48 彼女の話15
母さんの目的は、祖父からあたしたち二人を奪い去ることだった。
「大事な人を奪われる苦しみを、あの男に味会わせたかった」
祖父の中で、あたしたち双子の存在が大きくなるのを待ったあと、喪失の苦しみを与える、それが母さんの復讐だった。
計画では、弟を部屋から連れ去ることになっていた。
事前に部屋の護衛や世話係に、手引きをする人間が送り込まれていた。
母さんの現在の夫は、組織内部での自分の勢力を拡大していて、その力を最大限利用していた。あるいは、祖父の支配力が弱りつつあったのかもしれない。ともかく、母さんは、行動を起こすときと考えた。
思い通りにならなかったのは、弟が拒否したことだ。
部屋には、あの日と同じようなことが起こることを想定して、緊急時に避難する場所が作られていた。弟はそこに逃げ込み、内側からロックして一切の呼びかけに応じなかった。部屋に突入した連中は解錠キーを入手していたが、誰かに設定を変えられていて、開けることはできなかった。
母さんは、仕方なくあたしと同じ顔にしたあの子だけ連れ去った。
「あの男には、偽物だったことはまだ気づかれていない」
母さんは、今の状況から祖父への復讐を続けるつもりだった。
「それで、お願いは、あなたの体の一部をもらいたいの」
検査で間違いなく双子だと判明するようなものを、祖父に送り付ける。
母さんは、狂っていた。
あたしは左足の小指を切り落とされた




