21 掃除屋の話21
俺の前に連れてこられた二人は、それぞれ違った眼を向けた。
一人は、おどおどと落ち着かない様子に見え、おびえたような瞳だった。俺には、心が壊れかけているように見えた。
無理もない。安全に隔離された部屋は、奴らが侵入してきた部屋の映像と音声が流れるようになっていた。俺の手下が解放するまでの間、その部屋は地獄だったろう。
だが、もう一人は俺をじっと見据えて目をそらさなかった。
怒りで燃えるような瞳、今まで俺は何度もそんな目を向けられてきた。それは無力な人間がかろうじて示す、何の意味もない抵抗と笑い飛ばしてきた。
だが、俺はその目をあざ笑うことができなかった。その目の中に息子の目と、俺の親たちの目を見つけた。俺の一族何世代にも連なる罪業の償いを、こいつが取り立てに来たように思えた。
俺は、孫たち二人を引き取った。そして、あのマンションの一室に住ませた。
あいつらの母親は、廃人のようになっていたから、莫大な金をつけて、俺に弱みを握られている商売人に引き取らせた。
孫たちが生活に困らないように手配し、隣部屋に護衛を置いて監視させた。それとは別に、今お前がいるその部屋からも監視させた。
それから数年後、一度だけだが、俺はその部屋から、マンションのあの部屋を見た。
孫たちは、見た目だけは成長していた。だが部下からの報告では、外部との接触が限られるためか、言動に幼稚さが残るとのことだった。
俺はじっと二人を見た。レンズを通して見る孫たちは楽し気に笑っていた。
ふと、二人の表情から笑いが消え、二人が同時にこちらを見た。
お互いの部屋の距離は遠く、俺の姿が見えるはずもないのに、じっと二人の視線が俺に据えられた。四つの目が微動だにしなかった。俺は苦しくなり胸を押さえながら、二人の視線から逃げた。
「その時、俺は初めて後悔した」
「いったい、何に対してですか」と思わず私は口にした。長く重い話を聞き続ける重圧から、息継ぎのように躊躇なく。老人は話に割り込んだことに怒りもせず、間をおいて、
「すべてに」と言った。




