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掃除屋の恋  作者: takerou73
59/63

59 掃除屋の話36

車が動き出すと、私は手紙を読み始めた。短い手紙だった。急いで書いたようで、字が少し乱れていた。


「あたしはあなたの名前も知らない。

それでも、もう一度会いたかった。一緒に海に行きたかった。

掃除屋さん、さようなら」


そこまで読んで私は目を閉じた。車内はエンジンの音だけが聞こえ、先輩は無言だった。

「伝えなきゃいけない大事なことがあります」

手紙はもう少し書かれていた。

「祖父と、母さんの両方に情報を流していた人」

そこに書かれていた名前は、先輩の名前だった。


「おい、何の手紙だ」と先輩が、こちらも見ずに尋ねてきた。

私は、書かれてる内容は真実だと確信していた。

だが、思わず、「ラブレターです」と答えた。

先輩のハンドルを持つ手がぶれて、中央線を乗り越えた。すぐに先輩はハンドルを切ると、バンは無事、車線に戻った。

先輩は息を吐き、「ふざけるな」と言って運転を続けた。


車は、別の町にある処分場所に向かっていて、そこに、袋を預ければ仕事は終わる。私と先輩は別の町に活動場所を移して、今まで通り仕事を続けていくことになるだろう。

この手紙を、恋文だということにしておけば、何も変わらない。先輩ともこれまでどおり。


生きている彼女に会ったのは三度だけ。最後はもう死体だった。忘れればいいと思う。忘れることができるのならば。

「もう一度会いたかった」言葉が自然と漏れた。先輩は聞き取れなかったのか、怪訝な顔をした。


「先輩、話したいことがあります」と切り出すと、彼はじっと私の顔を見つめ、

それから、人気のない海岸線のパーキングに車を止めた。

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