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42 彼女の話12
何度も扉を叩いたが返事はない。呼びかけても無駄だった。
数時間が過ぎた。疲れて横になり、携帯のデータを開いてみた。
あの子の写真が残されていた。
金色に染めた髪、輝くような笑顔。明るく溌溂とした姿。
あたしには遠い人のよう。
あなたこそ、あたしの憧れ。
いつの間にか眠っていた。目覚めると、母さんが横に立っていた。
「心配しなくていいわ」と母さんはあたしに告げた。
「あなたを自由にするためだと伝えると、あの子は納得してくれた」
弟は、事前に母さんから今回のことの説明を受け、承諾していたという。彼が受け入れたのであれば、一番の問題は解消されている。さらに、入れ替わりが露見しないように、事前に、部屋へ息のかかった人間が送り込まれていた。
「あなたは、もう自由よ」
と母さんは微笑んだ。
自由?そうだろうか。この顔のまま、外の世界に行くことが出来るのか。
弟と同じ顔の人間が、今や三人いる。
はっとして、母さんの顔を見つめていた。さっきと同じ笑顔が張り付いたように残っていた。
「そう、そのとおり」と表情が語っていた。
「あなたも顔を変えてもらいます」




