47 彼女の話14
あたしは自分なりに、別の人間になろうとした。
金髪の髪、明るく朗らかな性格。
紹介された仕事も懸命に覚えて、馴染もうとした。
仕事が終わると、帰り着いた部屋で倒れるようにして眠った。
こんなに長い間、弟と離れて生活するのは初めてだった。
寂しくて涙が出た。弟はどうしているのだろうと思った。
ひょっとすると、弟は、あたしのことが嫌いだったのだろうかと、繰り返し考えると頭がおかしくなりそうだった。
朝になると、鏡を見て、自分は別の人間だと確かめ、笑顔を作った。
そういう生活がしばらく過ぎたころ、母さんから連絡が来た。
護衛が迎えに来て家に向かい、母さんの部屋に入ったが、彼女は不機嫌な顔をして、こちらに注意を払わず、苛立った様子で歩き回っていた。
ようやくあたしの存在に気が付いたように、冷ややかな視線を向けると、
「ああ、あなた」と思い出したように声をあげた。
「困ったことになったわ」と母さんは、あたしに状況を説明した。
「あの子の救出に失敗したの」
「救出?」とあたしは思ったが口には出さなかった。薄々、母さんが何か企んでいたとも感じていた。あたしを、あの黒髪の子と入れ替えたのも、計画の一部だったのだろう。あの子とは弟のことで、母さんが、身代わりを救うはずもないとも思った。しかし、母さんは続けて、
「間違って、あなたの偽物を拉致したみたい」と苦々し気に言った。
あたしは、動揺した。事態が呑み込めなかった。なぜ、そんなことに。
母さんは、あたしの様子をじっと見つめ、優しい笑顔を作った。
「あなたに協力してもらいたいことがあるの」




