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4 掃除屋の話4
金髪のショートカット。レザーのジャケットにミニスカート。口には細くて長いたばこ。
最初は、こちらには気も留めず、ゆっくりと通り過ぎていく様子だったが、ふと、こちらに目を向けたとたん、眉間にくっきりと皺が寄った。よほど気に入らないものを目にしたような顔だった。
そのまま、女性は公園を横切って視界から消えていった。まぁ当然の行動だなと私は思った。茶髪の男はちらりと女性の方を見たが、視界から消えるのを確認して、再び私に向きなおった。それにしてもカツアゲなら何らかの要求があるはずなのに、その気配がない。少し奇妙だった。ともかくこの場をしのぐために、前か後ろかどちらかの注意をそらす必要があった。
「なぁ、おっさん、教えてほしいことがあるんだけど」と茶髪の男が口に出したと同時に、視界の左側、女性が歩き去った方向から、何かが飛んでくるのが見えた。
スチールのコーヒー缶。それが縦回転しながら飛来してきた。
缶はくるくる回りながら、茶髪の男の鼻梁を直撃した。
花が咲いた。大量のポインセチア色の花が、私の目の前に咲き広がった。