呪い(1)
私にかけられた”呪い”について思い返してみる。
私が小学1年生に上がって間もない頃、学校から帰ってくると食卓に置手紙を置いて母が出て行ってしまっていた。
それから父、私、当時3歳の弟と3人暮らしが始まった。
20年以上経った今でも忘れられない弟の言葉がある。
3人で近所のスーパーで買い物をしていた時に弟がぼやいた「ママ売ってないの?」という言葉。
きっと3歳の弟からすれば、自分の知るものは大抵スーパーなる所へ行けば手に入ると思っていたのでしょう。
だからきっと突然いなくなってしまった母を思い、「ママ売ってないの?」と言ったのだと。
弟本人は自分がそんなことを口にしたなんてきっと覚えていないが、私は本人が当時思っていた以上に今尚鮮明に印象的に覚えている。
母が出て行ってから暫くして、ある日の休日に突然母が自宅へ戻ってきた。
当時どんな会話をしていたか覚えていないが、ただ荷物を取りに帰ってきた様だった。
けれど玄関を出ていくとき、弟が母の服に縋りついた。
母が玄関を開けると、男性が運転席に乗っているセダンが停まっており、弟は車に乗り込もうとする母を裸足のまま縋り付いて追いかけたが、後部座席に乗った母は最後に弟を引きはがしてドアを閉めた。
その出来事の最中の会話は何一つ覚えていないが、弟が縋って追いかけたが置き去られた。
その一連のシーンだけが強烈に脳裏に映像として残されている。
この出来事まで父は母のこと、どこに行っちゃったんだろうね?とまでしか言っていなかったが、以降「お前たちは捨てられたんだ」と事あるごとに口にするようになった。
これが1つ目の”呪い”