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怪異怪域 怪異探偵の助手、白瀬真の怪異譚  作者: 山外大河
一章 縁喰い

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4 付け入る隙

 こちらが【おいでよ埼玉爆乳祭り】についての情報を異物だと知覚できた時点で縁喰いへの対処が終わるのは最早時間の問題だったらしく、後は念の為完全に事が終わるまで事情を知る人間が傍に居て余計な事をしないかを監視しているだけで良かったらしい。


 だけどもより良いやり方が無い訳では無いらしく、霞がデラックスパフェを平らげた後、自分達は共に喫茶店を出てこの辺り近辺を散歩する事になった。


 この辺り近辺の散歩……それが今回、白瀬真のケースでは効果が期待できるそうだ。


「……黒幻さんの言う通り、これは有効かもしれません」


「だろう。今の君は当初よりも格段に現実を受け入れられる状態にあるからね。先程まではある種の劇薬だった認知と矛盾する現実が、今のキミには程良い薬として作用する」


「ええ。この光景が当然の物だと思えています。まだ多少は引っ掛かったりしますけどね」


【おいでよ埼玉爆乳祭り】が開催されていない現実をその目で観てその足で歩く。


 静に物事を分析できる今それを行う事で、植え付けられた偽りの常識を少しずつ引き剥がしていく事になるらしく……事実、そうなった。

 時間が経てば経つ程、その価値観の揺らぎを体感的に実感できる程、視界から入って来る情報が腑に落ちるようになっていた。


 もう実質的に解決していると言っても過言ではないだろう。

 過言では無いからこそ、自然と終わった事を振り返るような問いを霞に投げかける。


「俺は今回どうしてこんな怪異に憑かれたんですかね。特に原因が思い付かないんですけど」


 オーソドックスなホラー物の創作物に出てくる幽霊や妖怪の類いは、勝手なイメージではあるが行ってはならない場所に行ってしまったり、壊してはいけない物を壊したりなど、そういう明確な原因があったりするように思える。


 だが此処最近の行動を振り返っても、今日の事以外は特筆すべき事がない。

 なんの変哲もない普通の一日。

 それを惰性で繰り返す。

 ただそれだけ。


 故に一切身に覚えが無いわけだ。


「まず大前提として、怪異に憑かれたりその現象に巻き込まれたりする事に必ずしも創作物のような深刻な原因があるわけじゃないよ。縁食いなんかもその類いだ。ウイルス性の風邪位に思っておけば良い」


「そんなもんなんですか?」


「ああ。ただ風邪の場合でも寒い日に薄着をしていたとか、睡眠不足や過労といったひきやすくなる原因みたいなのがあるように、憑かれやすい状態になっている原因なんかはある」


「縁喰いの場合それは……」


「隙だよ」


「隙?」


「メンタル的な付け入る隙って奴。そういうのがある者に縁喰いは取り憑くのさ」


 言われて考える。

 付け入る隙なんて物が自分にあるというのか。

 そんな風に口元に手を当て考える仕草をする真に対し、ヒントを与えるように霞は言う。


「ちなみにそういった隙は憑かれて取る行動と、ある程度関係性がある物になっているのが相場なんだけど……思い当たる節はあるかい?」


「いえ……思い当たる節があったら困ります」


 与えられたヒントは色々な意味でかえって困惑するような物だった。

 今回の奇行と関連性のある隙と言われれば、つまりもうそういう事な訳で。

 即ち白瀬真という人間が相当にイカれている事になってしまう。

 そしてこちらの考えている事を察したのか、霞はフォローを入れるように言う。


「それは表面的に物事を考えすぎだよ。キミが先の言動をちゃんとおかしいと認識しているのなら、そんな所にキミの隙は無い筈だ。だから考え方を変えるべきだね」


「……考え方を?」


「キミの言動はあくまで過程だ。その先にこそ原因があるのかもしれない」


「その先って……俺の縁が切られる結果……いや、どんな行動であれそうなるんだから、その手前……どうやって縁を切られるか、ですか?」


「察しが良いね。私もそこだと思っている」


 そして一拍空けてから霞は問いかけてくる。


「今回のケースだと、キミはどんな形で周囲の人間との縁を切られると思う?」


「そうですね……警察に捕まってニュースで報道されるとか……動画でも取られてSNSで晒されたりとか、ですかね」


「良い線行ってる。他人に声を掛け縁を切るという事は、そういう回りくどいプロセスが想定されているのだと私も思うよ」


「……で、この部分が縁喰いに憑かれた原因に繋がると」


「あくまで推測だけどね」


 そう断った上で霞は言う。


「キミは目立つような何かをやりたかったんじゃないかな。もしくはそういう人間になりたかったとか。絶対にこんな形ででは無かっただろうけど、盛大に拡大解釈してしまえば同じような物だろう?」


「……なるほど」


 言われて、遠く離れた点と点が繋がるような感覚と共に腑に落ちた。

 それを隙と表現するのが適切なのかどうかは分からないが。

 具体的には微妙に違う気がするのだが、確かに思い当たる節はある。


 十九歳にもなってあまりにも子供染みた考えだとは思っているけど。

 いわゆる普通の生活を送っている人を見下している訳では決して無いのだけれど。

 それでも自分は。


 白瀬真は【何者でも無い自分】に対し、自覚できる程度にはコンプレックスを抱えていた。

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