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魔王に婿入り!?  作者: 虚幌須
四章 サバイバルゲームと忍び寄る影
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サバイバルゲーム、終了

光の魔力の属性は無かった。正確に言えば、完全に相反する二つの属性が打ち消しあって無属性になってだけだ。

「まさか、あの属性の波動は・・・」

それに気づいたのはマーモンと、魔王の二人だけだ。その属性は『闇』と『光』。相反する属性が混ざり合い、時間にさえ干渉できる。







鋸の歯は徐々に装甲を削っていく。

『くたばれ、虫けら』

光を足蹴にする。光の周りに流れている時間がゆっくりになる。光は飛ばされたが、受身を取り体勢を立て直して左腕を斬りにいく。

『馬鹿め』

左腕の火炎放射器が光を狙う。光の前の空間がゆがみ、炎が別の場所へ消えていく。魔王が魔晶装具を構えている。形は杖。

「私のことを忘れては困るな」

杖の先端を機動兵器の左腕に向けている。魔王の援護を受け、目線の先にある左腕の関節を狙う。光は左腕の関節に鋸の歯を食い込ませて歯を魔力で動かす。高速回転して鋸の歯はチェーンソーのように腕の装甲を削り、腕を斬りおとすことに成功する。落ちていくアリスをすばやくキャッチしたのはベールだった。

「・・・、私も忘れないで」

「ありがとう、二人とも」

光は『メシア』に向き直る。

「どうする?そのガラクタは両腕が無くなった。降参するんだな」

鋸を片手で持ち、相手に突きつける。かっこつけたかっただけのようだ。

『この場は退くしかないようだ・・・』

「全ての」「空気を」「凍て付かせる」

そんなことを許す七賢者たちではなかった。気がついたサターヌとマーモンそしてベールが『メシア』を氷付けにする。完全に凍りつく前に一人の男が這い出てきた。茶色い髪とグレーの目を持つ精悍な男だ。だが、どことなくえらそうな雰囲気で、剣を腰にさしている。

「くそっ」

男は走り去ろうとする。首元にナイフを突きつけられ、デスサイズが胴を両断しようと狙っている。

「よくも痛めつけてくれたな」

「覚悟してよね」

腰にさした剣を床に落として、両手を挙げる。

「降参する・・・」

どこからかロープを持ってきたレヴィが男を縛る。

「とりあえず、一件落ちゃ・・・あれ・・・?」

ふいに疲労感が光を襲う。そして、その場に倒れる。デウスが駆け寄ってくる。

「おい、ヒカル。しっかりしろ」

「とりあえず、レヴィだ。どこにいる、レヴィ!!」

何かを殴る音が聞こえ、デウスが倒れる。

「私はここにいるわよ。ちょっと、退いて。診てみるわ」

そう言って、オレンジ色の髪を掻き揚げて光の閉じた目を開けたり、脈を計ったりする。

「大丈夫。魔力の使いすぎで倒れただけみたい。アリスの方も大丈夫よ」

「よかった・・・」

「さて、その二人を病室に運ぶから、デウス手伝ってよね」

「な、何で俺が・・・。俺だってレールガンの撃ち過ぎでヘロヘロなんだぜ?」

「そんなの、皆同じよ。さぁ、ヒカルの方を持って」

デウスは光を背負い、レヴィはアリスを起こして肩で担ごうとするが、アリスは起きた。

「あ・・・あれ、あの機動兵器は?」

「ああ。アレは氷付けさ。ヒカルがあんたを必死になって助けようとしてたぜ」

マーモンは一部始終をアリスに話す。

「そう・・・。ヒカルったら」

デウスに近づき、背負われてる光に近づく。

「ありがとう。私の王子様」

そう言って光の髪を撫でるアリスであった。







そこに二頭の犬がいた。一頭は黒くて俊敏そうな犬。もう一頭は白くてふさふさの毛を持っている犬だ。二頭の犬は仲が悪く、喧嘩ばかりだ。でも、その喧嘩は絶対に決着はつかない。違う力を持ちながら、同じ位の力を持っている。例えるなら、酸性の液体とアルカリ性の液体だ。同じ濃度の液体を混ぜれば中和され、中性の液体つまり、『水』と『塩』が出来る。その副産物こそが光の魔力の属性である。光は二頭の犬の喧嘩を止めたかった。でも、止めることは出来なかった。いつも同じ技で同じ結果だった。そこで光は目が覚めた。





サバイバルゲームの日から二日がたった。未だに目を覚まさない光。ベッドの隣の椅子に座っているのはこの魔族の国の王女アリスだ。

「アリス、今日はあなたも休んだら?」

レヴィがアリスの肩を軽く叩き、そう促す。

「うん、そうさせてもらう。でも、大丈夫なのかしら・・・彼」

アリスはベッドで眠る光を見る。

「大丈夫だとは思う。何が原因でこんなことになったのやら・・・」




「魔王様、一応今回の事件の報告書を出しときます」

魔王の執務室に入ってきたのはマーモン。

「うむ、ご苦労だ」

そう言って掛けていたメガネをはずし、目頭をつまむ。そして、マーモンから受け取った書類に目を通す。

「被害は、城門と城門前の大砲すべてに城内の壁など諸々か・・・。押収した機動兵器の分析は?」

「滞りなく進んでます。ただ、例の『魔力シールド』の仕組みは解析に時間がかかりそうです」

「そうか・・・」

ページをめくり、目を通す。魔王の目つきが変わる。

「これは・・・、ヒカル君の魔力の属性・・・か」

「はい。蛇足ではあると思いますけど、一応報告します。彼の持っている魔力はかなり微量です。ですが、それで当たり前なのです」

一度区切って、天井を見て再び魔王に向き直る。

「彼の属性は二つ。おそらく『光』と『闇』。魔晶装具の鋸の歯が早回しのように回転したのはおそらく、相反する二つの属性の副産物である『時』でないかと思ってます」

「そうか。やはりか・・・。なるほど、それでヒカル君の魔力の量は極端に少ないのか」

「はい。本来なら彼はここの世界に居ない人間ですし、この数値が当たり前だと思ってました。本当はもっと蓄えることが出来るのだろうけど、蓄える前に打ち消しあっているんでしょうね。お互いの属性を」

「なるほど。報告ご苦労だった」

マーモンは執務室を後にする。残った魔王は両手を顔の前で組み思いふける。

「次はどんな遊びにしようか・・・・」

どんなことがあっても遊ぶことを忘れない魔王であった。

第二章もとい、サバイバルゲーム編は終了です。現在第三章(仮称)執筆中です。ご意見やご感想をお待ちしております

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