18 掃除屋の話18
ところが、二日後には先輩から掃除仕事の連絡がきた。
唖然とした顔の私に、
「これでも、半分に減らした」と先輩は弁解した。
信じられないことに、掃除の依頼数は増え続けている。A組織とB組織は、争いをエスカレートさせていた。
現場に行くと、また見届け人がいた。この前のチンピラとは別人だったが、彼らがどちらの組織の人間かなど、私たちには関係ない。
これまでは、そうだった。今や、見届け人は相手組織と、私たち掃除屋への牽制であり、あらぬ疑いをかけられぬための自己防衛手段となっていた。
その日の現場は、誰も一言も発さないまま静かに終わった。
帰りのバンの中で、「聞きたいことがある」と先輩が話しかけてきた。
「お前が現場で、花が満開だとか口走るのって、昔の事故が原因なのか」
目から入ってくる情報を、大脳皮質が受け止めて、認識する。それが普通の脳の働きなのだろう。だが、私は、どこかでその回路がいかれてしまったようだ。
私は自分の失敗で粗暴な奴らの恨みを買い、手ひどくけがをさせられた。頭を強く殴られた傷だらけの私を見つけ、養父は私を病院に連れていこうとした。
どこかの交差点を信号どおりに進んだとき、横からトラックが突っ込んできた。養父の運転する車は横転し、懸命に助手席の私を懸命に車外に逃がそうとした。転がり出た瞬間、車は炎上した。
最後に見た養父の頭は、真っ赤な血で覆われていた。その時点では、血はそのまま血として認識していた。できれば忘れてしまいたいのに、記憶は鮮明に残る。その血の色を拒むために、花に変換するよう、脳の回路がバイパスされたのか。正確な理由は判らない。
私は先輩に何も言えなかった。
先輩はそのあとは一言も話さなかった。
いつもの場所までバンは走り、公園で別れた。




