62 掃除屋の話39
長い海岸線を西に向かって走る。
海はずっと右側のガードレール越しに見えた。
車の背後から少しづつ太陽が昇り、海の表面が輝き始めた。
袋の届け先は海から離れた山の中腹にあるので、そこに行くにはこの道は少し遠まわりになる。だが遅れても構わないだろうと私は思った。
袋を届けたあとは、山を越えた先の町に向かう。そこで再び掃除屋の仕事をやることになっていた。一人じゃ無理だから、また相棒と組まされるのだろう。うまくやっていけるだろうか。不安になる。
今だって、一人で運転は心細い。いつも運転席と助手席に二人だった。
目を一瞬だけ閉じて、それから助手席を見る。誰もいるはずはない。
その時運転席の窓に光が反射した。後ろから追いかけてきた太陽が、速度を上げ、まっすぐ日差しが海の上を走って、車の窓から飛び込んできた。思わず目を深く閉じる。
目を開き、もう一度助手席を見ると、誰かが座っていた。
金色の髪をしたあの人。車内を照らす陽光で、髪がキラキラ光っていた。彼女は、何度も目にしたあの笑顔のまま、じっと私を見ていた。
私を診察した医師は、特に異常なしと言ったのに。
「ああ、もう」と私はため息をついた。
赤い花だけでなく、こんなものまで見えるようでは、お終いだ。
助手席の彼女の足はサンダルを履いていて、きれいな指が見えた。
右斜め方向に白い砂浜が見えてくる。車を止める小さな空地もある。
「ちょっと休憩するか」と独り言に、彼女が微笑んだ気がした。袋を届ける前に、足を波に浸すくらいの時間はある。「じゃぁ行こう」とアクセルを踏む。
いつのまにか太陽は動きを止めて、白い砂を輝かせていた。




