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第2話

レトがレドモンド公爵家に買われてから3か月が経過した。

レトの一日は日の出とともに始まる。


「おはよう、レト!」


同室の茶髪にそばかすの少女が元気にレトに元気に朝の挨拶をする。


「スティル、おはよう」


(スティルはいつも元気だよね)



「今日の当番って何だっけ?」

「今日はボクたちは洗濯当番。ほら、早く洗濯物の回収に行こう。」


同僚のスティルとあいさつを交わしたレトが最初にするのは、母屋や離れの使用人たちの洗濯物の回収である。昨日のうちに出された洗濯物を回収して洗い場まで持っていくのが朝の仕事である。

その後、朝食になる下級使用人は一か所に集められて食事をとる。


「今日も固いパンに薄いベーコンと具なしスープかぁ。朝はもう少し量が欲しいよね」

「そうだね、ボクももう少し食べたいかな」


(はぁ~ 屋台の串焼きが食べたいなぁ)


朝食後、各担当に分かれて仕事に移る。今日の担当は洗濯である。朝、回収した洗濯物を専用の洗い場で洗い干してゆく。主に洗うのは他の使用人の服やシーツ等で、屋敷の家人の洗濯者などは専属の上級使用人がおり、そちらが担当する。

そのほかに昨日のうちに干し終わった洗濯物を部屋ごとに分けた籠に入れて部屋に返却する。


「レト、この番号の部屋ってどこ?」

「二階の階段上って、右手側の奥から三番目」


洗濯物を部屋に戻し終わると昼食の時間になる。昼食は休憩時間も兼ねており、朝に比べて

比較的ゆっくりと過ごしている。

昼食の後は、残りの洗濯物の返却と干した洗濯物の回収である。洗濯物の中でもう使えないものは破棄、新たに必要なものは侍女長に申請をする。回収した洗濯物は各部屋ごとに籠に仕分けをする。


(シーツは穴が空いてるから破棄して、新しく必要な枚数を申請してっと)


「レト、この服ってもうダメかな?」

「これぐらいなら繕えばまだ使えるんじゃないかな」


夕食後は仕事が残っていなければ各自自由となっており、早々に寝る者や趣味に費やす者等様々である。

レトは早々に寝る同室の中では一番早く寝る。



「もうみんな寝たかな?」


深夜、全員が寝静まったころにレトは起き出す。

レトは他の者を起こさぬようにそっと部屋を抜け出し外に出る。

下級使用人の住んでいる離れは家人たちの住まう屋敷と違い見張りなどは存在しないため簡単に出ることができた。


「たまには息抜きしないとね。」


レトはそういうと、四肢を地面につけるとその姿は徐々に変わってゆきその姿は人よりやや大きめの白い狼に変わっていた。


「獣化」、獣人の中でもまれに見る体質で自身の姿を獣に変えることができる。

ちなみにランドたちには獣化できることは伝えていない。


「さて、まだ直されてないといいけど。」


狼の姿になって疾走すると、屋敷を囲っている塀の一部が壊れている場所へたどり着く。今のレトの脚力ならば飛び越すことのできるそこを、レトは飛び越え街を走りぬけ森の中に入ってゆく。

森は狼などの野生動物やまれに魔物が出るため入ることを木こりなどの一部の職業を除き立ち入りを禁止されているが、レトはバレなきゃいいやの精神でたまに抜け出しては森の散策をしている。


「今日湖まで散歩と罠の確認に行くかな。」


湖についたレトは周囲の安全を確認すると人の姿に戻る。

人に戻ったレトは持ってきた荷物の中から水色の小さいくすんだ宝石を取り出す。


「最近は練習できてなかったし、たまには練習しておかないとね。」


宝石を握った手とは反対の手を湖へ突き出すと、共通語とは別の言語で言葉を唱える。

すると、レトの突き出した手のひらから、水の球が射出されるがたいして飛ばず湖へ落ちていく。

「精霊魔法」、古代語魔法や神聖魔法とは別の体系の魔法で宝石を触媒に精霊語で呪文を唱えることで行使できる魔法のことである。

当然、ランドたちへは使えることは伝えていない。


「やっぱクズ石じゃダメかな、もっとちゃんとした宝石じゃないと。」


しばらく、湖に向けて魔法を放った後、休憩をはさむと人の姿のまま森の中へ入る。


「さて、前回の罠の様子はどうかなっと。」


以前、来た際に行商人時代に立ち寄った村の狩人に教わった罠に動物がかかっていないかを確認するため、前につけた目印を頼りに森に入ったレト、いくつかの目印をたどっていくと罠を仕掛けた場所へ着いた。


「よしよし、リスがいくつかかかってるな。肉は食べて、毛皮は売ろうかな。」


手儀はよくリスを持ってきたナイフで解体して、先ほどの湖まで戻ったレトは途中で拾った枯れ木に精霊魔法で火をつけて、たき火を起こす。

久しぶりの薄いベーコンや短いウインナーとは違うお肉にレトは上機嫌に準備を始める。


「リス肉は焼いて、皮はあとで処理すればいいか。」


(そういえば、父様と母様は元気だろうか。お使い頼まれて急にいなくなってしまったし、今度、バレット侍女長にでもお願いして手紙でも出した方がいいかな?でも、手紙高いしなぁ)


ぼんやりと養父母のことを思い出しながらリス肉を食べていると、レトの耳が反応する。それと同時にたき火を消して、森の中に隠れる。レトの耳が人の気配を察したのだ。


(2人、いや3人かな?音的に金属鎧はいなさそう。どうする? こっちから探すか、このまま身を潜めるか)

(いや、下手に動かない方がいいか、戦うことなんてできないし)


レトはしばらく身を潜めていると、徐々に気配は遠ざかっていく。気配が完全に消えるとたき火の痕跡を消し、狼に獣化して遠回りで屋敷の離れまで戻るのであった。


(あ~ びっくりした。街の自警団か公爵家の護衛見回りかな? しばらく森に入らない方がいいかな。)


しばらく帰ってからも森での出来事が気になり寝付けなかったレトは翌日、寝坊するのであった。







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