能力を測定しよう(前編)
まぁ絵がきれい
これで前書きです(寒くてすいません
案内された場所は昨日案内してもらった研究室だ。
「マーモン、いる?」
研究室にノックもなしにアリスはズカズカと入り込む。光もそれの後に続く。部屋には白衣を着た数人の研究員らしい人があわただしく部屋を行ったりきたりしている。いすに座って本を読んでいる赤と青のオッドアイの少女がアリスのほうを向いて近づいてくる。
「・・・」
アリスの袖をくいくいっと引っ張り、指を隣の部屋に向ける。
「ありがとう、ベール」
一度うなずくとさっきまで居た場所に戻り、本を開いて読みふける。ちらっと光を見たがすぐに興味を失ったかのように本に集中する。
「ヒカル、早く行こう」
「あ、ああ」
アリスに呼ばれて隣の部屋に移動する。
隣の部屋にあったのは大きな装置と一人の女の子だ。藍色の髪をしたボーイッシュな女の子がタバコをくわえて椅子にもたれている。
「お、アリスと婿殿。こんなとこに何のようだい?」
タバコを灰皿に押し付けて火を消す。そして、いすに座りなおしてアリスと光のほうに向く。
「ヒカルの魔力測定をお願いしたいんだけど、大丈夫?」
「ヒカル・・・、あぁ、隣の婿殿のことか。いいよ、それくらい。ちょっと待ってな」そういうと奥の個室に入っていった。
「さっきの人は誰だ?」
まだ、この城にいる人の名前を覚えていない光にとって知らない人ばかりだ。
「藍色の髪の女の人?彼女がここの主任のマーモン」
「へぇ、見かけによらず偉い立場なんだな。ちなみに年は?」
「私より少し上くらい。って、女性の年を聞くのはどうかと思わない?」
「確かにそうなんだが、彼女はなんだろうな・・・話しやすそう。と言うより女の人っぽくない」
光のマーモンに対して持った気持ちは話しやすそうな女の人。話し方が男っぽいところが光の女の人と話している、と感じさせないからだろう。もっとも、アリスは例外ではある。
「ふぅ~ん。ヒカルってあんな感じがいいんだ・・・」
「・・・何怒ってんだ?」
「別に!!」
「おまたせ、おまたせ。長いこと使わないとどこにしまったか忘れてしまってな」
そういってマーモンが持ってきたのは一つの水晶。大きさは光の両の手くらいで角ばっている。
「さて、ヒカルだっけ。利き手を出してくれ」
ヒカルは促されるままに右手を差し出す。マーモンはその手をつかむとしばらく見ている。
「へぇ、なかなかおもしろいな」
「な、何が?」
少し声が上ずってしまう。何せ、男っぽい話し方をしているが、見た目はかなりの美人だ。そんな美人に手を握られているのだから、無理もない。
「手相。生命線が長いな」
「あ、そこなんだ・・・」
「早く計測してよね」
アリスはさっきからむすっとしている。
「ああ、悪い悪い。そんじゃこの水晶に利き手を置いてくれ」
光は水晶に手を置く。マーモンはその水晶にコードを二本つなぐ。その先にあるのは変な機械と紙を吐き出し続ける機械である。吐き出された紙を見つめてマーモンは驚愕の表情を出す。
「う、うそだろ・・・」
「どうしたの?」
アリスが紙を覗き込む。
「え、えぇ!!」
光も覗き込む。
「な、なんだと!!」
「わかるの(か)」
二人に聞かれて光は首を左右に振る。
「いや、俺も便乗して驚いたほうが良いのかと思ってつい・・・」
二人がため息を吐く。
「あぁ、ところでだ。結果はどうなんだ?」
「えっと・・・、大変言いにくいんだが・・・」
「ああ」
「値がすご「マーモン居るか!!」」
突如現れたのは金髪のデウスだ。切羽詰ってるらしく、マーモンに詰め寄って用件を一気に話し出す。
「さっきレヴィーと見回りしてて気づいたんだけどな城の離れにある時計台に設置してある放送器具がだめみたいなんだ。どうしようか。あそこに人が行くことはまずないだろうけどやっぱり必要だと思うし、それでレヴィーにそのことを言ったらなんていったと思う?あいつ、「マーモンに聴いたらいいんじゃないかな、デウス行って来て」なんていいやがるんだ。どう思うマーモン。それとどうしたらいいと思う。あと、なんだその紙。ああ、魔力の測定結果か。うわっすごいなこ・・・ごふぅっ」
あまりの話の長さにマーモンがデウスにボディーブローを決める。
「うるさい。そして、顔近い。そして、うるさい」
「は、はい・・・」
うるさいを二回言ったのは重要だったからだろう。デウスは床で釣り上げられた魚のようにビクビク動き、泡を吹いている。
「さて、結果を言うとだな。言いにくいんだが、ヒカルの総魔力量が少ない」
「少ないって言われてもどのくらい少ないんだ?」
基準がわからなければ多い少ないはわからない。
「普通の魔族の平均値を1としよう。基本的に七賢者の魔力量は5~8くらいだけど、ヒカルの値は0.25くらい」
平均の4分の一しかないのか。
「そ、それは低いとしかいえないな・・・。ちなみにアリスの値は?」
「私。私は計ったことないからわからないわね・・・」
そういって水晶に手を持っていくアリス。そしてそれを急いでとめるマーモン。
「ちょ、ちょっとアリス。あんたがやったら、水晶が壊れるだろ」
「どうしてだ?」
「量が多すぎるらしいわ」
「はぁ・・・」
ため息をついて片方の手を頭にやり、がしがしとかきむしる。
「ま、まぁ違う世界からきたそうじゃないか。無理もないと思う。うん、魔力量が低くても生活には困らないからな。は、ははははっ」
マーモンの乾いた笑いが部屋に響き渡る。それが光にとって追い討ちにしかならなかった。