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怪異怪域 怪異探偵の助手、白瀬真の怪異譚  作者: 山外大河
二章 名称不明【仮称】魂の商人

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4 通話の主

「ん? いたずら電話かどこかのセールスか……もしかして依頼かな?」


「できれば最初にその言葉を聞きたかったですけど、出てきてくれただけ一安心ですよ」


「見習いが雇い主にする安堵じゃないねえ」


「とりあえず出ますね」


「ん。よろしく」


 雇い主が腐り切っていない事に安堵しながら受話器を取る。


「ありがとうございます、黒幻探偵事務所です」


『ん? 男の声……? なにあの子人雇ったの……?』


 受話器の先からは困惑気味の女性の声が聞こえて来る。


(誰だろう……この感じだと黒幻さんの知人か?)


 恐らくそうであると仮定し、話を円滑に進める為にも向こうの疑問に答えておく事にする。


「ええ。先日からこの事務所でお世話になっております白瀬です。えっとあなたは所長のお知り合いという事でよろしいでしょうか?」


『ああ、すみません。失礼しました。その認識で構いませんよ』


 そして通話先の女性は一拍空けてから自己紹介をする。


『石川県警刑事部捜査一課の霧崎です。以後よろしく』


「よ、よろしくお願いします……」


 返答しながら考える。


(警察って……黒幻さんとどういう関係だ?)


 色々と駄目な所がある霞だが、表面上から根っこの部分まで完全に善人寄りな人間の筈だ。

 そういう方向でお世話になった事があって……という線は薄いだろう。濃くてたまるか。


 考えられるとすれば……仕事での繋がりだろうか。

 警察関係者が捜査の為に普通の探偵業者を利用するとは思えないので……怪異絡みで。


 とはいえ此処で自分が思考に耽っていても仕方が無い。


「とにかく黒幻さんに代わりますね」


『ええ、よろしく』


 やるべき事は霧崎の目的の人物に通話を繋ぐことだろう。

 分からない事は後で聞けば分かる。


「黒幻さん。捜査一課の霧崎さんって方から」


「む、綾ねえからか。という事は仕事三割その他七割って所だね」


 言いながら歩み寄って来る霞に受話器を渡す。


(仕事三割って残り七割何だよ……ていうかえらく親しい呼び方だな)


 言ってしまえば取引先みたいなものの筈だが、その割にはまるで身内相手のようだ。


「もしもし……ああ、うん元気元気。そっちは? ……っていうかあれから彼氏さんの件どうなった? はえー良かったじゃん」


 まるでというよりもう完全に身内相手な気がした。

 クールでミステリアスな雰囲気が完全に消し飛んだ今でも辛うじて残っていた、それっぽい口調までもがすっかり消滅している。

 少なくとも取引先の相手への態度ではない。


「それでどしたの綾ねえ。のろけ話かそれとも仕事の話? 私的にはどっちでも良いんだけど」


(良くない……いや、警察関係者が関わる様な怪異の事件が起きていない方が良いという事を考えれば、のろけ話の方が良いのか?)


 以前の喫茶店でも似たような話をしたが、いざ仕事を取る側となると色々と難しい物である。


「……そっちか」


 そして……霞の話している雰囲気が徐々に真剣な物に代わっていくのを見る限り、後者の話だったようで、しばらく相槌を打った後、霞は言う。


「……ああ。成程。うん、分かった。電話じゃなんだし一回事務所の方に来てくれないかな。うん、今からでも大丈夫。お茶菓子? 良い良い別に。それじゃあ待ってるよ綾ねえ」


 そう言って受話器を置く霞に問いかける。


「もしかして身内の人だったりするんですか?」


「ああ、従姉だよ。霧崎綾香。通称綾ねえ二十五歳。最近破局しかけていた彼氏と仲直りした」


 その情報は別にいらないが……とにかく。


「で、霞さん。今のは仕事の電話って事で良いんですか?」


「ああ、そうだね。これから頑張ろうっていう決起焼肉会の前に頑張らないといけなくなった」


 霞はどこか真剣な表情と声音で告げる。


「怪異絡みの事件だよ。当然警察の、それも捜査一課に属する綾ねえから持ち込まれた仕事だからね。縁喰いとは比較にならない位、危険な怪異が絡んでいるかもしれない」

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