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怪異怪域 怪異探偵の助手、白瀬真の怪異譚  作者: 山外大河
二章 名称不明【仮称】魂の商人

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9 専門家のやり方 中

 否、良くない。良い訳が無い。流石にこればかりは口を出させてもらう。


「いくら何でもそれは無茶が過ぎませんか?」


 確実に言える事は今回の怪異は自身が被害者となった縁喰いよりも遥かに危険な怪異である。

 そして縁喰いの時とは違い、一切の対処法をこちらが把握していない。

 言わば霞のやろうとしている事は、丸腰で戦場に赴こうとしているのと変わりない。

 否、投身自殺とでも表現した方が適切なのかもしれない。


「この先に進むにしても、もう少し別の所から情報を探ったりしてからの方が──」


「白瀬君。キミの考えは間違いなく正しいよ。正直その方が絶対に良いに決まっている」


 霞は自身のこれまでの言動と矛盾するような言葉を投げかけてくる。


「だったら……」


「だけどそんな悠長な時間が有ったらの話だ。今は多分それが無い。無理を通さないといけない時だという訳だ」


「……被害者が増えるから、ですか?」


「理由の一つはそれだね。一刻も早く対処しないと被害が増え続けるだろう。それは良くない」


「でも今のままだとミイラ取りがミイラになる可能性だって……」


「その可能性がある事自体が今だけかもしれない。それが二つ目の理由だよ」


「え……?」


「私じゃ追えなくなるかもしれないという事だ。ミイラにすらなれなくなる」


「……時間が空くと件の怪異と会えなくなるって事ですか?」


「その恐れがあると私は考えているよ」


 霞はどこか複雑な表情で言葉を紡ぐ。


「現状分かっている事として、あの返信画面を見た者が被害を被る対象になる訳じゃない。特定条件下の人間にのみ作用する。そういう物だ」


「まあ確かに俺や霧崎さんは画面見たけど無事ですもんね」


「実際被害者のアカウントにはその返信が残り続けているけど、それを他のアカウントで他人が見る事はできないわ。だからきっと、今だってアンタだけを対象にしている。だからこそ、それなら急ぐ必要は無くないかしら。被害者、今回でいうとアンタへの返信は今までの流れだと残り続ける訳だし。まあ得物が釣れなきゃ消える可能性も無くは無いとは思うけど」


「その可能性もあるけど、私が言いたいのはそういう事じゃないんだ」


 霞は軽く咳払いしてから言う。


「URLを踏ませ、所定の場所まで移動させる事が強い暗示によって行われるのだとすれば、大前提としてその先に進む為には暗示にかかる必要がある。そして今私が張った結界の効力は、暗示に掛かった上でそれでも自我を守り続ける。そういう風に調整した結界。だけど時間が経てばそもそも暗示に一切掛からなくなる恐れがある訳だ」


「……何故です?」


 イマイチ理解できなかった。


「画面を見た人に暗示を掛ける、いや掛けられる……それは多分縁喰いみたいに、掛けられる側に何かしら問題があるんだと思います。今回の奴だと金絡みでしょ。残念ながら俺にはすぐにその問題が解決して隙が埋まるとは思えませんよ」


 例えば別件の仕事が入っていて、直近で大きな収益が見込めるのならば理解できる。

 だが現状の黒幻探偵事務所ではそういう予定も無く、それはきっと本業以外でも変わらないだろう。


 今の霞には埋めようがなく、それどころかこれから日々の食費などで懐はより寂しくなっていく。

 故に悪化は目に見えていても、好転する予定は無い。

 つまり良くも悪くも被害に遭うための道筋は当分の間舗装されている訳だ。


 だがどこか自虐的に霞は言う。


「分かってないねぇ、白瀬君。でもまあ自分で言うのもなんだけど、これに関しては分からなくても良い話なんだけどね」


「……?」


「確かに時間が経過したところで、私がこの怪異に目を付けられる事になった根本的な原因は解決しない。しかもこれから少しずつ残ったお金を使っていけば懐は寒くなるばかりだ。だけど……心象的には此処が底なんだよ」


 そして霞はキメ顔で言う。


「ギャンブラーはその日負けが確定した瞬間こそが底。一晩眠ればある程度リカバリーして明日を生きる。その繰り返し。強い生き物なんだよ」


「いい感じの雰囲気で滅茶苦茶な事言わないでくださいよ。かなり最悪な感じで弱者ですよ」


「一族の恥だわ」


「ぐぬぬ……い、一族の恥って私に競馬教えたの綾ねえだろう!? 諸悪の根源は綾ねえだ!」


「私が競馬教える前からパチンカスだったでしょアンタ……ていうか何、ここまで追求してなかったけど競馬で負けたの?」


「ネオアルティメットがぶっ飛んだ……」


「ああ、あの馬今日のコースと馬場状態だと相性最悪だから走らないわよ」


「はえー学びを得た。じゃあ次だね次。未来は明るい!」


(こうして繰り返すのか……ていうか霧崎さんもやるんだ競馬……)


「ちなみにあのレースの三連単頂きました。リアタイしてたけど最後の直線激熱だったわ」


「その時間思いっきり仕事中でしょ。何リアルタイムで見てんのこの不良警官」


(血筋かぁ……)


 とにかく、この様子だと確かに明日にはある程度メンタルリセットが完了していそうだ。

 そうなれば、隙が無くなる。

 暗示に掛からなくなる。

 目標へ到達する事が叶わなくなる。

 確かにそれはあり得るかもしれない……だとしても。


「とにかく、その感覚は理解できなくても理屈は理解できました。でも良いんですかねそれで」


 現状の何もわからない状況での強行はやはり危険すぎる気がする。


「此処は後日でも暗示が掛かる事に期待して情報を調べる感じじゃダメなんですかね」


 だけどそれでも、真剣な表情と声音で霞は言葉を紡ぐ。


「さっきも言った通り、白瀬君の言っている事は何も間違っていない。その方が良いに決まっているんだ。だけど此処は無理も承知で飛び込む選択を真剣に検討しなければならないんだよ。今の被害者と……これからの被害者の事を考えるとね。今此処で解決しないと、下手すればこの件は迷宮入りするかもしれない。半永久的に被害者を出し続ける可能性すらあるんだ」

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