少女とお見合い話
今回の作品はシリアス展開を少なめにしていく予定です。また、笑えないギャグもあるかもしれません。寒くても我慢してください。
青年はバスの座席から車窓の景色を眺める。絵になるほどの美青年かと聞けばそれほどでもない容姿である。髪は黒。短く切りそろえており整髪剤なんかとは無縁な髪型である。
車窓の外の景色は暗く時折見える街灯と対向車の明かりが道路を照らす。不意に青年は汗を流し始めた。
「やべぇ、寝過ごした」
どうやら青年「門音光」はバスを降りそびれてしまったようだ。
光が見慣れた道についたのは日付が変わる少し前だった。家の玄関には昨日の新聞と一人の少女が倒れていた・・・。髪は赤。年はおそらく12,3歳くらいの少女。
「って、おいおい・・・」
1.揺さぶって起こし、事情を聞く
2.家にお持ち帰り
3.明日の燃えるごみにだすか
「何だよ、この選択肢は!!!」
とりあえず、家の中に運び込む光であった。
「ん・・・」
むくりと女の子が起き上がる。
「気がついたみたいだな」
周りをきょろきょろしている。無理も無いだろう。光の方に顔を向ける。
「こ・・・」
テンプレでここは?と口を開いたのだろう。
「こんな汚い部屋で私何してるんだろう・・・」
まさかのテンプレ崩し。そして、光はと言うと
「し・つ・れ・い・な!!」
一言言うたびに頭をタオルではたく。
「イッタ~イ。初対面の美少女にその仕打ちは無いんじゃない?」
女の子は頬を膨らませて文句を言う。その姿は可愛らしいと言えば可愛らしいが、先ほどの発言に対して怒りを露わにした光には特に何とも感じてないようだ。
「うるさい、そもそも男の一人暮らしの部屋なんざこんなもんだよ」
「なによ、掃除くらいしなさいよ」
この後不毛ないい争いを続けて1時間くらいでようやく収まる。
「な、何で初対面の女の子と言い争いしなければいけないんだ?」
「し、知らないわよ。そもそもあなたがタオルで叩くからいけないんでしょ?」
「なっ、なんだ・・・。やめよ。不毛すぎる・・・」
「そうね・・・」
沈黙が続く。そして二人してため息をつく。
「で、なんで家に倒れてたんだ?」
光は少女に聞く。
「そこは普通名前から聞かない?」
「・・・・。じゃあ、名前は何だ?」
「じゃ、じゃあって何よ。失礼ね」
「名前は何だ?」
「私の名はルーシー。遅くなったけど、始めましてヒカルさん」
ルーシーと名乗った少女は立ち上がって光にお辞儀をする。そのしぐさひとつをとってもいいとこのお嬢さんっぽい。
「って、何で俺の名前を知ってるんだ?」
光はルーシーと出会って名前を名乗っていなかった。
「細かいことはいいじゃない。男らしくすっぱりさっぱりきっぱり流しなさい」
無茶苦茶な意見にあきれる光。
「まぁいい。とりあえず、家の前でなんで倒れてた?」
「あなたに会うために玄関で待ってたのだけど、あまりにも眠たかったから寝ちゃって・・・てへっ」
舌をちょこっと出しておどける。
「あほか。俺の帰りが遅かったら凍死してたかもしれないぞ?」
今の季節は冬だ。極寒とまではいかないがそれなりに寒い。
「そっか~。それもそうよね~」
「で、目的は?」
「・・・お見合いをしてもらいます」
この一言が光の人生を変えたのであった。
なお、この小説は以前に作った『吸血鬼と暮らそう』とは無関係の話です