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50 彼女の話17
あたしは、携帯をもったまま、立ち尽くし、祖父の謝罪の言葉も耳に入らなかった。懸命に心を落ち着かせると、彼に経緯を尋ねた。
母さんは、あたしの足の指を祖父に送り付け、弟の身柄を引き渡すよう要求した。祖父は応じるふりをして、接触を図ったが失敗し、連絡が途絶えた。
「俺は、掃除屋の行動も監視していた」
掃除屋とは、組織の争いで発生した遺体の後始末をやっているらしい。
「その中にお前と同じ顔の死体があった」
母さんは、利用価値がなくなったあの子を始末したのだ。
「お前の母親はまだ諦めていない」
と祖父は続けた。もう一度、弟を奪おうとするはずだ、と。
あたしは、自分に何かできないか、祖父に尋ねたが、
「それはよせ」と彼は止めた。
あたしは諦められなかった。祖父に繰り返し懇願した。
根負けした祖父は、しばらく黙ると、
「ひとつ、頼みがある」と言った。
「近くの公園のベンチに男がいる」
その男に、少し手助けをしてほしいと。
それが、ツナギの人との出会いだった。




