33 彼女の話3
祖父から与えられた部屋は、あたしたちには鳥籠のようなものだった。
部屋にいるのは、あたしたち二人と、世話係の女性、それに数人の護衛。
自由な外出など許されなかった。
あたしは、壊れかけた弟の心を、懸命につなぎとめようとした。
弟は、物音に怯え、夜中に目を覚ましてずっと震え続ける。あたしは弟に寄り添って、毎晩眠るまでずっと慰めてあげた。
穏やかな日もあった。そんなときの弟は、何一つ悩みがないような美しい顔であたしに笑いかける。その顔は、かつての幸せだったころを思い出させた。あたたかな気持ちが溢れ、しかし、すぐに失ったものに気づく。
そっくりな顔のはずなのに、あたしは、もうそんな風に笑えない。
弟の中にだけ、幸せが残されていた。
あたしは、今どんな顔をしているのだろう。
こんな日々が、いつまで続くかと思い、あたしの心は暗く沈んでいた。
そんなある日、弟が珍しく、あたしに、ある提案をしてきた。
二人でベランダに出た。ベランダは、外と隔てるために鉄の覆いが取付けられていて、鳥籠という表現のとおりだった。
弟はあたしの手を取り、檻の隙間から、遠く山の上を指さした。
長くすらりとした指先は、遠くの建物の一つの窓を指さした。
促されるままに見つめた先に、赤い光が見える。
あたしは察した。この部屋は監視されている。
祖父なら当然そうするだろうとも思った。いまさら怒りも感じない。
ところが、弟は微笑んでいた。一緒にあの光を見つめるようあたしを促し、いままで見てきた中でも、とびきり幸せそうな笑顔をしていた。姉さん、ほら、笑って、と弟はあたしに言った。どんな風に、とあたしは戸惑ったが、やがて、弟と同じような笑顔が浮かんだ。ああ、あたしはまだ笑うことができるんだな、と思った。笑いながら、いつの間にかあたしは涙をこぼしていた。
それからしばらくすると、あたしと弟の生活に変化がもたらされた。




