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掃除屋の恋  作者: takerou73
14/63

14 掃除屋の話14

先輩はそのまま運転中は一言も話さなかった。

私は高台よりかなり手前の人気のない道端で降ろしてもらった。


低地のマンションのそばに公園があった。以前の公園より少し小さいが、自販機もある。コーヒーを買ってベンチに腰を下ろす。まだ暗い時間で、公園内の電灯がついていた。


コーヒーを口に含み、ここ数日のことを思い出した。

二人の死体を片づけたその日、ベンチで絡んできた男の一人が、今日死体になっていた。

先輩が「嫌な感じ」というのも無理もない。自分たちでは制御できない何かを感じる。


そんなことをぼんやり考えていると、目の前をゆっくり女性が歩いて行った。


眠そうな顔をした金髪の女性。

コーヒーを投げてくれた人だった。


コーヒーが気管に入り、むせこんだ。


女性が立ち止まり、不機嫌そうな顔をこちらに向ける。

「おじっ・・・おにーさん!」

驚くほど急激に、満面の笑顔に表情が変わる。


「どーしてここにいんの?奇遇。えっまさかつけてきた?ストーカー?」

ニコニコ笑いながら、立て続けに言われ、どこから説明しようかと思ったが、

咳をし、喉を落ちつけてから、

「仕事帰りです」

「自分の家の近くです」

「ストーカーではありません」と一つ一つ答えた。

「やだ、ウケる」と女性は笑った。

「あたしも仕事帰り」と言って、ポケットから名刺を取り出す。

どこかのバーの名刺で、「るり」という名前が印刷されていた。


「おにーさん、こういう店来る?」

「行かないですね」

「即答かぁ」とからからと笑った。

「私も仕事帰り」


この前出会った後に、この街に引っ越したのだろうと察したが、ストーカーと思われたくないので黙っていた。


「公園でよく会うってことは、公園の掃除?でも手ぶらってことは下見?熱心すぎん?公園マニア?」


どう答えていいか悩んだが、「まぁ公園以外の掃除の仕事帰りです」と答えた。

「公園は落ち着くので、休憩してます」


女性は「そっかー」と納得したようにうなずくと、「邪魔しちゃった」とベンチに座ったままの私に近づいた。

「いちおー名刺、あげるね」と言って、私の手に握らせ、「またね」と手を振って立ち去って行った。


立ち去った方向は、低地のマンションの方角のようだった。


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