3話目 氷室から見た涼輝狐の魅力
3話目できましたので書き書きです。
氷室さんは残念な子ですが仕事はしっかりです。
涼輝狐の魅力の塊はここにある、みたいなそんなイメージです。
氷室から見れば、本当にこの娘は怪異なのかと疑わしい。
はっきりいえば人間臭すぎる。本物の人間のように感じることがある。
人間だとしたら透明化能力を持つ何かとなるが、そんなオカルトはありえない……妖怪、怪異がいるのだからそういうのもあってもおかしくはないのだが……
パソコンやゲームの類もうまい。こういうのを見ると野生をどこかにおいてきてしまったような、そんな錯覚すらする。記憶操作とかした人間とか。
ただ少なくとも氷室よりも長生きなのは間違いない。氷室とてそこまで常識知らずな面は少ないとは思うが。人としての深みがあるような気がする時がある。
――そうこういいながら一週間が過ぎた。いろいろと聞いては見たけどどうにもはっきりしていない。謎は謎のまま。ただ感じることはある。
……見られている。こちらを観察するようにしている節があるのだ。
そう、それが寝ている状態だとしても……
キングサイズのベットで寝ている。原稿を渡してからもう3日も寝て過ごしている。服もほぼ同じ格好で寝ている。寝貯めしておくのだ。
「人間は冬眠しないよー」
「いいのー。人間メンタル維持のためには寝るのが一番。寝て過ごす」
寝ながらも天井を見上げるとじーっと見つめる涼輝狐の姿がある。
「何?」
「いや本当に寝るのが好きで危ないなーって」
困った顔をした顔で見下ろす涼輝狐。
「危ない?」
首を傾げる。
「『天敵』に襲われそうで」
「狐の天敵って何?」
「野生の犬とかあとはオオカミですね」
日本には狼がいなくなって久しい。その後に台頭するのは野生化した犬という闇。
四足獣に変わりはない。
「野生に戻った犬は強そう。狼は厄介そう」
「両方とも厄介ですよ。鳥も駄目ですね。子狐は狙われます」
困った困ったと言わんばかりに首を振る涼輝狐。そういう仕草も可愛く見える。
美人の仕草は花があると言わんばかり。
「で、私の『天敵』って?」
「老いと時間とお金」
「……oh」
まっとうな天敵に思わず声を上げる。
「老いる前に技術と時間の有効利用とお金の確保は必須ですよ。現代社会どれも有限、動けなくなってから慌てても無駄無駄無駄!!」
……どうやら読んでいたのはJから始まるアレらしい。
とはいえ真っすぐで正論すぎて全面降伏するしかない……
だが、これぐらいは言ってもいいだろう。
「話はわかった。少し元気分けて」
「いいですよ? 生気注入します?」
唇を指差しながら。
「どこから、どうやってと聞きたいことはあるけど……」
手招きする。ふわふわと寄ってくるとその手を引っ張り寝かせる。
「元気てそういうことですか? そんないきなり強引にベットに誘うなんて」
「前々から気になっていたのよ。もふらせろぉぉぉぉぉ」
尻尾に抱き着く。
――ふわふわっとした感触!!
毛のふわふわ感は……いや!! この質感は!! 質量は!!
常に大事に手入れされていなければ出せない感触!!
滑らかで肌触りもいい!!
なにこれ凄いを顔に体に腕にアピールされている!!
もはや全人類をも堕落させるであろう魔力と魅力の塊としか思えない!!――
「どうです? 私の尻尾の触り心地は?」
自信ありげに笑みを浮かべているが、ぎこちない笑みとなっている。
逆にこれには笑みが出てしまう。たまらないほどの高揚感、幸福感、これはいいものだと魂が叫んで止まらない、止められない。
「これは元気になる。ならざるをえない!!」
「それじゃ今日はこれくらいに」
すーっと消えて先ほどと同じ宙に戻ってしまう。
「えー」
不満の声を上げるが、
「いいですか。氷室」
悟りきった顔で言う涼輝狐。
「どんな感動も衝動も常にあればそのありがたみが薄れてしまう。少量、小時間であればまた次への渇望が頑張りとなるのですよ。貴方に元気を上げたのですから、今はそれで私を歓ばせなさい」
「具体的に?」
「遊びに行きますよ。氷室の服をコーディネートしに買い物です」
突然爆弾を放り投げてくる。今度は涼輝狐が氷室の腕を掴み起こさせる。
引っ張りながらクローゼットを開ける。
「着替え着替え。服少ないし、色は白しかないし」
白に近い銀髪に似合うのは白だと思う。他の濃い色はイメージに合わないのもあり冒険はしない。似合わないものを買った時のダメージは大きいのだ。
「赤とか黒とかでも似合うと思います。せっかくなので冒険しましょう♪」
こうして買い物に出かける。着せ替え人形させた結果、何着か購入することになる……
読んで下さりありがとうございます。