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「────無理ですッッッ!!」



 とある王国。とある王城。とある夜会に悲鳴のような声が響いた。

 皆の視線が集まる中、声の主はぜえぜえと肩を揺らす。先の声で息が上がってしまうほどか弱い。白銀の髪に同じ色の双眸双眸(そうぼう)、青と基調とした煌びやかなドレスを着た少女だった。

 目の前には少女よりも2、30ほど身長の高い男性の姿。少女に拒否されたのが余程ショックだったのか呆然としていた。おそらく少女に触れたであろう手は、赤く腫れている。





「な、何故だ!私はこんなにも貴方が好きなのだ。この性悪と結婚するより、貴方の方がずっと魅力的…だから婚約破棄までしたのに」


「無理だと言ったら無理ですッッ。私、は、私は何方とも結婚する気はありませんので!それにウィリシア様が性悪など……そんな訳ありません!」




「金輪際、関わらないでください!!」



 そう言って少女は息を整えながらふらふらと会場の中心から離れ、ドアの方へと向かった。

 共に来たのであろう。同じ髪色の青年に支えられて会場を後にした。



 会場が騒つく。少女に振られた男性がこの国の王子だったこと。婚約破棄を宣言された令嬢が青ざめたりすることなく、むしろ王子よりも平然としていること。王子を振った少女が唯一である辺境伯の末娘であることなど。

 関係性や憶測が飛び交う。ここは社交界だ。王子は顔も整っており常に落ち着いていることが魅力とされていた。ただ今はどうだろう。愕然として、青ざめて、汗をかいて、普段の王子とはまるで違う。

 婚約破棄して、恋仲だったろう少女も王子とはくっつかない。ならば王妃はうちの娘を、と画策するものも中にはいた。



 ただ一人、そんな国や王子のことなど気にしていない人間がいた。

 少女にウィリシア様と呼ばれていた令嬢。赤い薔薇が咲いたかのようなドレスは美しく、また背中が隠されておらず、令嬢の中では背が高くスタイルが良いので本当に美しい。

 令嬢は王子にそっと近づいて耳元で囁いた。



「振られたからと言って、わたくしとの婚約破棄が覆ることはありませんので。分かっておられますよね?王子なのですから。」



 微笑む少女は大輪の薔薇のように美しい。ただそこにはたっぷりの毒を持った棘と、王子に対しての未縁無さが出ていた。令嬢は思う。


(ミティ、大丈夫かしら。一応ソアンが付き添っているみたいだけど、このまま屋敷に行きましょうか。)


 令嬢がミティと呼ぶのは少女だった。少女は酷く体が弱い。王子は知らなかったのかもしれないが、令嬢と少女は幼馴染だった。だから令嬢は王子よりも少女に対しての好意が圧倒的に強い。


 ふむ、と令嬢が王子に言いたいことを言ったので会場を後にする。これから少女に会いに行くからだ。大丈夫よ、と慰めなければ。そして沢山抱きしめなくては。




「大丈夫?姉様、彼奴に触られたからだろ。」


「…逆に聞くけど、大丈夫に見える?」



 少女は人間が無理だった。令嬢と一緒にいたところを王子に見つかり自分だけ呼ばれたり、ほんっっとうに地獄でしかなかった。青ざめ、口元を押さえて、触られたであろう指先を拭く。

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