと、働けることは別問題
というのが、この街の現実です。
港の作業員が言っていたように、
正式な話は“明日”になります。
次の第四話では、
港の責任者が登場し、
ガルムの未来が大きく動き出します。
ぜひ、続きも読んでいただけると嬉しいです。




