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掃除屋の恋  作者: takerou73
58/63

58 掃除屋の話35

まず、彼の体につけられていた赤い色をアルコールで綺麗にした。掃除屋に引き渡すには、死体に偽装する必要があったのだろう。弟の体中、念入りに塗りつけられていた。


次に先輩と二人で彼女の体を抱えた。

足は裸足で、左足の小指に包帯が巻かれていた。

袋に入れ、台車でバンに運び、保冷装置に収めた。その間中、弟は黙っていた。

部屋の清掃が終わると、

「指示された場所まで連れていく」と先輩は弟に告げ、車に乗せた。


町を抜けると田園地帯に入り、やがて海岸線の長い道を走り続けた。

車内の誰もが無言で、私は窓の向こうの海を見つめていた。

しばらく走ったあと、海岸線の途中にある展望スペースに駐車した。

10分後に、別のバンがやって来て、こちらの車の横に止まった。

先輩は、窓を開けて、もう一台の運転手に軽く頭を下げた。それから、

「あっちの車に移ってくれ」と弟に指示した。

彼は不安そうな顔をして、私を見た。別のバンの男は、同業者のように見えた。信頼できるかどうかはわからない。だが私にはどうすることもできない。従うしかない。

「安心しろ」と先輩は弟に声をかけた。

「親分と、うちの管理者の約束で、間違いは起こらない」


弟は、意を決して車から降りた。

別れ際に、私に封筒を渡した。

「姉さんから、あなたへの手紙です」

私は、無言のまま受け取った。どう反応していいかわからなかったのだ。

「さようなら」と彼が言って、車が去っていくまで、何も言えなかった。


バンが走り去るのを確認すると、

「さぁ、残った仕事を終わらせるか」と先輩は私に言った。

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