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第83話 写真撮影会

「せっかくだから、写真撮ろう!」


美久の提案で、急遽撮影会が始まった。


みんな、最初は戸惑った。


「え〜、恥ずかしい」


「写真なんて、久しぶり」


「毛並み、整えてない」


「今更何を」


でも、美久の熱意に押されて、集まり始める。


わいわい言いながら、庭に集合。


朝の光が、ちょうど良い感じに差し込んでいる。


「はい、並んで〜」


美久がカメラを構える。


でも、整列させるのが大変。


猫たちは、じっとしていられない。


誰かが毛づくろいを始める。


誰かが、横の猫にちょっかいを出す。


誰かが、急にどこかへ行ってしまう。


「みんな〜、こっち向いて〜」


「無理だよ〜」


「猫だもん」


「じっとしてられない」


でも、それが楽しい。


わちゃわちゃした雰囲気。


家族写真のような温かさ。


「はい、チーズ!」


パシャッ。


液晶画面を確認すると...


「あれ?」


写っているのは、普通の猫たちだけ。


人間の姿をした者たちが、写っていない。


猫耳の少女も、半分猫の者たちも。


みんな、写真には写らない。


ただ、完全な猫の姿の者だけが写っている。


「ああ、それは...」


少女が苦笑した。


「中途半端な存在は、写真に写りにくいの」


「そうなんだ...」


「カメラは、真実を写すから」


「私たちの真実は、曖昧すぎて」


確かに、人間でも猫でもない存在。


カメラも、どう記録していいか分からないのかもしれない。


「でも、心の目には写るでしょ?」


少女の言葉に、美久は頷いた。


確かに、美久の目にはみんなの姿がはっきり見える。


猫も、人間も、その中間も。


すべてが、確かにそこにいる。


「じゃあ、スケッチする!」


美久は、ノートを取り出した。


いつも持ち歩いている、観察ノート。


「絵、描けるの?」


「下手だけど...」


美久は、ペンを走らせ始めた。


下手くそだけど、一生懸命描く。


みんなの姿を。


今、この瞬間を。


猫たちは、興味深そうに覗き込む。


「これ、俺?」


「耳、もっと大きいよ」


「髭、足りない」


「似てない〜」


文句を言いながらも、嬉しそう。


誰かが、自分を描いてくれている。


記録に残してくれている。


それが、嬉しい。

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