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氷室さんちの狐ッ娘  作者: しずくまい
1/9

1話目 なにかいた

初めまして。

勢いで書いて勢いで投稿します。


 今日も、視線を感じる……

 霊感と呼べるほど力があるわけではない我が身ではあるものの、何かに見られている感覚がある。

 リンゴジュースのブレンド中、海を眺めに行く時、神社をお参りする時、ノートパソコンを開いて書き物をする時、ふとした時に感じる視線。

それは家の中にいても……

 人の視線とは違った感覚を知っている身ではあるのでこういう結論になる。

――どこかで幽霊でも連れて帰ってきた?

と考えてしまう。やれることはやっておこう。

 部屋を掃除し拭き上げ、方位磁石で確認。北東、南西ではないことを確認してから大きな器に三角錐に天然塩を擦りきり一杯にして盛り塩をする。

高い神棚にお供えするように置く。

……あまり意味は少ない、とは思うけど気休め――

にもならなかったようだ。

……また視線がある。溜息一つ。

振り返りポーズを付けて言う。

「――貴様、見えているな?」

「ご、ごめんなさい!!」

 反射的に返事が返ってきて内心びびる。だが表情が出にくいので続ける。

あっ、と声がして静かになる。

――これは素直な何かだと理解する。

「姿を現しなさい」

「は、はい……」

半透明の何かが宙に現れる。そこにいたのは狐耳と狐の尻尾を生やした少女だった……



「……えーと、貴方は……狐?」

「えーと、はい……」

 狐の伝承、日本だと玉藻の前や九尾の狐で有名どころは知っている。天狐や地狐といった存在もあるが、そちらはどちらかというと中国の伝承のイメージが強い。

反応が素直だということは、しかも人の姿をとれてはいるということは? 狐耳や尻尾を隠せていないということは? まだ若く変身能力も完璧ではない……

確か狐は50年生きると女性に化けることが出来るようになり、100年生きると美女や巫女や男性にも化けれて、天眼通をもつようになる。そして1000年を経れば天に通ずるようになり、天帝に仕える天狐となる。体毛は金色に輝き、尾は9本なる、とかなんとか。100年ごとに尻尾が増えるというのもあった気がする。

「名を名乗りなさい」

涼輝狐(りょうきこ)、と言います」

……聞いたことがない。有名どころではないとはいえ、怪異系であることには間違いはない。

「どうして私の後ろにいた?」

「なんとなく面白そうだったので」

「面白い?」

「はい、言霊もですが、驚かないじゃないですかぁ」

と語り出す。

 大抵の人はラップ音がしたら驚くし、幽霊的なものが出れば驚くもの。しかし、この人は驚かない。何か達観してるのか、わけがわからない人だと思い後ろにいた。気づいているようだけど何をするのかと見ていると掃除したり盛り塩をしたりと行動を見ていていきなり「貴様、見えているな」に逆に驚かされた、と。

「思わず声出ちゃいまして……」

ふむ……じーっと見つめ合う。

 涼輝狐と名乗った狐っ娘は可愛い容姿をしている。二つの尻尾もふわふわ。耳も、『もふりがい』がある……

「なるほど。取り憑いているわけではない、と?」

「純粋なる興味です」

「そう。ならいいわ」

 ノートパソコンを開き、椅子に座る。

「はい?」

「好きにすればいい。私は仕事に戻るから」

「はい」

涼輝狐は後ろでじーっと見ている。

「何?」

「貴方は誰ですか?」

「? どうして聞きたがる?」

「興味です」

「そう。興味なら仕方がない。私は氷室。書き物をしている」

 メモ帳にはキャラと書いてあり、詳細なデータを書き連ねている。

新しい項目、狐娘キャラと書いてあり、詳細な涼輝狐の容姿等書いてある。

「?」

 どうしてこういうことを書いているのかの疑問の視線を感じる。

溜息をつくと

「私にはキャラのストックが少ない。だから怪異でもなんでもネタにできるのであればネタにする。涼輝狐もその一部とする!!」



 高々と宣言するものの、涼輝狐は怪訝そうな顔をしている。

「はぁ……? そういう反応なんですか? 普通、警戒したりとか排除しようとしたりとかするものでは?」

「?」

 こくりと首を傾げる。そんなつもりは毛頭ない。ただなんとなくかっこよくいってみようとしただけでそこまで深い意味はなかった。

だから――

出てきたのは異常事態ではある。あるのだが……?

「なんで不思議そうな顔するんですか!!」

 怪異、妖怪側からすれば不思議な話なのだろうか? それともおかしい人間だからだろうか? 

「?」

「まるで非常識なこと言ってるようじゃないですか」

 考える。思考する。どうして私は今、何事もなくしていられるのか?

悪い霊とかの類ではないから?

「?」

「もしかして狐とかの伝承とか知らない系?」

「オカルト小説は書くけど?」

 異常事態には間違いはない。だが大したことではない。

「だったらどうして?」

――状況的にいえば?

「オカルト面にかまっていられないから!!」

「え?」

 大きく息を吸い込む。わかっている。状況的に考えれば答えはこれなのだ。

「締め切りはあと3日!! 書き込み終了はまだ終わっていない。意味深なキャラが足りていない!! 詰まった部分はそこ!! プロットからはかなりかけ離れた展開だし一通り終わらせて清書して読んでおかしな部分を見直す時間も入れれば一分一秒も遊んでいられない!!」

「部屋掃除してましたよね? 盛り塩してましたよね」

 当然のツッコミである。

 そして気づく。この狐ッ娘の顔、容姿はなかなか良い。可愛い系ではあるものの目に力というか勢いがある。

 なにより美人体型。胸はやや大きめ、ウェストも細いのだろうか? 肩をさらした巫女服のようなものだが体にぴっちりとしている。肩が出ている時点で着崩してはいるものの、袴姿は今の世でしているのは神社関係者やコスプレしている人たちぐらいだろう。肩を出している時点でどちらかというと夜のお仕事系ではある。ベールのようなもので顔と肩を隠せば謎の女風にできるのではないか?

「?」

 止まったのを訝しんだ涼輝狐はこちらを見つめてくる。綺麗な目をしている。真っすぐとした曇りのない目でじーっと見ている。感じるのは不安、警戒、怪訝、疑いの目……

「……思考の迷路のお片付けは掃除よね?」

 なるほど、この狐ッ娘は推せる……思考は加速する。そして一つの結論を導き出す。おそらくそれが最善手。

「現実逃避でしかないじゃないですかぁ」

「わかった。じゃ、手伝って」

「へ?」

「誤字雑事、おかしな点を読んで指摘する。改行とかも任せた。データはUSBので向こうのデスクトップパソコンで行って」

「え、ちょっと……」

「うまくできたら4日後にお稲荷さんパーティを開催する!!」

「わかりました。やりましょう!!」



……こうして、氷室に一人の同居人ができた。

氷室は無事書き上げた。

読んでくれてありがとうございます。

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