表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
掃除屋の恋  作者: takerou73
12/63

12 掃除屋の話12

一瞬意味が分からなかった。見ればわかると言いそうになったが。無視して作業を続けた。返事がなかったことでスーツ姿の不機嫌さが上昇したのが判る。答えられないことを答えさせようとして相手を追い詰める、嗜虐性の固まりのような男なのだろう。

男はまた舌打ちして煙草を吸い始めた。灰が床に落ちる。ゴミの掃除は契約外なのに、と心の中で思った。


袋詰めと床掃除の間、男は興味をなくしたのか、煙草を吸いながら窓の外をじっと見ていた。


作業が完了し、先輩が、男に準備していた書類にサインを求めた。

男は顔をしかめて、

「まだ、残ってる」と床下の煙草の灰を指さした。

「それは契約外なんで」と私は思わず口に出していた。

あ、まずいなと思った。先輩も片方の眉をゆがめた。

男は私に猛然と歩み寄り、ツナギの襟を掴んでねじり上げた。

「何のつもりだ掃除屋風情が」

困ったことになったなぁと思いながら、後ろ脚に力を入れて男の押してくる力を受け止めた。男の背中越しに、先輩がスマホに何か黙々と入力しているのが見えた。取りなす気はないらしい。

「お前らの仕事が半端だから、立ち合いなんかさせられる」と男はずっと思っていた不安もぶつけてきた。

そもそも掃除屋は自分たち二人だけではない。先輩と私には心当たりはないが、男にはそんなことは関係ないだろう。

先輩と目が合った。やり取りが終わったようだ。私に向かってうなずいた。好きにしろ、ということだろう。


襟首を握った男の手を、優しく右手で握った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ