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32 彼女の話2
侵入者がすべて排除されたあと、あたしたち姉弟は、祖父に初めて会った。
祖父の目に、あたしたちへの憐みの色はなかった。むしろ無関心に近い眼差しで、絶縁状態であった身内のことなど、祖父には存在しないも同然だった。
弟は、祖父の冷ややかな視線に耐えきれず、終始、あたしにしがみついていた。
もともと感じやすい性格で、誰よりも早く周囲の変化に気づき、強く怯え恐れる子だった。そんな弟が、間近であのような残忍な出来事が起これば、心が耐えられる限界を越えたとしても仕方がない。弟を守るのは、もう、あたししかいない。
母さんは、病院に連れていかれた。祖父の決定で、あたしたちとは別の世界で生活することになった。
あたしは祖父を憎むべきだったのだろうか。
父さんと母さんがあんな目にあったのは、祖父の存在のため。
祖父を脅すための手段として、あたしの家族は壊された。
彼を憎めばいい。それが一番簡単だった。
だが、あたしは弟を守らねばならない。
これからどんなことが起ころうとも。




